「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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王都探索

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「さて、護衛ですが……エナさん、ケイトさん、ティアさん、エルンさんの護衛をお願いしてもいいですか? 貢献度ポイント五十お支払いします」
「ええ! もちろんいいわ」
「やる! やるぞ! 任せろ!」
「うちもやるやるやるぅ~!」
「一応迷子になった時のためにタータもつけますね」
「そ、そんなに!?」

 三人も護衛をつけてもらい、さらにタータまで。
 驚くエルンに、シシリィは微笑む。

「王都の往来を通る人の多さは、このギルドに来る一日の来日者数の数倍ですよ」
「…………」

 素直にタータを連れて行くことにしました。

「それではお三方、エルンさんをよろしくお願いします」
「承った!」
「もちろんです。エルンさんにはお話したいことがたくさんありましたからね」
「うむうむー」
「? 話したいこと?」
「もちろん、エルンさんのおかげで得られた職業のことですよ」

 エナが「カウンターの前にいつまでもいるわけにはいきませんから」と促され、ギルドの外に出る。
 最近図書室にこもって魔獣の勉強ばかりしていたから、陽射しが眩しく感じた。

「じゃあまずは西区に行くんだな!」
「待ってください、ケイトさん。ちゃんとルートを決めないと。その方が効率よく回れますよ」
「そーだよそーだよ! 昼ごはんの時間をちゃーんと確保しないとねぇ」
「えっと……それじゃあ、その、護衛よろしくお願いします」

 護衛なんて、と思うが、これが金級固有スキルというやつなのだろう。
 とにかく、今日は王都を歩いて場所を覚える。

「西区を一周するように回ればいいんですかね?」

 不安に思いながら、シシリィに借りたノートを開いてみる。
 すると一ページ目に『王都探索の心得』なるメモが。

 その一、無理しない。
 その二、楽しく巡る。
 その三、水分と休息はこまめに。

 以上。
 ……心得がガチすぎる。

(あ、西区探索おすすめルート!)

 最初のページで、あまりのガチ感に早くも精神的ダメージを受けたところだが、次のページからは『西区探索おすすめルート』『東区探索おすすめルート』『南区探索おすすめルート』『北区探索おすすめルート』の四項目があった。
 文字だけで書いてあるそれによれば、中央区——現在地から、U字型にめぐるのが効率が良い、とある。
 さらに、『治安の悪いポイントは、現場で要確認!』と赤いインクで書いてあった。

(そういえば王都は冒険者崩れのゴロツキが勢力争いを繰り返していて、定期的に下剋上が起こったりして根城が変わるから、王都の外から来た冒険者には必ず近づかないように注意するって言ってたな)

 エルンも二日目にギルマスに注意されたが、その時は「まあお前しばらくはギルドの外には出る予定ないしなぁ。大丈夫か」と言われたのを思い出す。
 冒険者崩れは、自分の能力を過信していた者が意気揚々王都に来て、自分の実力と国中から集まる冒険者の質との差に愕然とし、生まれて初めて挫折を味わってよく生まれるそうだ。
 コロシアムで賞金目当てにアルバイトをさかても、贅沢をしたくてその日暮らしになっていき、終いには「俺がやりたかったのはこんな生活ではない」と自暴自棄になって王都を徘徊。
 ゴロツキの喧嘩に巻き込まれたりして、そのままそこに身を寄せるのが、もっとも多いパターン。

(デンゴ、こうならないといいけど……)

 ちょっと心配である。

「では、この書いてあるルートで回ってみましょうか」
「はい、よろしくお願いします」

 エナの適切な案内で、中央区から西区へと赴く。
 案の定、ケイトとティアの説明はまるでわからない。
 西区は居住区が八割を占めている、王都では見るべきもののない場所。
 けれどその分老舗が多く、西区の武器屋、防具屋、宿は高級店ばかり。
 食堂や酒屋も、美味しい場所がかなり多いそうだ。

「なななな! なんと! こんな店があったのは初めて知ったのだ!」
「ほんとだあ! うちも王都暮らし長いけど、あんな店初めてだよ! ねえねえ、寄っていい!?」
「おやめなさい、お二人とも。この辺りのお店は高いですよ」
「「うげっ!」」

 エナに指摘され、ケイトとティアはショーウィンドウを覗き込む。
 二人が興味を示した武器屋には、似つかわしくないように思う。
 しかし、なるほど、とエルンも顔を引き攣らせた。
 叩き割ろうと攻撃を仕掛けようものなら、爆発する魔法が付与されている強化ガラス。
 中に飾ってある剣はロックドラゴンの鱗と、ジャンニー氷結湖の水と召喚獣リトルイフリートの炎で鍛えた、お値段にして白金貨二枚分の品。
 思わずお金の単位を「石貨、銅貨、銀貨、金貨、白銀貨……」と指を折って数えてしまう。
 まあ、どう考えても一番価値のある白金貨なのだが。
 こんなん買う人いる?
 こんな武器、白銀級以上でないと絶対手が出ない。

「た、高い……」
「見てよ、ケイト……オーダーメイドお受けします、だってぇ。はぁー……なるほどねぇ~。進級して、いつかこういうところで自分専用武器とかオーダーメイドしちゃうってのは、確かに夢かもねぇ~」
「オ、オーダーメイドか……確かにそうだが……白金貨……」
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