「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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デンゴと才能と

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「意味がわかりませんね……。冒険者ギルドに報告した方がよさそうです。仕組みが変わったのなら、告知があってもいいとも思いますが、そういう貼り出しもなかったですし」
「そうですね、俺もなにも聞いてないです」

 冒険者にまつわることなら、冒険者ギルドになにも通達がないのはおかしい。
 いや、そもそも盗人を捕まえて騎士団に引き渡すなら、手数料が必要というのはどう考えても奇妙だ。
 しかも、という、前提。

「騎士団が冒険者を目の敵にしてるのはなんとなく知ってたけど、こんなのおーぼーだよぉ」
「…………」

 ティアの言葉に、傷ついたような顔をするケイト。
 騎士に憧れ、騎士団を目指していた彼女には、確かに『正義』に翳りの見える今の騎士団は辛く見えるだろう。

「みゅーん」
「タータ、怖かったか?」
「みゅみゅーみゅーん」

 んなわけないだろ、とばかりに殴られる。
 けれどタータはエルンの服の中に潜り込む。
 肩にいるとさっきのように攫われるかもしれない。
 騎士団のことは早々に報告が必要だと思い、エルンたちはギルドに帰ることにした。
 その途中のことだ。
 あまり柄のよくなさそうな集団を見かける。
 ゴロツキか、と一瞬身構えたが、ティアが「あれ、ミットさんたちぃ~! 今日は勝ったぁ~?」と手を振る。
 コロシアムの常連ギャンブラーたちだそうだ。

「おう、シャクティアちゃーん」
「いやー、全然ダメだな。新しく入って来たデンゴって冒険者、トリニィの英雄って話だから毎日賭けてんだけどさっぱり勝てねぇ。おかげで明日から級落ちだとよ」
「え、マジかー。じゃあうちが参加しても当たらないねぇー」

 デンゴ。
 その名前に思わず顔を向けてしまう。
 溢れて聞こえるだけの内容でも、デンゴたちは勝ち進むことができずにコロシアムの中の等級が落ちているらしい。
 バトル等級というそれは、高ければ高いほど出場者への報酬バックが多く、等級が下がれば報酬も当然下がる。
 それでも最低限の衣食住は保証してもらえるが、そこに入り込むと冒険者としては究極の二択を迫られたも同じとなるという。
 そこから抜け出す努力をするか、しないか。
 努力する者は一皮剥けてどんどん等級を上げ、人気者になる確率がある。
 無論、そこで自分の限界を感じでゴロツキになる者や実家に帰って家業を継ぐなど冒険者以外の道を選ぶ者もいた。
 しかし、それらを選ばず、努力しなくても日々適当に弱い魔獣と戦うだけで寝食が保証された生活を心地いいとすると、それを選んだ者はそこから抜け出すことはしなくなる。
 ある意味冒険者としては“死”だ。
 そこに、落ちた。

(デンゴ……)

 自分の中の憧れの姿が、灰色に霞むようだ。
 特に彼になにか言葉をかけられたことはないが、少なくとも王都のギルドで再会した時は襲われかけた。
 周りが止めてくれなければ、殴られていたのだろうか?
 好かれてはいないのだろう。
 忌々しく思われているのは、あれで確信した。
 故郷では一方的に憧れていただけのエルン。
 その憧れが、王都という場所に出たらこんなにも——。

「エルンに手ぇ出したから、うちがコロシアムでボッコボッコにしてやろうと思ってたのになぁー」
「エルン殿と同郷だという冒険者か。先日ギルドの受付でシシリィ殿に喧嘩を売って騒ぎを起こした」
「そうそう」
「は? あのデンゴって冒険者、シシリィちゃんに喧嘩売ったのか?」
「馬鹿かアイツ。シシリィちゃんは王都三本指の実力者だぞ」
「馬鹿だ……」
「馬鹿すぎる……」

 コロシアム常連のおっちゃんたちに「馬鹿だ、馬鹿だ」と馬鹿認定されてしまったデンゴ。
 そしてシシリィの評価が、まさか王都屈指の実力者とは。

「あの、シシリィさんってそんなに強いんです、ね?」
「少なくとも『剣聖見習い』は国内に三人しかいません。その内の一人ですからね」
「で、ですよね」
「コロシアムの“称号”とは違い、現実の“職業”です。もちろんコロシアムで一年に一度行われるで得た“称号”ならば称号スキルや称号効果もありますけど……」
「で、ですよね」

 なるほど、エナに聞いただけですでに想像以上にヤバい。
 あんなに可愛らしく礼儀正しく明るく優しい上、剣士の頂点に近いほど強いとは。

「シシリィさんはあの歳で『剣聖見習い』ですから、おそらく本気で極めようと思えば『剣聖』も夢ではないでしょうね。それなのにギルドの受付嬢をやってるんだから、剣士系の冒険者はみんな首を傾げていました」
「…………」

 確かに。
 普通の、剣を極めたい者からすればその才能は羨み、嫉みにすらなる。
 けれどエルンは、シシリィがなぜその道を進まないのかを知っていた。
 母と同じ癒しの才能がなく、父と同じ剣の道を進んだのだろう。
 けれど、きっと——。

(シシリィさんは……お母さんと同じ、人を、癒せる、救える人がよかったんだろうな)

 優しい人だから、傷つける剣よりも癒す杖の方が、彼女はその方向を進みたかったのだ。
 思い出す、あの喜びの涙。

「俺は、エナさんやケイトさんやティアさんとも話すので、シシリィさんが受付をやってる理由がわかります。才能や適性は、本人の望みと違ったりするから」
「! なるほど、そうですね。……そうでしたね……」

 ギャンブラーのおっさんたちと話す、ティアとケイトの後ろ姿を見ながら思う。
 デンゴにももしかしたら——いや、デンゴだけでなく、さっき引き渡して来た賊や、先日襲って来たゴロツキたちにも、本当は別な才能があったのかもしれない。
 本人たちはそれに気づいてないだけで。

(俺の【限界突破】でなら、もしかしたらなにか手伝うことができたかも)
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