「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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上限突破!

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「……固有ギフトスキル、【限界突破】ですか。初めて見るスキルですね」
「『スキル、職業のレベルがカウンタースタッフした状態でこのスキルを使用すると、上限が上昇する。使用する対象はスキル保有者以外でも可。なお、職業レベルは素材が必要となる場合がある』……か」
「ありがとうございます、お返ししますね」
「は、はい」

 二人はエルンの固有スキルのみを読み上げた。
 まるで最初からそれ以外に興味がないように。
 親子は顔を見合わせると、シシリィがにっこり笑ってエルンにカードを返す。

「以前の職場……トリニィの町ではあまり目立ったご活躍はされておられないようでしたが」
「は、はい。【限界突破】なんて誰が使うんだよ、って言われてて……」
「なるほど、確かにスキルレベルをカウンターストップまで上げるのは至難の業ですものね」

 一般的なレベルの問題だ。
 上限までレベルを上げるなんて狂ったような研鑽の日々を、何十年も続けなければならない。
 職業レベルもスキルレベルもその最大レベルは99。
 そこまであげるのに人一人の人生では、到底時間が足りないだろう。

「ですが、それは見習いや初級スキル、基礎スキルには当てはまりませんよね?」
「え?」
「見習いや初級スキル、基礎スキルは基本的にレベルカウンターの最高値は10。無論、どれも大したことのないスキルではあるが、基礎基本は断じて侮るべきではない——というのが儂の自論だ。誰もが持っているそれらの【限界突破】をしたらなにが起こる?」
「……っ、……さ、さあ?」

 見習い——職業につくと、必ず最初はこの見習いからスタートする。
 たとえば剣士になるには『剣士見習い』という職業に就き、『見習い』のレベルをカウンターストップのレベル10まであげるのだ。
 そうすれば『見習い』以外にようやく『剣士』の職業に就けるようになる。
 初級スキルとはそれらの『見習い』が最初に覚える戦闘系のスキル。
 基礎スキルも、また『見習い』が覚える戦闘以外のスキル。

(でも、言われてみれば確かに……盲点だった。見習いや初級や基礎なんて、簡単にレベル10まであげられて、それ以降は使わないのが普通……)

 むしろ、そこから先が本当の人生。
 皆、職業に就いたら忘れてしまう。
 それのレベルを、上限を、あげる?

「やってみてくれねぇか?」
「わたしもわたしも! お願いします!」
「は、はい……。あの、でも、固有ギフトスキルを使うのは、初めてで……」
「なぁに、誰でもそんなもんだ。儂が上限を上げてほしいのは『剣士見習い』だ」
「わたしは『巫女見習い』をお願いします!」

 手を差し出される。
 本当に、本気らしい。
 金級ギルドのギルドマスターとその娘。
 いやしかし、シシリィの職業は巫女だったのか。
 巫女といえば、回復職の最低ランク。
 まあ、ギルド職員やギルドの受付という職業はこの世界にないから、仕方ない。
 “冒険者ギルド”とは人間が作った職業なのだ。
 女神により与えられたわけでも、認められたわけでもない。
 ともあれ、初めて必要とされたのだ。
 全力で、やるだけやってみよう。
 差し出されたギルドマスターの手を握り、集中する。
 目を瞑ると、頭の中に『10』という数字が現れた。
 真っ暗な闇の中で、その『10』と自分の手が見える。

(わかる)

 人差し指を、一桁のところに置く。
 からら、からら、と上に動かせば“上限”が上がるのだ。
 かち、かち、かちり。
『10』が『20』になる。
 それ以上は上がらない。

「でき、ました?」
「ほほう?」

 目を開けて手を離す。
 ギルドマスターは自身のステータスを開いて、ぽちぽちとなにかを確認。
 笑顔で頷いた。
 つまり——。

「成功だ! 『剣士見習い』の上限レベルが20になっている!」
「本当!? すごい! 次、わたしもお願いします!」
「は、はいっ!」

 そう言って差し出されたシシリィの手。
 小さく白く細いその手に、ハッと気がつく。
 年頃の女の子の手を握るなんて、生まれて初めてだ。
 しかも、強面のお父様が横におられる。
 思わずギルマスを見ると、エルンの視線に気がついてシシリィを見て「ああ、なるほど」と言わんばかりの顔で頷く。

「まあ、やるだけやってみなさい」
「は、はいっ」
「これは実験なのだから、儂もそこまで許容が狭いわけではないさ」
「……はい」

 目はそう言ってないんだが。

「い、いきます」
「はい、お願いします」

 微笑まれて、ドキッとする。
 やはりとても可愛らしい。
 長いまつ毛、淡い色の唇、どこから誰がみても整った顔立ち。
 優しい声と雰囲気。
 周りを明るくするような笑顔。
 そんなシシリィの手を、自分なんかが握って良いモノなのか。
 いや、ギルマス——お父様にもお許しをいただけている。
 顔はやばかったけど。
 これは作業。実験。頼まれたからやるのだ。
 ギルマスの目がやばかったけど。
 目をきつく閉じて、先程と同じように指で肩を動かしていく。

「で、できました」
「ありがとうございます! ……どれど——」

 はた、と彼女の目線が止まる。
 そして、急にポロポロと泣き出した。
 固まる父。
 固まって震え出すエルン。

「シ、シシリィ、どうした! どうしたのだ!? なにかあったのか!? どこか体に異常が!? き、貴様! 俺の娘になにをした!?」
「ななななななななにも、なにも!」
「! ち、違うの父さん! 『巫女』が出てるの!」
「!?」
「?」

 死んだ!
 と、思ったエルンだが、シシリィがギルマスを止めてくれる。
 そしてエルンに向き直ると、また手を掴まれた。
 今度はシシリィから、エルンの手を。
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