「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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トリニィの迷宮へ

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 様々な不安は残るものの、エルンはその翌日、ギルマスやサブマス、シシリィと共にトリニィの町へと向かう。
 てっきり馬車でえっちらおっちらと向かうのかと思ったら……。

「どうもどうも、冒険者ギルドサブマスターコロシアム担当のアンジェリィだぉ。32歳、職業は『賢者見習い』。世界三賢者の一人にして独身! 現在婚活中のアンジェリィさんだぉ。よろしこ!」
「…………。……よろしくお願いします……」

 圧が、強い。
 三角帽子と黒のロングドレスといういかにもな魔法使いスタイル。
 隣にベリアーヌがいるので対比が凄まじいが、ある意味圧はアンジェリィの方が強い。
 左右をそのような濃ゆい女性に固められた、ギルマスの困り果てた顔。
 片方は尊敬だが、もう片方は完全にギルマスを獲物として捉えている。
 こいつぁ、すでに地獄の気配だぞ。

「え、ええと」
「アンジェリィさんはコロシアムの『戦死不可結界石』を生み出した天才魔法使いです。コロシアムで冒険者たちが安全に魔獣退治や、対戦ができるのはその結界石のおかげですね。もちろん、大怪我をすれば適切な治療は必要ですけど……アンジェリィさんが常駐しているので、基本的にそういう怪我人も即座に治療してもらえます」
「『賢者見習い』って回復魔法も使えるんですね……!」
「はい。攻撃魔法系、補助魔法系、回復魔法系、異常状態魔法系、空間魔法系、結界魔法系などのあらゆる系統魔法を一定以上を習得し、全属性を網羅した者——加えて独自の魔法を開発すると習得可能になるという『賢者見習い』。世界に三人しかいません」

 だから『三賢者』と呼ばれ、世界中から尊敬されている。
『剣聖見習い』に比べて『賢者見習い』の方がレア……というより数が少ないのだ。
 確かに、シシリィの言う条件を聞くととんでもない。
 ちょっとふざけたように見えるが、アンジェリィはそれを習得しているのだ。
 まさしく人々の尊敬を集める『三賢者』と呼ばれるに相応しい。

「エド~、この任務が終わったらデェトしぉ?」
「しない。トリニィへ向かうぞ。アンジェリィ、移動頼む」
「えぇーん、シシリィ~! シシリィからもエドにアンジェリィさんを推し推ししてぉ~!」
「そうですね……父さんが再婚したい、っていうなら、わたしはその意志を尊重したいと思います」
「可もなく不可もない肯定も否定もしていない絶妙な模範回答~~~~!」

 まあ、そうですよね、としか。

「あの、でもギルマスだけでなくサブマス三人全員……いいんですか? その……」
「大丈夫です。というより、新しい迷宮に行くのでこのくらいのパーティーでないと、万が一の時に対処できないかもしれませんから」
「今日はお前っていう足手まといのお荷物の初心者もいることだしな」
「うっ、す、すみません……」
「もう! ベリアーヌさん! エルンさんはいいんです!」
「うっ! す、すまんっ、シシリィ……怒らないでほしいなっ!」

 謎の力関係。
 シシリィに叱られて「そんなに?」ってくらいおろおろしながら落ち込むベリアーヌ。
 それに頭を抱えるギルマス。
 そういえばシシリィの母は、ベリアーヌの命の恩人だった。
 そう思うと「なるほど」と思うが、改めて考えてもなかなかのカオスっぷりだ。

「あ、そうだ。エルンさんには、連絡用にタータをお預けしておきますね」
「あ、ありがとうございます」
「みゅーん」

 光った魔法陣の中から、タータが召喚された。
 最初は小さくやわい肉球で出会い頭にぺちっと殴られたものだが、最近は『そういうもん』とばかりにタータはエルンの肩にすんなり乗っかって来る。
 なんとなくその様子が可愛らしいのだが、目が合うと嫌そうな表情をされたあと、プイッと顔を背けられてしまう。
 なぜだかその仕草も、最近は「可愛いなぁ」と許せてしまうエルン。
 なかなか末期症状に近い。

(可愛いといえば、冒険者の装いのシシリィさんも可愛いな……いつもスカートだけど、ホットパンツなんだ。短剣と杖ってことは、『巫女』としても戦うんだろうな。あ、いや、『巫女』なら回復か……)

 自分のような初心者では、銀級迷宮の魔獣に一撃で殺されそうだが。
 しかし、もし小さな怪我でもしたら、シシリィの『巫女』レベルアップに貢献できるかもしれない。
 これは積極的に怪我をしに行くべきか?
 いやいや、エルンはどちらかというと魔法使い系の後衛。
 見習いの分際で前に出過ぎるなど、パーティーの迷惑になる。
 シシリィの役に立ちたい気持ちはあるけれど、それでは本末転倒。
「え、邪魔ですね」っと逆に嫌われたりしたら……。

「大丈夫ですよ、エルンさん!」
「へっ!?」
「初めて入る迷宮が銀級で、ドキドキ緊張しちゃいますよね! でも、わたしや父さんやベリアーヌさん、アンジェリィさんもいますから安心してください! エルンさんには怪我一つ負わせませんよ! エルンさんは魔法の練習に来たと思って、とにかくスキルレベルを上げることを優先してください! 父さんが指示を出してくれるので、それに従うだけで大丈夫! 落ち着いて対処すれば、なんにも難しくありません!」
「…………はい」

 初迷宮にめちゃくちゃ緊張してる人だと思われていた。
 邪なことを考えていたとは思われてない。
 複雑である。
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