二つの国と少女

bunya

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一章

石畳

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  人々に声をかけられながら、石畳の道へ入ると、前を一人の男が歩いているのが見えた。男は振り返りこちらを見ると言った。
「あぁ、良かった。見つかったんだね。」
  猫みたいな癖毛の眼鏡をかけた青年が、二人に笑いかけている。柔和な物腰でこちらへ歩みより、食えない瞳で見つめていた。
「イーグル、今日は城へ来る日?また旅に行った時のこと教えてくれない?」
  イーグルは王の側近を務めるジルの息子で学者だ。複数の国へ旅をしたことがあり、政治や産業、経済、語学、天文学、地学、歴史、伝承、科学など分野は広い。一風変わった所があり食えない男ではあるが、根は明るく優しい人物だ。バリスとは同い年で友人でもあり、恩人の息子でもある。バリスには両親がいない。変わりに育て後ろ楯となって支えてくれたのがジルであった。バリスはジルのもとで剣術を習い、イーグルは学問に勤しみ、兄弟のように暮らしてきた。
「兄弟が良いっていうなら、後で顔出すよ。王様から調べ物頼まれててね。その報告が終わったらね。」 
  イーグルはそう言って、片手にもつ封書を顔の辺りまで上げて見せてバリスを一瞥する。
「二人とも毎日変わらないね。うちの屋敷まで姫がまたいないって、城の人が探しに来てたよ。僕は面白いからいいけど。」
  イーグルが続けてそう言うと、バリスは項垂れてため息をついた。
「俺は面白くない。」 
「まぁまぁ。バリスは真面目過ぎるんだよ。そんなんじゃ眉間に皺が寄ったまま戻らなくなるぞ?」
  イーグルはけたけたと愉快に笑っていた。
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