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潜む闇
捕獲班出動します。
其処にいると言う可能性は低い、だけど、居るような気がした。少しでもゲームの補正と言うものがあるのなら、誰も攻略していない私とルチルなら、ルミエール様が其処にいると思う。
私とルチルの手には屋敷で作ったお菓子が抱えられ、神殿に捧げるようにも見えるし、少し違う場所でお茶会を開くようにも見える。こっそりと隠れて警護しているのは、アズライトとジャスパー様だ。ハウライトとオブシディアンは猫型に、ギベオンは狼型になり付き従うように歩いている。
「此処ですわね」
「私、此処に来るの初めてです」
見上げる大きな扉は前世での建物で例えるなら、教会や結婚式場だろうか。白を基調として建てられた、ヨーロピアン風の建物は、ひっそりと佇んでいる所為か生徒の認知度は低そうだ。
(攻略対象者とは学園で、ってのが主だったけど、隠しキャラは神殿だものね)
「テーブルやお茶の用意は、後からいらっしゃるラズーラ殿下とリモナイト殿下が持って来てくださるそうよ」
「はわわわ、お、恐れ多い…王子様を使うなんて…っ」
「実際持ってくるのは、マウシット様とアイクお兄様だから大丈夫よ」
「そっちでも恐れ多いですよー!?」
一番家柄が低い所為か、気にすることなくてよと微笑みを浮かべても、ブンブンと勢いよく首を振られてしまったわ。一年の時はギベオンと一緒でも、いつの間にか『魔』に取り付かれていたから、遠慮をしているルチルを見るのは正気になってからだけど…。
(可哀想なくらいに怯えてるわよね、いきなり王族や上級貴族に囲まれた所為よねこれって)
『アリア、神殿に気配があります。人型になりますね』
「リモナイト殿下がいらしてからのほうが良くない?」
『大丈夫です、魔力は既にアリアから十分なほど分けられています』
神殿の扉に手をかける前に、ハウライトの姿が光り輝き人型の青年の姿に変化していく。屋敷での結界を出ればラーヴァ位の子供の姿だったのに、光魔法を使ってきて私のレベルが上がったのかしら?公式のルチルレイルートで見ていた無機質な表情は其処にはなく、自信に満ち溢れた微笑みを浮かべて、まるで王子様の様に私の手をとった。
「オブシディアンは、危険ですから隠れてくださいね」
『分かってる』
「では、参りましょうかお姫様」
「ええ、ハウライト」
私の手をとってにっこりと微笑みを浮かべるハウライトに微笑みを返し、神殿の茂みに隠れているアズラとジャスパー様に視線を向けると、了解の意味を含めた視線が帰ってくる。
(…なんでアズラは泣きそうな顔してるのかしら?)
微かな疑問に首を傾げていると、ぎゅっと手を握るルチルの温かな手に振り返った。こっちは泣きそうというよりも、戦場にでも送り出すみたいな顔してるけど、ルミエール様を捕獲するだけなのに其処まで心配する?
「あ、アメーリア様」
「ア・リ・ア」
「あ、アリア、気をつけて…ね?」
「勿論よ、根性叩きのめしてくるわね」
「もっと平和にお願いしますー!!」
物騒な言葉を返す私に慌てるルチルに笑って、ハウライトが開く神殿への門を潜り抜ける。静かで清廉な空気を醸し出す神殿の中に『やっぱりいた』と、ゲーム補正に苦笑を浮かべてしまった。
神殿の祭壇の前に、呆然と佇む紫を入れ込んだ真っ白な法衣。ルチルの瞳から見れば、くすんだ様な白らしいけど、神殿のお洗濯係りの仕事は完璧のようです。まぁ、王宮から支給されている予算で豪遊してなければの話ですけどね?
「ごきげんよう、ルミエール最高神官長様」
「そなたは…」
「アトランティ侯爵家のアメーリアと申します」
ふわりと微笑みを浮かべ、お菓子の籠を持たない手で制服のスカートを摘み、ゆっくりとカーテシーを披露する。侯爵令嬢という貴族の位も高く、お供に連れているのは光の属性をもつ守護聖獣ハウライト。ルミエール様が眉を顰める要素は一切ないはず。
(まぁ、魔力量とか聖獣引き連れてるとか、この前の態度を持ってこられたら、又黒いあの虫を見るような目で見られるんだろうけどな)
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