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トリニィの新迷宮
しおりを挟む「わあ……本当に一瞬で着いた……!」
ともあれ、アンジェリィの転移魔法でトリニィの町の側で進化した迷宮へとやって来た。
ギルマスとベリアーヌはアンジェリィに転送してもらい、帰りの転移魔法が付与された『転移札』で帰還していたそうだ。
世の中便利なものがある。
田舎者で存在すら最近知ったエルン。
「では、隊列は儂とベリアーヌが前衛、エルンとシシリィが中衛、アンジェリィは後衛という形でいく。エルンは頭上と地面に注意して進め。露払いは儂たちで行うから問題ない。もし迷ってもタータを頼れ。以上」
「は、はい」
主にエルンにのみ、注意点が出された感じである。
他の四人が白銀級なので無理もないが、少し恥ずかしい。
「で、エルンくんは今なんの職業に設定してるのぉ?」
「えっとメインを『魔法使い見習い』にして、サブを『魔獣使い見習い』にしています。いつもタータに付き合ってもらってるから、自分の使い魔獣を得た方がいいかなって思って」
なにより、エルンは『魔獣博士』をメインにしていこと思っている。
今回設定している『魔法使い見習い』と『魔獣使い見習い』から、『見習い』が取れたら『剣士見習い』や『槍使い見習い』なども『見習い』が取れるまでレベルを上げようと思っていた。
ギルドで働く以上、最低限の戦闘スキルは必須。
シシリィにデンゴが襲いかかったのを見て、心底必要だと言われた意味を理解した。
やはり人間、言われても実感が湧かないとダメである。
周りの人間はもとより、自分自身の身を守れないとなると邪魔にすらなりかねない。
(あと、なにより、シシリィさんにもっと頼られる男になりたい……ような……)
ちらりと隣を見る。
自分の生き方を変えてくれた女の子。
強いのもしっかりしているのも知っている。
でも、優しいのも知っている。
もっと彼女に頼られるような、強い男になりたい。
ギルマスのように頼り甲斐のある男になって、シシリィを『回復役』として、迷宮を巡れるような……。
(?)
ギルマスの声で「やりたいことはあるか?」と聴こえた。
幻聴だ。
けれど、それに対してエルンは口を開く。
そんなイメージが、脳内に流れた。
(……え、え?)
自分は立派な『魔獣博士』になり、杖を持って魔法を操りながら、隣にシシリィが回復役兼剣聖として戦っている。
信頼し合うように。
それがエルンの——やりたいこと。
(完全に妄想ってか願望ーーーー!)
脳内のイメージを振り払い、ブンブン首を横に振り、顔を前へ向ける。
隣のシシリィには「大丈夫ですか?」と心配されたが、「大丈夫です!」と答えるしかない。
全然大丈夫じゃないけど。
「クククククク……若いっていいですなぁお?」
「アンジェリィババくさいな」
「キエエエエエェェェ! ベリアーヌ、お前! 言ってはならないことを言ったおおぉぉ!」
「入るぞ」
やかましい二人に呆れた顔をしながら、先頭を歩き始めるギルマス。
いよいよ初迷宮入りである。
「……わあ……」
巨大な巨大な樹。
あまりにも巨大で、もはや岩壁のよう。
見上げれば垂直に空へ向かって伸びており、時折枝らしきものが突き出ている。
入り口は“ヒト”の手により破壊された大穴。
まずは一層目、『ホーム』と呼ばれる場所。
アンジェリィがゴリゴリと地面に魔石を埋め込み、転移陣を描く。
今回の目的は迷宮の調査と、迷宮からの帰還方法である転移陣の設置。
だからアンジェリィが同行していたのだ。
「可能ならボス部屋の前にも転移陣がほしい。無茶するアホがそれでかなり減るからな」
「オッケー、とりあえず行けるところまで行ってみぉ~」
「迷宮って、どこでもホームに転移陣があるんですか?」
「はい。基本的に迷宮は転移陣を中心に魔獣が迷宮の外へ出ないよう、結界を張りますから」
「え」
そもそも迷宮とは星緑樹が進化したもの。
魔獣を迷宮内で無限に生み出す。
しかも星緑樹が産む魔獣と違って、魔獣の強さは迷宮の強さに比例する。
そんなものが迂闊に外へと出ないよう、転移陣に結界の役割も持たせてホームから上へ効果を張り巡らせるらしい。
ホームの転移陣から、次の場所——たとえばボス部屋の前などに転移陣を張ることで、筒状の巨大な結界を張るのだ。
冒険者たちは転移陣で迷宮内を自由に上り下りできるし、魔獣は結界の外へ出られない。
実に効率的だ。
「ただ、進化したての迷宮は星緑樹の頃に溜め込んだ魔獣を多く内包しているので、わたしたちのように討伐と調査を得意とした者たちによる先遣隊が不可欠なんです。ボス部屋の前に転移陣を敷くのは目標ですが、わたしたちも無茶はできません。内包された魔獣の数が多ければ、魔獣大量発生になりかねませんから」
「魔獣大量発生……」
だから少しずつ調査と討伐を繰り返し、内包されている魔獣を減らし、冒険者が入れるくらいにしてから開放する。
調査や最低限の討伐が終わっても、誕生初期の迷宮内にいる魔獣の数は他の場所よりも多い。
ただ、新しい迷宮は、目新しいモノで冒険者たちも興味を引きやすく、手つかずの宝物などもあるため冒険者が押し寄せやすい。
ギルドも依頼を多く出して、客引きならぬ冒険者引きをするので魔獣の数はさして問題ではないそうだ。
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