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試験開始です。
最強従兄妹。
リィ様の唇が触れた指先が、ジンジンと熱を持っている。ぎゅっと握りこんでいるけど、其の感覚は消えてくれなくて、胸がドキドキと忙しない。まさか『魔』と対面している時に言われるなんて、全く持ってこれっぽっちも想像なんて出来ないからね!?
(ああ、なんてこと…)
油断していたのです。
突然見せられた、男の人の顔に。仕草に、微笑みに。
「アリア?どうしたの、蹲って」
「な、何でもありませんわ!」
にこりと微笑む艶やかさに、治めようとしていた胸の高鳴りが激しくなってしまった。勢い良く立ち上がってリモナイト殿下に返事をして、ハウライトとオブシディアンを探し出す。そもそも、ギベオンにはもっと凄いキスをされているのに、リモナイト殿下にこんなに恥ずかしくなるとかどういう事!?
いや、分かってます。はい。ギベオンのキスは餌である魔力を貰う為、リモナイト殿下のキスとは全くの別物。
(動揺して当然じゃない…。うん、落ち着けー落ち着けー)
そろそろ二匹が到着してもいい頃だけど、逃げ遅れたのか野次馬なのか生徒が道をふさいでいる。貴族の令息令嬢なら、真っ先に逃げなさいよ!とも思うが、好奇心がとてつもなく強いのも、貴族の方々の特徴でしたね。
どうしたものかと思っていたら、なんと雪豹に変化したセレナローズが、三階分の壁を軽々と登りアクロバティックな動きを見せて足止めを食らっていたハウライトとオブシディアンを纏めて銜えた。その動きたるや、拍手喝采したいです!今でなければ!もう一度言う、今じゃなければ拍手してた!
「え、セレナ!?」
「ガウッ!」
「今行く!」
セレナローズの声に反応したアズライトが壁へと向かって飛び、宙返りして二匹を放り投げるセレナローズから危なげなく受け取る。そのまま私の居る位置を瞬時に確認し、ハウライトとオブシディアンをこっちへ向けて放り投げて…って!危ない事は禁止だとあれほど言ったよね!?
「アリア!」
「アズラっ、ちょっとまっ!」
「ハウライト様とオブシディアン様を、受け取ってー!」
「「にゃーん!(アリアー!)」」
(ああもう、最強獣人従兄妹め!後で覚えておきなさい!)
「『旋風』!」
私はリモナイト殿下の結界を抜け出し、咄嗟に風魔法でハウライトとオブシディアンを抱きとめた。二匹は楽しかったのか目をキラッキラさせてましたけどね。流石、我が家の末っ子と言う名のスピード狂に鍛えられているだけありましたわ。
「行きますよ、アリア!」
「ええ、頼むわよハウライト」
本当は魔を祓う光魔法は、聖職者でないと簡単に使う事を許可されない。祓ったはいいが、身体から追い出しただけの形になってしまい、祓った本人へと向かってくる事があるからと言うのが、一つの理由。
もう一つは、この光魔法は魔の強さに寄るが、思いのほか魔力を大量に使う。私と小さい姿のハウライトで足りるかどうかも分からない。
ゲームで見たこのイベントでのルチルレイは、光属性の守護聖獣として成長しているハウライトと、もう一人魔力の強い聖職者の助けを貰ってこなしていた。
(無茶苦茶でも、やったるしか無いでしょーが!)
『彼のものを戒めし魔を祓え』
ハウライトと手を繋ぎ、魔を祓う光魔法の呪文を唱える。光は魔が潜む元凶となっているルチルレイへと飛び包み込むように光っているが、苦しそうなルチルレイの姿が床へと倒れこむのが見えた。
「マウシット様!ルチルレイを!」
「アリア、まだ駄目だ、上に残ってる!」
「ルチルレイからは離れたのに、祓うにはまだ足りませんの!?」
「アリアの魔力は十分足りています、ですが、光属性の力が足りないのです。私が…小さいから」
「ハウライト…」
しゅんと項垂れてしまうハウライトに、なんと言って声をかけたらいいのか分からなくて。でも、このままにしていては無理矢理祓った魔が誰かに憑いてしまう。そう考え込んでいたら、そっと重なる優しい温もりに驚いて顔を上げた。
「り、リィ様…」
「大丈夫だよ、アリア。僕もいる」
金色掛かった紫色の瞳が光の加減なのかキラリと輝いた。私と同じアメジストの瞳に、王家の威厳に満ちた威圧感。そして、清廉な空気。其処に居るのはいつもの可愛らしいふわふわとした優しげなリモナイト殿下じゃない。
お互いの指を絡めてしっかりと手を繋ぎ額を合わせ、私の魔力をリモナイト殿下へと循環させていく。アズライトとセレナローズが従兄妹同士で最強のコンビネーションを見せるように、私とリモナイト殿下だって、同じアメジストの瞳と魔力を持つ従兄妹なのです。
「アリア、ハウライトいくよ」
「はい、リィ様。ハウライトもう一度よ」
「はい!」
お互いに瞳を合わせ微笑みを交わし、光魔法の魔を払う呪文を同時に唱えた。
『彼のものを戒めし魔を祓え』
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