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可能性
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「ありがとうございます! エルンさん! あなたの固有スキルは素晴らしいです! まさしくギフト! わたし、もう諦めていましたた……『巫女』になるの……!」
「え?」
聞けばシシリィは幼い頃から母のような『聖女』——回復役に憧れていた。
しかし、シシリィにその才能はなかった。
『巫女見習い』をレベル10にしても、その上位職にあたる『巫女』を会得できなかったのだ。
“見習い”をレベル10にしてもその職業を会得できない場合、“才能なし”や“適性なし”と判断ができる。
人生を無駄にしないために、それは素晴らしいことだと教わった。
シシリィもまた、その考えに倣って諦めたのだ。
他の職業を得たシシリィは、しかしやはり、どこか目標であり理想であった母と同じ『聖女』を、諦めきれずにいた。
だから父や母と同じ冒険者にはならず、ギルド職員になったのだという。
けれど——。
「信じられないことに、今エルンさんがレベル上限を解放してくれたら職業会得可能欄に『巫女』が現れたんです! きっと巫女見習いをレベル20まで上げることができれば『巫女』を会得できます!」
「そ、それって——!」
「素晴らしい……! なりたくても才能や適性がないと諦めていた職業に……就ける……! 諦める必要がなくなる! 人間の可能性が広がるということではないか!」
「はい! 父さん……! わたし……母さんみたいな『聖女』に……っ」
感極まったのか、シシリィはまた顔を覆って涙を流した。
悲しみの涙ではない。
喜びの、涙。
「……シシリィ……よかったなぁ……」
「うん……うんっ」
娘の頭を抱き締める父。
その光景を見ていたら、エルンの目にも涙の膜が張っていた。
こんなに、これほど——喜んでもらえるなんて。
そんな力が、自分にあったなんて。
「! お前……」
「え……」
気づかないうちに泣いていた。
夢への希望を得た彼女の姿と、そんな希望を与えられた自分の力に。
***
なんにしても、まだまだ力は検証が必要。
そんなわけでギルドで希望者を募り、エルンの固有スキルを調べてみることになった。
「だが、それだけじゃあお前も滞在費が底を尽きるだろう。だからうちのギルドで働いてみねぇか?」
「え! お、俺が金級ギルドで!?」
「冒険者としてではなく、職員としてな」
「……あ、で、ですよね」
エルンの職業は現在『無職』!
見習い系もなにもない状態。
そしてギルド職員はそういう“職業”にはカテゴライズされないため、職業レベルは上がらない。
だが、ギルド職員はなくてはならない“職業”だ。
「雑務をこなしながらお前さんの固有スキルを詳しく調べたい。今儂とシシリィの職業レベル上限を上げたことで、固有スキルのレベルが上がっているはずだ。それによりなにか変化が出てるだろう。それを記録していく必要がある。お前さんの固有スキルはそれだけレアだ」
「そ、そうなんですか……?」
「級で言うなら金級だよ。調べてみんことにははっきりとしたことは言えんが、少なくとも儂が生きてきた中で【限界突破】なるスキルは見たことがない」
「っ!」
固有スキルに限らず、スキルにはレア度がある。
上から金級、銀級、銅級とランク分けされており、誰でも持っている【ステータス】などは同級。
少し珍しければ上位の職業スキルなどは銀級。
世界で一個人しか持ち合わせていないものは金級に指定される。
(し、信じられない……ゴミスキルって言われてたのに……)
シシリィはトリニィの冒険者ギルドで【限界突破】と耳にして、即座にエルンのスキルを“金級”と判断して声をかけたそうだ。
すごい。
可愛いだけでなくデキる女。
すごい。
そして金級は詳細を記録するべきものと国法で定められている。
後の世に同じスキルが発現した者に、情報を残すためだ。
とはいえ、金級スキルの情報は王城の禁書庫に厳重に保管される。
「もはやお前さんの存在はそんくれぇの価値になったってことだ。こっちとしても護衛をつけて目の届くところで管理してぇ」
「な、なるほど。それでギルドの職員……ですか」
「心配せずとも給料は出す。それに、急に城に監禁されて研究素材になるよりマシだろう?」
「!? は、はい!!」
選択肢があってないようなものである。
「……あの、でもギルド職員って、なくてはならない“職業”だと思うんですけど、どうしてステータスに表示されない——いや、会得できないんですか?」
「簡単な話だ。基本的にギルド職員は“職業”じゃねぇ。“職業”は戦闘能力、生産能力にのみ設定されている。女神エレメンタルプリシスが創星神タパロンから自分の身を守るために、弱い“ヒト”に与えるものだからだ」
「っ」
それは神話だ。
創星神タパロンは、以上の女神エレメンタルプリシスに己が妻になるよう強制した。
だが女神エレメンタルプリシスは拒む。
理由は「お前のこと好きじゃないから」。
まあ、妥当な理由である。
誰もが納得のその理由を、創星神タパロンだけが納得しなかった。
もうこの時点でひどい神話だが、ひどいのはまたここから先である。
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