流星群の落下地点で〜初恋の人が自罰的だったので溺愛することにした〜

古森きり

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初恋の人が自罰的だったので溺愛することにした

初体験(1)

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「じゃあ……その……部屋で待っている。僕の部屋でいいんだろうか?」
「あ、う、うん。今夜も、リグの部屋に行くよ」
「わかった」
 
 リグを部屋まで送ってから、食堂に行ってみる。
 リョウがノインにオムライスを作って、食べさせたあとだった。
 やはり間に合わなかったか、と肩を落としていると、ノインに気づかれて手を振られる。
 
「相談終わったの?」
「ああ、だいぶ話が進んだよ。やっぱりシドはすごいな」
「あいつ本当にムカつくよねぇ。護送任務の時も全員に怪我させることなく帝国兵おちょくり倒してここまで連れてきたしさぁ」
「そういえばジンくんが帝国で『海龍の牙』の動きが活発になっているって聞いたけど、その辺どうだったんだ?」
 
 水を飲みながら、ノインに聞いてみる。
 すでにジンは昇級してすぐに帝国に情報収集に向かったはずだ。
 理由は『海龍の牙』の狙いが[異界の愛し子]だから、という。
 だとしたら、フィリックスにとっても無関係ではない。
 リグは英雄アスカよりもて適性属性が多く、魔力量も多い。
 リョウはリグよりも魔力量が多いので、二人揃うと“できないことの方が少ない”という。
 
「活発だったね。地上にも構成員がいたもん。帝国兵も本部近くに駐屯地作ってたけど、さすがにシドと僕がいたから手出しはしてこなかったよ。帝国側も本気で[異界の愛し子]を獲るんなら、あの程度の兵力じゃ無理ってわかったんじゃない? 流入召喚魔三十人を、シドと僕だけで守ってここまで連れてきたわけだし」
「お、おう……そりゃさすがだな」
 
 名実ともに世界最強と、まだまだ成長期の最年少剣聖。
 それに守られる[異界の愛し子]。
 手に入れたいとは思うだろうが、だとするのならこの自由騎士団フリーナイツの総本山から誘き出さなければならないだろう。
 だから今のところ、各国は手をこまねいて傍観している。
 
「他の犯罪組織は今のところあんまり動きがないみたいだけど、シドが『海龍の牙』の人たちを脅して釘を刺しておいたからどうだろうね?」
「シドに脅されたんじゃあ、おっかなすぎて手なんて出せないよなぁ」
「あんまり煽りすぎて本気に出られても困るから、程々にしておいてほしいんだけど……。ふあ……」
「ノインももう休んだらどうだ? お前さんだって一週間ずっと気を張りっぱなしだったんだろう?」
 
 不意にあくびをしたノインが珍しくて、そう声をかけると目を擦りながら「そうだねぇ」と目を擦る。
 三十人の命を預かりながら守り、ここまで連れてきたのは本当に身も心も疲れ果てただろう。
 剣聖として人々の期待に応える日々も、フィリックスには想像もできない重圧に違いない。
 
「僕も今日はもう休むよ。リョウちゃんのオムライス食べたし」
「そのリョウちゃんはどうしたんだ?」
「思い出したレシピがあるから、書き出してメモしておきたいって部屋に帰ったよ。また今度食べさせてくれるんだって。楽しみだね」
「へえ、そうか。それは確かに楽しみだな……」
「だよね!」
 
 そんな話をして食堂ら出たあと、レイオンの溜めていた事務仕事を手伝った。
 あっという間に陽が落ちて、約束の時間。
 仕事に集中していれば気も紛れるかと思ったが、さすがに夕方を過ぎれば期待で勝手にそわそわとしてしまう。
 あんまり集中できなくなり、レイオンにも「珍しいな?」と疑われるほどわかりやすかったようだ。
 だがそれも仕方ない。
 初恋の人と、今日、最後までする。
 その時間がどんどん迫っているのだ。
 緊張と期待が際限なく膨らむ。
 自室で風呂に入り、キィルーを先に寝かせてからリグの部屋へといそいそ向かった。
 ドアをノックすると、「どうぞ」と招き入れる声。
 
「ええと、その……本当に、大丈夫?」
「ああ。準備は……したから」
 
 湯上がりのリグが、今日もバスローブ一枚で招き入れてくれた。
 扉を閉め、鍵もかける。
 頬に触れると、その手にリグの手が重なった。
 
「ええと……し……寝室、で、いいだろうか?」
「も、もちろん」
 
 そんな確認をして、手を繋いで寝室に向かう。
 心臓が早鐘のようでいっそ痛い。
 リグの部屋の寝室に入ると、とりあえず手を繋いだままベッドに座る。
 
「抱き締めてもいいか?」
「あ……ああ」
 
 許可を得てから、抱き締める。
 背中に手を回して撫でるように触れていると、初めてリグがフィリックスの背中に腕を回してきた。
 その瞬間、ドッと自分の心音が大きくなる。
 確かに昼間、そんなようなことを言っていたけれど。
 
「や、やべー、すげー嬉しい……」
「な、なにがだ?」
「リグがおれの背中に腕を回してくれたこと。ピタってくっついて、あったかくて幸せだなって」
 
 自分の気持ちを素直に伝える。
 そうしてリグにも、自分の感情の名前を覚えていってもいたい。
 リグの“能力”などとは関係なく、リグの“心”からの行動で自分はこんなにも喜ぶものなのだと知ってほしい。
 
「あったかい……そうだな。あったかい」
「うん。リグのことが、好きだなーって、改めて思う。リグ」
 
 名前を呼んで、少しだけ体を離して顔を見つめる。
 頰に手を当てて、溢れる気持ちを眼差しと声に全部乗せて囁いた。
 
「好きだ」
 
 目を見開かれる。
 キスをしていいか、と聞くと頷かれた。
 くどいかもしれないが、ダロアログに意思確認もされず陵辱され続けた彼に、本来こういうことは互いの意思を確認し合うものなのだと覚えていってほしい。
 律儀に目を閉じてくれた彼の許しに笑みが溢れる。
 軽くて甘いキスから初めて、舌で柔らかな唇を濡らすように舐めて唇の中――咥内に侵入していく。
 鼻から息が抜ける。
 
「ん、ふっ、ンン……んっ……」
 
 後頭部に手を添えて、逃げ場と呼吸を奪う。
 舌を絡めると、これまでされるがままだったリグの方からもフィリックスの舌や咥内を舐めてくる。
 やり方がフィリックスと似ていて、真似てくれているのだとわかるから堪らない。
 口を離すと、ふうふう息を荒くしながら潤んだ瞳で見上げてくる。
 
「可愛い、リグ……好きだ。おれは本当に……ずっと、初めて会った時から、好きだったんだ」
「う、ん……」
「本当に、いい? おれ、初めてで下手かもしれないけど……大事に、する。頑張ってリグに気持ちいいって思ってもらえるようにするから……」
「う……うん」
「嫌だったり、痛かったりしたら絶対に言ってくれよ?」
「わ、わかった」
 
 しっかりと約束してから、優しく押し倒してもう一度キスを交わす。
 キスしながら最近ではいつも通りになりつつある、胸や腹への愛撫。
 唇を離したあと、胸を揉みながら首筋に舌を這わす。
 切ない声が漏れる。
 嫌がってはいないらしい。
 胸の飾りを唇で喰む。
 左手を胸から腹へ移動させる。
 そんなフィリックスの髪にリグの指が差し込まれた。
 彼から触れてくれるなんて、と思わず顔をあげる。
 
「っ……」
 
 切ない眼差しとかち合う。
 目許も紅潮し、潤んだ紫色がフィリックスの顔を映している。
 ごくん、と喉が鳴った。
 
「ふう……はあ……フィー、僕は……一日中解しておいたから……すぐにでも……」
 
 と、煽ってくる。
 シドには「男の下半身見て萎えたら」なんて言っていたけれど、フィリックスとて男だ。
 この数日間で、十分妄想した。
 バスローブの紐を右手で解く。
 上半身を起こし、すう、と息を吐いた。
 
「わかった。じゃあ、触るね」
「んっ」
 
 こくり、と頷かれて腰に手を当てたままバスローブを脱がす。
 白い肌、細い腰、お世辞にも肉つきがいいとは言えない太腿。
 中心には思っていたのとほとんど変わりのない男のものが、汁を垂らしながら持ち上がっていた。
 熱い息を吐く。
 
「嬉しい。おれが触って、興奮、してくれた?」
「っ……よく、わからない。催淫効果スライムも使ってないのに、こんなふうになったのは初めてだから……」
「そ、そうなのか」
 
 またそんな無自覚に煽るようなことを、ときつく目を閉じた。
 理性がものすごい勢いですり減っていく。
 それをなんとか耐え抜いて、改めて一糸纏わぬ彼を見下ろす。
 初恋の人。
 命の恩人。
 生き方を示してくれた人。
 初めての恋人。
 フィリックス・ジードの人生で、これほど特別な人はいない。
 
「おれも、恥ずかしいくらいバキバキで余裕なくて……ごめん」
「ッ……」
「あの、でも……本当に大丈夫? 怖くないか? やめるなら、もう今しかないよ」
 
 自分の一物に触れて、先走りで濡れたところを彼に見せる。
 こんなに煽られて本当に余裕がない。
 けれど、それでも彼が生きてきた時間のほとんどが、人間としての尊厳も感情も権利も価値もなにもかも否定するようなものだったと知っているから、どうしても聞いておかねばいけないと思っていた。
 男の下半身を見て萎えるかもしれない、という可能性よりも、フィリックスとしては“自分を犯そうとする男”を目の前に彼がまた諦めてしまうことの方が怖い。
 彼の人生を踏み躙り続けた男と同類に堕ちるのだけは、絶対に避けたいのだ。
 本当に、ここで許しが出たら後戻りはできない。
 けれど彼に――彼の心にちゃんと選んでもらいたい。
 それを真摯に込めて、問い質した。
 
「……怖くない。いや、その……怖い、けれど……それはあの、僕が、知らない感覚でおかしくなるのが怖い、という意味で……君が怖いとかでは、なくて……だから…………だから……」
 
 時折言葉を選ぶように息を詰まらせ、視線を右往左往させながらもリグがゆっくり足を曲げて太腿を両手で抱える。
 濡れそぼり、くぱ、と開く秘所の赤い肉壁をまざまざと見せつけるようにして――。
 
「挿れて、ほしい」


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