「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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諦めない、諦めたくない 2

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「くっ!」
「エナさん!」
「アンジェリィさん、まだですか!」
「広範囲は無理! って、言ってらんないぉ。一分ちょうだい!」
「一分も厳しいんですが!」

 横でエナトトスとアンジェリィの、そんな会話を聞かされては——。

「俺が、時間を稼ぎます!」
「えっ」
「魔力は、あんまりないですが……そんなこと、言ってられないから!」

 杖を取り出す。
 そうだ、今使わずにいつ使う?

「特殊スキル『魔法使い見習いの試練』発動!」
「「魔法使い見習いの試練?」」
「魔法使い見習いスキル[五属性融合弾]!」

 魔法陣が広がる。
 魔力が体のすべてから吸い上げられるように、どんどん消えていくのがわかった。
 アンジェリィがそれを見抜いて「ちょちょちょちょ、死ぬ死ぬ死ぬよエルンくん!?」と叫ぶがこれはそういう“試練”だ。
 すべての、全力の魔法で——[五属性融合弾]を放つ。
 みんなが命を賭している中、自分の町を自分で守れないのは悔しい。

「全身全霊の全力の[五属性融合弾]で! 俺は——!」

 町を守る。
 町のために戦うみんなを守る。
 守りたい。
 五つの属性がぐりぐりと回転して巨大な光の大玉になる。
 それを見たギガティックホークの群れが空中で留まった。
 そこで「あ」と思い至り、維持したままサブ職業を『弓士見習い』に変更。
 ギルマスやシシリィたちの職業上限を上げる傍ら、パーティボーナスで入ってくる経験値で上げていた自分の職業レベルや覚えたスキル。
 その中に、使えるものがあったのだ。
 まさしく今、ここで使うべきだろう、
『弓士見習い』の[標的固定]レベル2で空を飛ぶギガティックホークをすべて標的に固定する。

「え? エルンくん?」
「[五属性融合槍弾]!」
「え?」

 困惑のアンジェリィ。
 それをよそに、エルンは[五属性融合弾]を解き放った。
 一度一つに混じり合った力は、ギガティックホークの数に分たれ、勢いをそのままに槍のような姿になってそれらを貫く。

「なぁーーー!?」
「こ、これは!?」

『魔法使い見習い』特殊スキル[魔法使い見習い卒業の試練]+[五属性融合弾]+『弓士見習い』特殊スキル[弓士見習い卒業の試練]スキル[標的固定]レベル2。
 アンジェリィとエナトトスが驚きの声をあげる。
 メインとサブの職業の特徴を、

「やった!」
「!」

 冒険者の一人が空を指さしながら叫ぶ。
 なんと、幸いとも言うべきか、エルンの放った魔法は空を覆っていたギガディックホークを一撃ですべて屠り去った。
 外壁の上にいた弓士や魔法使いが両手を挙げて歓喜の声をあげる。
 それを見て、地上でビッグボアやモーヴキングと戦っていた者たちも「おっしゃぁぁぁっ!」と奮起した。
 声が上がる。
 力強い、猛々しい雄叫び。
 明らかに士気が向上した。
 ……が。

「あ」
「エ、エルンさん!」

 エナトトスが後ろに倒れたエルンを受け止める。
 魔力を使い果たした。

「うっ、きぼちわる……」
「そ、そりゃあ魔力を絞り出すほど使い果たせばそうなるよぉ。むしろ生命力まで消費して魔力変換してたレベルだお。死ななくてよかったぉ~」
「本当です! 無茶しすぎですよ!」
「ご、ごめんなさい」

 それほどの魔法だったのか。
 だが、それが[魔法使い見習い卒業の試練]の効果だったので致し方ない。
 そしてこれで、エルンはこれ以上『魔法使い見習い』のレベル上限を上げることはできなくなった。
 残念だ。
 もっと色々、調べてみたかったのだが。

「! おい、見ろ! 魔獣の波の区切りが見えたぞ!」
「よし、何波目かはわからんが一先ず区切りだ! 全員飯食って寝ろ! トイレ行くやつは交代だ! ギルマス! サブマス二人! あんたたちは先に休め! しばらくは俺たちでなんとかできる!」
「すまん! あとを頼む!」

 モーヴキングとビッグボアの群れを倒した前線が戻ってきて、町の中に入っていく。
 魔獣の群れは視認できるほどの数に減っていた。
 それらは主に、倒された魔獣を喰いに来たレッドハウンドという犬型魔獣。
 屍肉を好むため、魔獣大量発生の一区切りのタイミングを狙って現れる。
 あれらがうろついている間は比較的安全、とされており、王都の冒険者たちはすぐさま次の波に向けて戦いっぱなしの前線を休ませに入った。

「すみません、エルンさん。わたしたち、お宿の方をお借りして休ませていただきます」
「エルンさんはお任せください。今動かすのは危険ですから、私が責任を持って介抱いたします!」
「ずるーい、エナトトス~! うちもここで寝るぅ」
「シャクティアさんは最前線を駆け回ってたんですから、宿でしっかり休まれた方がいいのでは?」
「あたいもやすむ」
「あ」

 エルンの影の中にスポッと入っていったのはリエマユだ。
 そういえばリエマユもベリアーヌ同様ずっと戦いっぱなしだった。
 本当に世話になってしまったな、と自分の影を撫でる。

(と、ところで俺、もしかしなくてもエナさんの膝枕で、寝かされてる……?)

 頭の後ろが柔らかい。
 見上げるとエナトトスがにっこり微笑んでエルンの額を撫でる。
 絶景といえば絶景。
 しかし、その隣にシシリィがいる。

(ど、どうしよう、どうしたら、どう、どど、どうっ?)

 めちゃくちゃ混乱した。
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