「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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町を守るために

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 けれどクイーンはボス部屋に入る者を倒せば、強制転移させられる。
 きっと永遠に外へ出ることは叶わない。
 そう思っていたら生まれたての迷宮のボス部屋に配置された。
 しかもベヒーモスが魔獣大量発生を画策している。
 それに便乗すれば、外へ出られるかもしれない。
 ウキウキ期待していたところにエルンたちがやってきて、それはそれはがっかりした。
 エルンたちを倒せば、他のボス部屋に強制転移させられるから。
 外へ出るチャンスが、これで失われた——。
 そう思っていたら、エルンが『魔獣使い』だった。
 しかも、普通の『魔獣使い』ではない。
 それを感じて、賭けてみたのだという。

(通りでものすごく外へ出た時はしゃいでたわけだ)

 そしてとても口が軽くなっている。
 テンションがそれだけ上がっていて、魔獣や創星神タパロンにとって不利になることでもベラベラ話してくれた。
 まあ、創星神タパロンがクイーンラッキーエアリスに与えた『ボス部屋へのランダム強制転移』という固有ギフトスキルは、控えめに言ってクソだが。

「リエマユさんのお話は非常に有用ですね。王都に帰ったらもっと色々お伺いしたいです」
「ええよ!」

 いいんだ……。
 冒険者たちが若干驚きとドン引きをしている。
 シシリィにはタータがいるからなのか、リエマユもおおらかに対応するようだ。
 ただ、もちろんリエマユにもわからないことの方が多い。
 なにしろ強制引きこもり状態だったので。
 それでも、リエマユのもたらす情報には信憑性もある。
 このまま多くの情報を引き出せれば、戦いは有利になるかもしれない。
 長く、そしてもはやそれが当たり前となっているヒトと魔獣の戦いは、しかしある種の“終わり”が垣間見えた。
 魔獣がいなくなったら、人々の暮らしは大きく様相を変えることだろう。
 もしかしたら“職業”やギルド、冒険者や迷宮、今ある当たり前のものがなにもかもなくなるのではなかろうか。
 想像したら、胸が張り裂けそうな不安を覚える。
 自分の知る日常がなにもかも突然消えるかもしれない。
 その可能性だけでここまで不安になるなんて。

(もしかしたら俺は、とんでもないことをした、のかも?)

 世界の在り方を覆すきっかけに、このクイーンラッキーエアリス——リエマユはなってしまうのでは?
 そう思えるほどに、新事実がポロポロ出てくる。
 これまでヒト類と対話できる魔獣など存在しなかった。
 だからだろうけれど。

「よし、ベヒーモスがいることを前提として作戦を立てるな。迷宮に入って魔獣の系統を見た限り、獣系が多数だったな。町の周りに松明を用意するな。それから、食糧庫の護衛は厚めにするな。シシリィ、冒険者リストを頼むな」
「はい。こちらです」
「前線には級の高い者を配置するな。ただし、シシリィは本部と前線の橋渡しを頼むな。エルンは町の住民とシシリィのを頼むな。魔獣大量発生がすぐ起こるわけではないし、王都から応援が来れば発生前に討伐部隊が迷宮に入るだろうけど、それまでは発生の可能性に考慮して厳重な防衛を行わねばならないからな。多分討伐部隊が編成されるのには早くても四日か五日かかるだろうな。それまでの辛抱だな」
「はい。そうですね。問題はその間の食糧の備蓄でしょうか。近くの町から買い込むことはできるでしょうか? エルンさん」
「え、ええと……」

 思わずトリニィのギルドの受付嬢を見るが、目を逸らされた。
 知らん、ってことらしい。
 トリニィの町の冒険者ギルドのギルマスやサブマスは、町長も兼任しているからどうにもこの手の話題には入りたくない様子。
 それでも町の安否がかかっている。
 食糧問題などは相談しても構わないだろう。

「町長……」
「あ、あー、いや、それは、うん、ほら、あのー、宿の、そう、宿屋の、ダッドとリネに聞くといいよ、うん」
「大将と女将さんに?」
「か、彼らは食堂ギルドに所属してるからね。この町の食堂ギルド代表なんだよ、うん。だから、彼らの方が町の食糧事情には詳しいと思うんだよね、うん」

 めちゃくちゃ目を逸らしながらしどろもどろに答えるあたり、本当になにも知らないんだろうな、というのが透けて見える。
 ならば仕方ないだろう。

「シシリィさん、俺、トリニィの宿に行って聞いてきます」
「そうですか、わかりました。ではわたしも同行しましょう。食糧問題は数日とはいえ非常に重要な問題です。食糧庫にはわたしが直接警護を行うようにしますので、町の方にもご安心いただけるよう頑張りますね!」
「え! そ、そこまで?」
「食糧庫は肝心要ですよ!」

 とのことらしい。
 宿は町の中心部にあり、今トリニィに集まっている冒険者もほとんどがそこに泊まっている。
 宿屋としたら掻き入れ時だろう。

「ただいま~! 大将、女将さん、ナット!」
「エルン!?」
「帰ってきたんかぁ! お前!」
「おぉ、おかえりー!」

 ギルドに呼び出され、泊まっていた冒険者たちが留守の間に店舗の大掃除を行っていた三人。
 エルンの育ての親と、幼馴染のナット。
 三人ともいつも通りにエルンを迎えてくれた。
 嬉しくて顔が緩むが、それどころではない。

「あ、あの、聞きたいことがあって——あ、でもその前に……シシリィさん、あちらがこの宿の大将と、宿の食堂の女将さん。それから跡取りのナットです」
「はじめまして。わたしはシシリィ・エールと申します」
「え、は、初めまして……?」

 三人のキョトン顔。
 わかる。
 シシリィはとても可愛い。
 しかも、苗字持ち——貴族だ。

 ***

 主人公の幼馴染の名前を出したような、出した後「絶対覚えてないしメモってないから消しておこう」って消したような……。忘れた。
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