「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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王都探索 西区了

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「ワタシはもっと知りたい。エルフとしての本能が告げているのです。女神が与えてくれた『職業』の可能性! もっともっとできる!」
「っ!」
「小落雷!」

 取り出した杖で小規模な雷雲を作り出し、ゴロツキたちに落雷を落としていく。
 王都は基本的に魔法も武器も不可。
 戦いはコロシアムで行うことが義務づけられている。
 だが、このようなゴロツキがウロウロしているため、自衛での武器・魔法の使用は許されていた。
 エナの落雷で半数近くが情けない悲鳴をあげて逃げ回り、他のゴロツキとの連携はズタボロ。
 この隙に逃げよう、とケイトたちと視線を合わせて頷き合う。

「みゅー!?」
「え!? タータ!?」
「これは!?」

 タータが突然、エルンの肩から上空へと飛び上がる。
 ラッキーエアリスは確かに飛び跳ねる生き物だが、あれはまるで川から魚を釣り上げるかのような——そんな動き。
 空中で弧を描き、タータが向かう先には釣り竿のような魔法具を持つ男。
 それを確認した瞬間、ティアが釣り竿男の方へ向かってジャンプする。
 双剣を構え、身を回転させながら目には見えない糸を切り裂き、タータが男の手に捕らえられる前に救出してくれた。

「タータ! ティアさん!」
「へへ、楽勝楽勝~! ってうわあああっ!」
「シャクティア殿!?」
「シャクティアさん!」

 屋根に着地したティアの足下が、沼のようになって沈む。
 そのままズブズブ沈み込み、落ちた先には檻。
 典型的な、罠魔法だ。
 基本魔獣の生捕に使われる魔法で、それを街中、人間に使うなどエルンは聞いたことも見たこともない。
 それをやるからゴロツキなのだろうが、信じられないものを見た。

 魔人とラッキーエアリスゲットだぜぇ~! あとはエルフ女だけだ! 畳みかけろ!」

 屋根の上で釣竿を持っていた男が叫ぶ。
 どうやらあの男がゴロツキたちのリーダー格らしい。

「アハハ! ドジっちゃったぁ☆ ……確かにちょっと前のうちなら出られなかっただろうねぇ、こんな魔法使われたら」
「あ?」
「でも今は違う。うちはエルンのおかげで『魔法使い』の職業も手に入れた。そのスキルも! うちはもう、物理特化の魔人じゃないよ! 強化付与! 魔人剣!」
「なっ!」

 一瞬で剣に魔力を付与し、高速で檻を切り刻むティア。
 多重の結界が使用されていただろうに、それすらもなんなく切り裂いた。

「あ、ありえねぇ! 危険度赤の魔獣も逃げられない檻だぞ!」
「くそ!」
「代わりの檻は!?」
「持ってきてねぇ!」
「撤退だ撤退!」
「待て! お前たち! 往来の場で人身及び召喚獣の誘拐を企てた罪は重いぞ! 騎士団に突き出してやる!」

 ケイトが追いかけようとするが、逃げるのはお手の物とばかりに四方八方に逃げていくゴロツキ。
 たった四人でそれらを追い、捕らえるのは難しい。
 分散して追うのは捕縛の危険性もある。
 奴らの狙いはタータとエルフのエナ、魔人のティアだ。
 個々で分かれてしまうのは奴らの思う壺かもしれない。
 仕方なく、騎士団に被害を届け出てギルドに帰る。
 騎士団の対応からしてゴロツキたちの狼藉は、いつものことらしい。
 だとしても、「いつものことだ」と真面目に対応してくれないのは困る。
 紙一枚の提出で、詳しい状況など聞かれず詰所を半ば追い出されて一番ガッカリしていたのはケイトだった。
 ゴロツキに襲われて一番なにもできなかったのと、憧れの騎士団の対応とのダブルパンチ。
 けれど、エナとティア、エルンに言わせれば間合いの長い槍を持っていたケイトが近くにいてくれたのは防御面でとても大きい。
 エナの武器もそれなりの長物ではあるが、やはり槍とは比べ物にならないから。
 今は再びブレスレットに戻った魔法杖。
 エナはニコニコ笑いながら、今後も研究と施策を続けていつか装飾品武具の店を出したいと夢を語ってくれた。
 彼女の研究は冒険者の生活を、大きく変えるものになるだろう。
 重い武器を持ち歩かなくて済むようになる。
 大きな武具で、狭い場所に入れなかったことで、未探索になっているところへ入れる冒険者も増えるかもしれない。
 なにより、女性の冒険者には「可愛い!」と人気になること間違いなし。
 実際ティアが早くも「成功率安定したらうちの半月刀も、ブレスレットにしてぇー!」と抱き着いていた。

「着きましたね」

 あっという間に中央区にある、冒険者ギルドの建物にたどり着いてしまった。
 後ろを振り返り、三人に頭を下げるエルン。

「あ、今日はありがとうございました」
「みゅーん、みゅーん」
「こちらこそ。エルンさんに上げてもらったレベル上限の成果を、一部だけでもお見せできてよかったです」
「うんうん、結構強くなれたでしょ? うちら!」
「いや、私はもっと強くなるぞ!」
「はい! みなさんすごかったです!」

 本当にすごかった。
 そして、きっと彼女たちはもっともっと強く、大きく飛躍することだろう。
 その一助になれたことは、とても嬉しい。

「俺も頑張ります!」
「おう! じゃあ明日も護衛するねぇー!」
「ああ、明日は朝から回るのか?」
「え?」
「「え?」」
「明日は東、南、北、どこから回るとか決めてないんですか?」
「!」

 まだまだ続くよ、地獄の王都探索。
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