22 / 51
報告会
しおりを挟むその日の夜。
「なに? 儂が出かけてる間にそんな奴らが来たのか?」
「はい。けれどコロシアムの方にご案内しました。エルンさんはそのあといかがでしたか?」
「王都の地理を覚えに出かけました。あ、シシリィさんから借りたノート、すごく助かりました! 本当に色々わかりやすく書かれていて、知らないことも多いし……勉強になります!」
「明日からも頑張ってくださいね!」
「うっ……は、はい」
受付のある場所から、本棚で区切られた奥にあるテーブルとソファー。
朝礼引き継ぎをやったり、職員の休憩所になっているそこで、エルンは一日の報告会をギルマスに行っていた。
ギルマスは実際今日迷宮に出張しており、不在。
その間ギルドのサブマスターの一人であるシシリィが、ギルドの最高責任者代理を務めていた。
ギルドのサブマスターは三人おり、他に冒険者担当とコロシアム担当がいる。
ギルド内であれば、実務担当のシシリィは冒険者担当と比べてあまり強い方の権限があるわけではない。
が、今日はギルマスと共にその冒険者担当のサブマスター不在であった。
その冒険者担当のサブマスは——。
「で? この街中で襲われたっていうのは?」
「えっと、狙いはタータだったみたいです」
「なるほどね。ラッキーエアリスは珍しい。無理もないね」
露出が、すごい。
犬の獣人であるベリーヌは、元白金級冒険者。
元々はシシリィの母と、ギルマスと三人でパーティを組んでいたらしい。
けれど魔獣大量発生の時にシシリィの母の魔力が枯渇し、自身の生命力を魔力に変換する禁術まで使って治癒を施し生きながらえたことで冒険者を引退。
現在の地位に落ち着いたという。
そして露出がすごい。
おっぱいがめちゃくちゃ揺れる。
つまりこの人がシシリィの母の死の原因。
ベリーヌ自身がそれをひどく気に病んでいるので、誰も触れはしないが、その分ギルマスとシシリィへの忠誠度は誰にも負けない。
露出がすごい。
おっぱいとお尻と太ももがムチムチですごい。
思考がぶちぶち中断させられる露出。
「騎士団のやつらにも困ったもんだな。最近本当に街中の仕事をしやがらないな」
「騎士団のやつらから言わせれば、街に屯ってるゴロツキどもはみんな冒険者崩れだ。冒険者ギルドの方でなんとかしろってことらしい。そういう理屈で、冒険者崩れが冒険者を襲うのに関与したくねぇってのが本音だろう。王都の住民なら対応も違うだろうな」
「はあ? なんだよそれ。職務怠慢だな!」
「俺もそう思うが——冒険者崩れのゴロツキが増えてるのは、冒険者ギルドとしてもちぃと痛い部分でもある。才能がない者を諦めさせて、仕事の斡旋もして、できる限りサポートしてきたつもりだが……」
それでも冒険者崩れのゴロツキは増える一方。
そこまでしていたのにも驚いたが、そこまでしてもらってるのにゴロツキになるやつらもどうかと思う。
結局のところ、ゴロツキになるやつはゴロツキになるやつなのでは。
「ま、明日もタータを連れて行くなら気をつけろよ」
「は、はい」
「父さんたちの方はどうだったんですか? 新しい迷宮が見つかったそうですけど……」
「新しい迷宮……!」
らしい。
ギルマスとサブマスが出張るほどの用事とは、新たな迷宮の出現。
この世界の迷宮は、すべて星緑樹が進化したもの。
星緑樹は伐採が基本。
しかし、ギルドの中庭にあるもののように、伐採されずに残っているものも中にはある。
かなり巨大化した星緑樹は、伐採も難しくなるためだ。
それはなにかがきっかけで、巨大樹の姿をした迷宮となる。
ギルドの中庭にる星緑樹も、いつ迷宮進化してもおかしくない大きさだという。
迷宮に進化すると上へ上へと螺旋状の道ができ、明確な部屋ができる。
扉があり、壁があり、床がある部屋。
一際強い魔獣が一体だけ待ち構え、それを倒すと次の層に進むことができる。
通常ボス部屋。
ボス部屋は迷宮が成長すれば上に向かって、より強いものが出現するようになる。
現在確認されている最大迷宮はこの国にあるタガヤ迷宮。
雲に届くほど巨大なその迷宮は、未だ誰一人最上階のボス部屋に入った者はない。
上へ上へと成長する迷宮は、いずれ天空にいる女神の敵——創星神タパロンのもとへと続いているのではないか、と言われている。
その時こそ、女神と“ヒト族”が創星神タパロンのもとへと討ち入り、倒す好機。
長い長い、戦いの歴史を終わらせる希望。
そう、迷宮とは創星神タパロンへの“道”にすぎないのだ。
その新しい“道”の出現。
「ああ、かなりの規模だった。デカさだけならすでに銀級迷宮並みだな。魔獣の強さも5から7と、強い」
「銀級から白銀級冒険者向きの迷宮だったな」
「あ、あの、新しい迷宮って、どこに出たんですか?」
実は一度も迷宮に入ったことのないエルン。
自分のやるべきことや、やりたいこともまだ朧げではあるが、それに関してもう一つ思っていたことがある。
——迷宮に入ってみたい。
冒険者として登録後、ずっとトリニィの町のギルドに置き去りにされていたエルン。
一度も冒険に出かけたことがない。
戦闘系の職業『見習い』もたくさん習得したが、それ以後レベル上げはしていなかった。
向いていないのは自分でも自覚しているのだが、それでも冒険者として一度も迷宮に入ったことがないのは気になるところ。
21
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜
犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。
これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる