「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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王都の様子

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 それを話すと「なるほど」とみんなに頷かれた。
 この場の皆、冒険者である。
 冒険者でありながら冒険者として冒険に出ていないのは、察して余りあるなにかがあるのだ。

「ならちょうどいい、新しくできた迷宮はトリニィの側にあるんだ」
「え!」
「かなり規模も大きいし、近く魔獣大量発生するんじゃないってカンジの気配がしたんだよな。だから元々冒険者は派遣する予定だったんだよな」
「そ、そうだったんですか!?」
「王都の探索も続けながら、迷宮調査も手伝ってもらおう。ついでにお前さん、戦闘系の職業レベルも上げとこうぜ」
「は、はい! ありがとうございます!」

 ではいつからトリニィに移動するか。
 トリニィまでの移動時間も考えて、王都探索を優先して四日後出発、ということになった。
 その間にトリニィの町付近に出現した迷宮について、今わかっていることを教わる。
 出てくる魔獣の種類や、傾向、対策。
 必要な道具の買い足し、装備の新調。
 装備に関しては、エナトトスに相談して、銀級迷宮に入っても問題なさそうなものを選んでもらった。
 そもそも原石級のエルンが銀級迷宮に入るのはありえない。
 だが、『白金級のパーティー』で『調査』ということなので、大丈夫だろう、と微笑んでもらった。
 むしろ、エルンの出番はないだろう、ぐらい。

「新しい迷宮とか面白そうだなぁー、いいなぁー、うちも行こうかなー」
「まだ一般公開されてませんよ」
「なんだと! ず、ずるいぞ! エルン!」
「そ、そんなこと言われましても」

 王都東区——南区と北区の探索後、最後の探索中、今日も護衛してくれていたティアとケイトに明日からトリニィに戻ることを伝えた。
 新しい迷宮は冒険者にとっても、新たな稼ぎ場。
 興味津々である。

「みゅーん、みゅんみゅん」
「タータも行くのぉ? いいなぁ」
「今回はシシリィさんも一緒に行くんです。『受付案内たる者、現場を直に見ないことには案内できません』っていう……」
「「「プロだ……」」」
「本当に……」

 さすがすぎる。

「それで、エルンはギルド職員としてどの辺りに配属されるとか決まったのぉ?」
「実はまだ……。少なくとも、戦闘職系がまだまだ弱いので、ギルド職員には物足りないと言われてて」
「ギルド職員そんなに戦闘能力必要か?」

 と、首を傾げるケイト。
 言いたいことはわかる。
 エルンも最初はそう思っていた。
 けれどギルド職員たる者、武器の扱いから荒くれ者を制圧する能力が最低限必要なのだ。
 それはシシリィを始めとするギルマス、サブマスの冒険者階級を見ればおわかりいただけるだろう。
 実際デンゴたちが暴れたところも見ている。
 身を守る意味でも、戦闘能力はもっと鍛えねばならない。

「でも、戦闘能力を鍛えたあとはギルド内の図書室で司書をしたらいいんじゃないか、ってシシリィさんに薦められてます。俺もそれがいいかな、って」
「図書室ですか。貴重な書物もありますからね」
「そうなんです。一日中勉強しててもいいし、本を守る仕事でもあるので、復元系の魔法を覚えようかなって、杖を持って行く予定です」
「へぇー」

 近接系よりは、魔法系が得意な気がするのだ。
 職の『見習い』も杖系はポコポコ習得できた。
『魔獣博士』の職業も習得できて、本を読むだけでレベルが上がっていく。
 多分こちらが、エルンには向いている。
 それがわかってきて、エルンは毎日とても楽しい。
 だからケイトやエナやティアが毎日楽しそうな気持ちがわかる。
 このあたたかくて、高揚する気持ちを自分が他の誰かに与えられているというのもすごく嬉しい。

「みゅっ」
「えっ」

 そうして浮かれいたせいだろうか。
 肩に突然小柄な男がぶつかってきて、タータを掴むとそのまま走り去ろうとした。
 突然の出来事に固まるエルンとは反対に、ケイトとティアの反応は凄まじい。
 タータを連れ去った男を一瞬で追い詰め、ティアの足かけで男が地面に倒れ、ケイトの槍が首の真横に突き刺さる。
 背中にティアの体重が乗り、タータが「みゅー!」とエルンのところへ戻って来た。

「え? えっ?」
「ラッキーエアリス狙いの賊ですね。今回は捕らえられましたから、騎士団に引き渡しましょう」
「賞金かかってるといいなぁー」
「まったく、王都の探索をしているだけで賊を捕らえるのだから——騎士団はなにをしているのやら」
「…………」

 前回は人数が多すぎたので、逃してしまい被害届だけ。
 けれど、今回は単身。
 引ったくり感覚でタータを攫おうとしたため、捕らえることができた。
 ケイトとティアにより騎士団にしょっ引かれ、事情を話すと金と引き換えに引き取ってくれる。
 そう、金と引き換えに。

「「なんで!?」」
「なんでこちらがお金を払ったんですか?」

 ばたん、と詰所から追い出され、扉を閉められてからケイトとティアが叫ぶ。
 エナが首を傾げながら二人に聞くと、「手数料たって!」とケイトが怒鳴るように言う。
 手数料?

「盗人を引き渡すのに、こちらが手数料を払うんですか? な、なんで?」
「うちらが冒険者だから、だってぇ~! 納得いかなーい! この前までそんなのなかったし、うちらが冒険者だからってなんで盗人を捕まえたら手数料取られなきゃいけないのぉ~!?」

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