「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

文字の大きさ
21 / 51

王都探索 西区了

しおりを挟む
 
「ワタシはもっと知りたい。エルフとしての本能が告げているのです。女神が与えてくれた『職業』の可能性! もっともっとできる!」
「っ!」
「小落雷!」

 取り出した杖で小規模な雷雲を作り出し、ゴロツキたちに落雷を落としていく。
 王都は基本的に魔法も武器も不可。
 戦いはコロシアムで行うことが義務づけられている。
 だが、このようなゴロツキがウロウロしているため、自衛での武器・魔法の使用は許されていた。
 エナの落雷で半数近くが情けない悲鳴をあげて逃げ回り、他のゴロツキとの連携はズタボロ。
 この隙に逃げよう、とケイトたちと視線を合わせて頷き合う。

「みゅー!?」
「え!? タータ!?」
「これは!?」

 タータが突然、エルンの肩から上空へと飛び上がる。
 ラッキーエアリスは確かに飛び跳ねる生き物だが、あれはまるで川から魚を釣り上げるかのような——そんな動き。
 空中で弧を描き、タータが向かう先には釣り竿のような魔法具を持つ男。
 それを確認した瞬間、ティアが釣り竿男の方へ向かってジャンプする。
 双剣を構え、身を回転させながら目には見えない糸を切り裂き、タータが男の手に捕らえられる前に救出してくれた。

「タータ! ティアさん!」
「へへ、楽勝楽勝~! ってうわあああっ!」
「シャクティア殿!?」
「シャクティアさん!」

 屋根に着地したティアの足下が、沼のようになって沈む。
 そのままズブズブ沈み込み、落ちた先には檻。
 典型的な、罠魔法だ。
 基本魔獣の生捕に使われる魔法で、それを街中、人間に使うなどエルンは聞いたことも見たこともない。
 それをやるからゴロツキなのだろうが、信じられないものを見た。

 魔人とラッキーエアリスゲットだぜぇ~! あとはエルフ女だけだ! 畳みかけろ!」

 屋根の上で釣竿を持っていた男が叫ぶ。
 どうやらあの男がゴロツキたちのリーダー格らしい。

「アハハ! ドジっちゃったぁ☆ ……確かにちょっと前のうちなら出られなかっただろうねぇ、こんな魔法使われたら」
「あ?」
「でも今は違う。うちはエルンのおかげで『魔法使い』の職業も手に入れた。そのスキルも! うちはもう、物理特化の魔人じゃないよ! 強化付与! 魔人剣!」
「なっ!」

 一瞬で剣に魔力を付与し、高速で檻を切り刻むティア。
 多重の結界が使用されていただろうに、それすらもなんなく切り裂いた。

「あ、ありえねぇ! 危険度赤の魔獣も逃げられない檻だぞ!」
「くそ!」
「代わりの檻は!?」
「持ってきてねぇ!」
「撤退だ撤退!」
「待て! お前たち! 往来の場で人身及び召喚獣の誘拐を企てた罪は重いぞ! 騎士団に突き出してやる!」

 ケイトが追いかけようとするが、逃げるのはお手の物とばかりに四方八方に逃げていくゴロツキ。
 たった四人でそれらを追い、捕らえるのは難しい。
 分散して追うのは捕縛の危険性もある。
 奴らの狙いはタータとエルフのエナ、魔人のティアだ。
 個々で分かれてしまうのは奴らの思う壺かもしれない。
 仕方なく、騎士団に被害を届け出てギルドに帰る。
 騎士団の対応からしてゴロツキたちの狼藉は、いつものことらしい。
 だとしても、「いつものことだ」と真面目に対応してくれないのは困る。
 紙一枚の提出で、詳しい状況など聞かれず詰所を半ば追い出されて一番ガッカリしていたのはケイトだった。
 ゴロツキに襲われて一番なにもできなかったのと、憧れの騎士団の対応とのダブルパンチ。
 けれど、エナとティア、エルンに言わせれば間合いの長い槍を持っていたケイトが近くにいてくれたのは防御面でとても大きい。
 エナの武器もそれなりの長物ではあるが、やはり槍とは比べ物にならないから。
 今は再びブレスレットに戻った魔法杖。
 エナはニコニコ笑いながら、今後も研究と施策を続けていつか装飾品武具の店を出したいと夢を語ってくれた。
 彼女の研究は冒険者の生活を、大きく変えるものになるだろう。
 重い武器を持ち歩かなくて済むようになる。
 大きな武具で、狭い場所に入れなかったことで、未探索になっているところへ入れる冒険者も増えるかもしれない。
 なにより、女性の冒険者には「可愛い!」と人気になること間違いなし。
 実際ティアが早くも「成功率安定したらうちの半月刀も、ブレスレットにしてぇー!」と抱き着いていた。

「着きましたね」

 あっという間に中央区にある、冒険者ギルドの建物にたどり着いてしまった。
 後ろを振り返り、三人に頭を下げるエルン。

「あ、今日はありがとうございました」
「みゅーん、みゅーん」
「こちらこそ。エルンさんに上げてもらったレベル上限の成果を、一部だけでもお見せできてよかったです」
「うんうん、結構強くなれたでしょ? うちら!」
「いや、私はもっと強くなるぞ!」
「はい! みなさんすごかったです!」

 本当にすごかった。
 そして、きっと彼女たちはもっともっと強く、大きく飛躍することだろう。
 その一助になれたことは、とても嬉しい。

「俺も頑張ります!」
「おう! じゃあ明日も護衛するねぇー!」
「ああ、明日は朝から回るのか?」
「え?」
「「え?」」
「明日は東、南、北、どこから回るとか決めてないんですか?」
「!」

 まだまだ続くよ、地獄の王都探索。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...