「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

文字の大きさ
34 / 51

町を守るために 3

しおりを挟む
 
「ああ、そうだな。隣の町はここから一日かかる。夜の移動は危険だが、俺が直接出向いて食糧を買い集めてくる」
「親父……! なら、俺も一緒に行くぜ!」
「お待ちください。他にも近くの村の住民をトリニィの町に避難させる時間が必要です。……魔獣大量発生が起こると、必ず村が真っ先に襲われますから……。その時に村から食糧を持ってきてもらいましょう。近くの村がどれくらいあるのか、規模やわかれば人数なども……エルンさん、教えていただいていいですか?」
「は、はい! もちろん!」

 宿の中に戻り、地図を取り出して周辺の村についても説明する。
 村……そうだ、村の存在をすっかり失念していた。
 シシリィは「わたしの母も、取り残された村を助けに行った時に……」と悲しげに微笑んだ。
 ギルマスとベリアーヌ、そしてシシリィの母は、魔獣大量発生の最中に巻き込まれ、防衛が遅れた村を助けに行ったのだという。
 けれど、魔獣大量発生の勢いは凄まじく村は壊滅。
 今はもう、地図に村の名前は残っていないそうだ。
 ギルマスたちが命をかけて救おうとした村の末路。
 それを聞いてしまうと、確かに備えられるのなら備えるべきだ。
 今から備えて村の人たちを非難させられれば、たとえ応援が間に合わなくても村の人たちの命は救うことができる。

「夜に訪れると逆に騒ぎになりかねませんから、明日の朝に手分けして村を回りましょう。トリニィの町の町長さんに手紙を書いてもらえれば、信用してもらえると思いますし」
「なるほど」
「色々やることあるんだなぁ」

 と、隣を歩くナットがシシリィの言葉に感心した声を出す。
 シシリィは「それはそうですが、なんの備えもない状態で魔獣大量発生が起こるとそれすらできませんからね」と言う。
 備えられなければその分、多くの死傷者が出る。
 備えというのは、その死傷者を減らすためのもの。
 どちらも大変なことだが、死傷者を出さない方がマシに決まっている。
 むしろ、こんな準備をできる方が稀だ。
 宿の食堂に戻ってから改めて今後の方針をまとめて、ギルドに戻る。
 ベリアーヌや町長、ギルドにいた職員や冒険者にも情報を共有してから、その夜は町の周りに大きな柵を作る程度のことを行なった。
 一応外壁はあるものの、準備ができるのならそのぐらいの気休めはないよりマシだろう。
 陽が登り始めたと同時に、町長の手紙を預かった数名の冒険者が近隣の村へトリニィへ避難してくるよう誘導に向かった。
 エルンは朝食作りを手伝いながら、ギルドの方にも食事を運ぶ。
 よくやっていたことだ。

「リエマユに聞きたいのだが、魔獣大量発生はいつ頃起こりそうなんだ?」
「リエマユ、わかる?」

 食事を食べながらベリアーヌがリエマユに聞くので、召喚して聞いてみる。
 エルンを知っている冒険者はギョッとして押し黙り、知らない冒険者は「おお!」と驚愕した。
 なにしろクイーンラッキーエアリスを“召喚”したのだ。
 エルンを馬鹿にしていたトリニィの冒険者たちにとって、それは度し難いのだろう。

「“かず”があつまったら、やるっていってた」
「数か。どれほど集まっているかまでは——」
「わからん」
「だよな」
「でも“じかん”はないとおもうで。ベヒーモスは“き”がながいヤツじゃないからな」
「そうか、そうだな。……よし、シシリィ、近隣のギルドから冒険者を集めてくれよな」
「わかりました。……騎士団が渋っているんですね?」
「ああ」
「!」

 腕を組んで、その上に大きな乳房を載せるベリアーヌ。
 そのたゆゆんと揺れたお乳に思わず目を奪われたが、話の内容はそれどころではない。

「騎士団が……来て、くれないんですか?」
「冒険者ギルドとの関係が微妙なのは知ってるな?」
「は、はい」

 賊を引き渡そうとしたら、手数料を取られるほどなのだ。
 確かに王都の治安を悪くしているのは、堕ちた冒険者かもしれない。
 それにしても嫌われすぎである。

「エドから連絡が来たんだが、朝イチで報告に行ったら真偽の調査を行うからと断られたらしいんだな」
「真偽の調査——ですか。確かにそれはそれで必要かもしれませんが……時は一刻を争うもの。騎士団の対応は、間違いではありませんが……」
「エドは冒険者ギルドの長! それが直々に報告に行ったのに、騎士団長は多忙を理由に会いもしなかったらしいんだな!」

 揺れた。
 いや、そこではなく。
 テーブルを殴ったベリアーヌの怒り具合に、シシリィも「まあまあ」と両手を揺らして宥める。
 しかしながらつまり、騎士団は冒険者ギルドが嫌いすぎて応援を拒んでいるということだ。
 人の命が、村や町の存命がかかっているというのに、いがみ合いをここまで持ち込むとは。
 大人気ないというか、騎士らしからぬというか。
 ケイトが昨今の騎士団にがっかりしている気持ちも、わかってきてしまう。

「しかも商人ギルドからも『ラッキーエアリスを渡すならば、物資を売らない』って連絡きたらしいな!」
「タータを、ですか!?」
「多分シシリィのタータだと思ってないと思うな。エルンが最近町を見て回ってたからだろうな」


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...