「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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諦めない、諦めたくない 4

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 酷い裏切りだ。
 けれどデンゴをそこまで天狗にした要因が、エルンにもある。
 盲目的に彼を英雄視してきた。
 今更目が覚めたなどと言ったら、デンゴが怒っても仕方ないだろう。
 だが今は町を見捨てたデンゴのことを考えている時間が惜しい。

(最強『十壁』の一体ベヒーモス。未だ姿を現さないということは、手駒になる魔獣がまだ大量に控えているということだ。規模的に考えると騎士団の協力が、彼らの“検証”が終わるのは明日以降。いつどこでどんな風に検証してるのかは知らないけど、一国の騎士団がこの状況でいつまでもだんまりしているわけにはいかないと思う。それこそ騎士団の存在価値に関わる。この状況をわざと見過ごして冒険者ギルドに丸投げしたとなれば、王侯貴族から断罪されかねない……とはいえ明後日まで冒険者ギルドで押さえ込むのは……)

 不可能か可能か、と言われればやってできないことはあるまい。
 だが、明日はより強く大量の魔獣が押し寄せる。
 魔獣大量発生の特徴は、最初は弱い魔獣、次第に強く、大きくなり——最後に群れを指揮するボスが現れるのだ。
 ボスを倒せば終わりだが、その間に多くの犠牲が出る。
 今回は量も質も一級品だ。
 まさしく災害級。
 騎士団の助けがなければ無理だ。
 町は、呑まれる。

「…………」

 そして逃げるなら陽が落ちる前が好ましい。
 つまり、今だ。
 だいぶ薄暗くなったが、アンジェリィの魔力も回復してくる頃だろう。
 このタイミングを逃せば、本当に逃げられなくなる。
 明日、戦い抜ける自信は多分、誰にもない。
 今日誰も死ななかったから、明日も誰も死なない——なんて保証は一切ないのだから。

「みんなの安全を考えたら、やっぱりみんな町から逃げるべきですよね」
「そぉねぇ、それが一番安全だぉ~。規模は最大級の災害級。そんな状況で居座ってるのは自殺志願だぉ~。とはいえ、今日一日で応援の冒険者も疲弊しちゃったからな~。避難民を護衛する人員も割けないぉ」
「アンジェリィさんの転移魔法で、町の人を王都に転移させられないんですか?」
「やってできないことはないけど、いくら小さな町でも数千人規模を一気には無理だぉ~。せいぜい数百人単位だぉ~」
「っ!」
「エルン……」

 俯くエルン。
 いつもの元気の良さを潜めた、シャクティアの慰めるような声。
 アンジェリィの負担も、もっともだ。
 それに、アンジェリィの魔力をそれに割り裂いている間に、魔獣たちの襲撃が再開されるかもしれない。

「……俺のスキル、結局なんの役にも立たない……!」
「そ、そんなことありません!」
「そうだよぉ! エルンのおかげでうちら、前に進めたんだよぉ~!? そんなこと言わないでよぉ!」
「でも……!」
「スキル……エルンくんの……? ああ~! あの【限界突破】っていう——そういえばアンジェリィさんも、今日一日サブ職を『魔法使い見習い』にしてたぉ~。何度もレベル上限上げてくれたけど、なにか変わるのぉ?」

 と、アンジェリィがぽちぽち空中を指で打つ。
 ステータスを確認中なのだろう。

(……あれ? そういえば、アンジェリィさんの『魔法使い見習い』も結構上げたけど、もしかして——)

 顔を上げ、咄嗟に「アンジェリィさん、[魔法使い見習い卒業の試練]ってスキル出てますか!?」と大声を出してしまう。
 それに驚きつつ、アンジェリィは下へと項目をスクロールしていく。
 そして、「あるぉ」と一言。
 光明が見えた!

「ティアさん、エナさん! すぐに町の真ん中に町の人を集めます! 手伝ってください! アンジェリィさん、その特殊スキルを使ったあとに[集団転移]の魔法を使いましょう!」
「え? え? ま、待って待って? せめて確認させてほしいぉ」
「はい! 町の人を集めてくるのでその間に確認しておいてください!」
「よくわかんないけどわかった~! うち、東側の住民を連れてくるね!」
「では私は西側の人を集めてきます」
「俺は冒険者ギルドに寄って、闇キノコ生産してる人たちにも手伝ってもらって南と北の人たちを連れてきます! 中央の噴水広場に集めてください!」
「「了解!」」

 そこからは素早かった。
 町の人を中央広場に集めてる。
 魔獣大量発生が終わるまで、闇キノコスープを作り続けると豪語する女将さんとナットも無理矢理連れていく。
 トリニィの冒険者たちは困惑しながらも、住民を集めるのを手伝った。
 その中の何人かは「昔馬鹿にしてごめんな」と肩を落として謝ってくれる。
 戦ってすらいないものがほとんどなのに、憔悴しきっており、冒険者をやめようと思う、なんて話までしてきた。
 正直、今そういう話は聞きたくない。
 それどころではないのだ。
 町の生き死にがかかっている。

「もう、いいので。……王都で町の人たちを、守ってください」
「エルン……」

 そんなトリニィの冒険者たちの肩や背中を軽く叩いて宥めて、ついに町の人たちをほとんど広場に集めることができた。
 その数はおよそ八千人。

(田舎の小さな町だと思ってたけど、こうしてみるとやっぱり村よりよっぽど大きいよな……)

 噴水の周りに集まった人々は皆不安げだ。
 今の今まで、家の中に隠れていろと言われていたのだから無理はない。
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