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最終決戦
隠しは一人じゃないんです
合同試験で決勝までいったのに、無残にも負けてしまったわたくしは、自分の不甲斐なさが許せなかった。
ダンスの試験では相手を忘れていてギベオンに手伝わせる嵌めになるし、合同試験はアイドクレーズお兄様に手伝って貰いながらも、決勝で光の守護聖獣を連れた男爵令嬢に負けてしまう。只でさえ負けているのに、これ以上あの子に負けるなんて…っ。
「アメーリア、仕方無い。向こうはラズ殿下とリィ殿下もいらっしゃったんだ」
「ええ、ええ、分かってますわ。ジャスパー様も居ましたものね。ですけど、わたくしは幼い頃から強くあれとされてきた侯爵家の娘ですわ!」
王族や上位貴族の信頼を勝ち取らなくてはいけないのに、筆頭侯爵家の令嬢だというのに、わたくしはなにも満足にこなす事が出来ていない。
「そんなに怒っていては、ラーヴァも近寄ってこないよ?」
「知りませんわ、最近はホーランダイト家の方と仲良くしているとは聞いてます。其れが何か?」
おどおどして怖がるだけの弟なんて、視界にも入れていない。貴族としてのマナーだけはと教え込んではいるけど、最近は侍女や執事の目を掻い潜って逃げていると聞いている。やるべき事をやろうとしない愚者にかける時間なんて、わたくしにはないのです。
「アメーリア、少し落ち着いてはどうだ」
「落ち着けませんわ、わたくしはギベオンにも願いましたわよね?誰にも負けない貴族としての地位を。全然叶ってませんわ」
幼い頃に契約した守護聖獣の属性は闇、急に現れた男爵令嬢は光の守護聖獣を連れている。光だというだけで、ラズーラ殿下もリモナイト殿下も幼馴染みのわたくしではなく、下級貴族のあの子へと気持ちをさいている。
『楽しそうな子、ミツケタ』
「誰ですの!?」
『ボクノ手をトラナイカイ?君の願いを、その狼にカワッテ叶えてあげる』
もう後が無いわたくしの前に現れたのは、黒い髪に黒い瞳、頭には猫の耳と尻尾を楽しそうにゆらゆらとさせて、口元には笑みを浮かべている。差し出されたその手は、抜けるように白くて細くて、だけど引寄せられるように、わたくしはその手をとろうと自分の手を伸ばした。
「アメーリア!駄目だ!」
『ツーカマエーター』
嬉しそうな甘い甘い、砂糖菓子のような声がわたくしの耳を擽っていく。蕩けるように見つめられる真っ黒な瞳は底が見えなくて、ゾワリと怖い何かが背筋を伝っていく。
「ようこそ、ボクノお姫様」
「貴方は、誰ですの?」
「皆はボクを『魔』と呼ぶよ。光の聖女には、もうボクは必要ないからね。新しいお姫様を探しにきたんだよ」
そういって、『魔』はにっこりと笑うと、その無邪気な笑みを浮かべたまま、わたくしの首に噛み付いた。尖った牙が白い喉を突き破り、赤い血が吸われていく。痛いはずなのに、快感を拾ってしまうのはどうしてなのか。
「アメーリアは美味しいね、愛しいボクのお姫様。絶対、あの狼から手に入れてみせるよ」
妖しく微笑み、たどたどしかった言葉がはっきりとしていく。わたくしから吸い取ったのは、ギベオンとの契約を結ぶ魔力だったのか、噛み付かれた首筋には、傷跡は残っていなかった。
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