「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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諦めない、諦めたくない 3

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「タータを連絡用に置いていき……あ、タータは食糧庫番をしているんですっけ」
「は、はい」
「ではメナ」
「にゃー」

 シシリィの影から出てきたのは黒猫型の魔獣。
 シャドーキャットだ。
 影に入り、隠れ、闇討ちや諜報を得意とする。
 これがシシリィのすべての召喚獣。

「メナといいます。この子を置いていくので、なにかあったらすぐに呼んでくださいね」
「あ、ありがとうございます……」
「こちらこそ。最後の魔法は本当に助かりましたし……その、かっこよかったですよ」
「っ!」

 にこっ、と照れながら微笑まれて、顔が爆発したかと錯覚した。
 その様子にアンジェリィが「な、なんだと、生命力が活性化して魔力が急速回復していく、だとぉ……」と引いてる。

「では、よろしくお願いしますね!」
「はい!」
「きゃっ」

 立ち上がって宿へと向かうシシリィに、エルンは上半身を起こして謎の土下座をしながら返事をした。
 あまりの勢いに、エナトトスが驚いてしまうほど。

「あれ」

 先程まで岩のように動かなかった体が起き上がった。
 驚いているとアンジェリィに「恋の力だぉ」と悪戯っぽく教えられる。
 また顔が熱くなった。
 恋の力などと……。

「うーん、シシリィさんカワイーし強いしなー。でもなー!」
「あらあら、シャクティアさんはまだ諦めるつもりがないのかしら?」
「お? そういうエナトトスはどーなのぉ?」
「私はカワイイものが見れたからもういいかな」
「なるほどぉー」
「?」

 エナトトスとシャクティアの会話に首を傾げつつ、空を見上げると僅かに陽が傾いていた。
 丸一日、戦い続けた——ということ。

「魔獣大量発生は、まだ終わりじゃないんですよね」
「……ええ」
「魔獣大量発生は指令を行っているボスを倒すか、マジで全部の魔獣を殲滅するしか終わらせる方法はないよー」
「今回の場合はベヒーモス、だぉ」
「っ」

 魔獣大量発生を手早く終わらせるには、発生源——ボスを倒すのがもっとも確実。
 だが、今回のボスはベヒーモス。
 危険度赤、難易度10の『十壁』の一角。
 いくら金級とはいえやはり冒険者ギルドだけでは困難と言わざるを得ない。

「ベヒーモスは土属性の魔獣ですね。防御力と魔法防御力が高い上、異常状態耐性もあり突貫力とその巨体による質量力で魔獣大量発生のボスだった場合の危険性はドラゴンやヨルムンガンドよりも上——」
「ひぇ、そ、そうなんだあ~。じゃあマジどうすんのぉ? 王都の騎士団がダメなら、国中の冒険者をかき集めるとかぁ?」
「いくらなんでもそれは非現実的ですよ、シャクティアさん。発生から一日でこの規模となると、もはや国難です。町民と近隣の村人を王都に避難させて、国王陛下に騎士団を直接動かしていただくしかないのでは?」
「そう、ですね」

 騎士団がどういうつもりなのかはわからないが、エナトトスの言う通り、もはやそれしかないかもしれない。
 しかし国王の命令で動く騎士団は、果たして使い物になるのだろうか?
 騎士団長——ケイトの父親が、落ちぶれた冒険者がならず者となり王都を荒らすことを許せないのは仕方ない。
 王都でエルンたちに絡んできた者たちは、怒られて当たり前のことをしていた。
 しかも奴らのような者たちが商人ギルドへタータのことを漏らしたせいで、物資も足りないときている。
 このように、トリニィの町とその近隣の村人たちが、皺寄せを受けているのだ。
 規模的に見ても、騎士団が放置を続ければ本当に被害が拡大する。
 そうなってからでは、遅い。

「奇跡的に死者は出ていないが、町の冒険者たちの士気の低さを思うと町に侵入されたら間違いなく死人が出るな」
「およよよよ、マジぃ?」
「そういえば彼ら、なんであんなに士気が低いんですか? 町を守ろうとか、考えないんですかね?」

 話に入ってきたのは町の外の冒険者。
 彼はトリニィの側に迷宮が誕生した時、真っ先に町に入った一人だ。
 彼が見てきたのはトリニィの町の冒険者たちが、デンゴを自慢している姿。
 トリニィの冒険者たちにとってはデンゴは英雄。
 この魔獣大量発生も、デンゴがいれば乗り越えられると本気で信じている。

(……俺もそうだっなぁ)

 シシリィやギルマスはチョコ菓子でも斬るように倒していたモーヴキング。
 だが、この田舎町ではとんでもない大物であった。
 それを倒したデンゴにみんな憧れたし、彼は町の英雄として信頼と称賛を与えられ続ける。
 でも王都に来てからはそうではない。
 井の中の蛙大海を知らず。
 デンゴは、王都という場所では“その他大勢”だった。
 田舎町の期待を一身に受けてきたデンゴの気持ちを思うと、彼が町を疎むのは致し方ないのかもしれない。
 一方的にデンゴにそんな思いを寄せていて、しかしそれに応えられない自分。
 信頼と称賛で高まった自尊心は、王都でぐちゃぐちゃにされただろう。
 やり場のない気持ちでイライラして、それで騎士団に「あの町は大丈夫」などと言ったのかもしれない。
 いや、むしろ……勝手に期待を寄せる町を、デンゴは嫌がっていたから王都に出てきた?

(どちらにしても、デンゴの嘘は酷い。許せない……)
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