鬼の時

またたび

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2章 赤き光

白湯

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「とりあえず中に!」外を見回し木戸を閉めた。
女が驚くのも無理はなかった、ヘルメットは脱いで居たが、迷彩の戦闘服、迷彩のサスペンダー、腰に彈帯、戦闘靴、身長180cmの大男が現れたからだ。
子供は怯え女の後ろに隠れ、睨んでいた。
竜二は思い出した様に胸ポケットを探る、あった、キットカットだ。袋から出し二つに割った、ひとつを自分の口に入れた。残りの半分を子供に差し出した。
女が取り匂いを嗅いだ、角を僅かにかじり、子供に渡した、僅かでもとてつもない甘さに、緊張していた顔が緩んだ。
「甘いね!」と子供と女は笑顔になっていた。
「おさむらいさん、汚いかもしれないけど」「まあ、上がってあたってください」。
囲炉裏の前に通された、暖かい、白湯の入った茶碗を渡された。
竜二のヘルメットを不思議そうな顔をして見つめる子供、竜二はそれを子供に被せた。
以外に重い88形鉄帽、しかし両手で押さえ喜んでいる。
スマホは圏外、「お電話を借りたいのですが?」と再び頼んだ。
しかし、この家の中には、文明的な物は無い。
でんわ?電話もテレビも無い、明かりは時代劇で見た行灯だ。まるで時代劇?即座に映画の戦国自衛隊を思い出した。まさか、タイムスリップ?
しかし、現状を冷静に判断すれば、タイムスリップしかなかった。
スマホの電波など無い。GPSも使えない、まだ人口衛星なんて飛んでいない。道中には街灯も舗装道路も無かった。
佐藤さんを殺した連中は刀を持っていた。
文明を知らないこの親子の暮らしぶり。
戦国時代か江戸の頃にタイムスリップした事はすぐに理解出来ていた。
いろんな事考えて黙りこむ竜二に向かって女が聞いた、「おさむらいさん、失礼とは存じ上げますが、お名前は?」
ふと我に帰る、「すいません。赤井竜二と申します」。
すると、女が、「あたいは幸、この子は桜って言います」。
「失礼とは存じますが、旦那さんは?」と赤井が尋ねた。
「この子が生まれてすぐに、山賊に殺されました」。「だからこの子は父親の顔も知らないまま、あたい一人でなんとか」。
「すいません。」と赤井。
「なんで謝るのですか?」と幸。
竜二は黙ってしまった。なぜなら自分の子供の頃を思い出した。父親の存在、母親の愛情、心のどこかで憧れていた家族の温もり。
竜二のヘルメットを抱えたまま、母親の側でいつの間にか眠っている子供を見て、複雑な気持ちになっていた。
「この子が居るから、今日まで生きてこれたのかもしれない。」と言って子供の頭を撫でる幸。
そんな姿に幼い頃、優しかった母親の姿を思い出し、幸に重ね合わせる竜二。
長い時間忘れていた、母親の顔、しかし思い出そうにも暴力を振るう時の母親の顔しか思い出せないでいた。
表情を無くしまるで臘人形の様に固まる竜二。
幸が話しかけた、「お疲れでしょうから、この布団で、今日は、お休みください。」
「恥ずかしい程の布団で申し訳ありませんが。」
ふと我に帰る、「あっ!そうだ!」立ち上がる竜二。外に出て車両の鍵を開け中に入る、懐中電灯で車両の中を探す、「あった!」丸い固まりを持って家の中に戻った。
「幸さんこれを使って下さい」笑顔で差し出す竜二。
寝袋と毛布だった、使い方を説明して寝袋に入った幸と子供に毛布を掛けた。
うっすら涙を浮かべ、「暖かい!」喜ぶ幸を見て、微かに微笑む竜二。
今までの作り笑顔とは違う微笑みだった。
「赤井様は優しいお顔されるのですね、」「こんな私たちみたいな者に。」
そんな事を言う幸に、「赤井様はやめてください、侍でも無いし、」「俺は普通の人ですから、竜二でいいですよ。」
ポカンとした顔で見つめる幸、「だってお召し物が?」
「あっ!これ?」照れた様に微笑む竜二。
あわてて、寝袋に潜り込んだ、「これで幸さんと一緒ですよ!」と微笑む竜二。
緊張も緩み、暖かさから、すぐに寝入った幸を見ながら、久しぶりの和み癒しの感覚の中竜二も眠りに落ちた。
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