「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

文字の大きさ
50 / 51

VSベヒーモス 決着

しおりを挟む
 
 なるほど、それもその通りだ。
 では、とリエマユとタータに地図を見せ、闇キノコ以外の四つの素材を集めてきてもらうことにした。
 ケイトに状況を説明し、立ち上がれるまでになったシシリィとアンジェリィのところへ行ってナットだけを王都から連れてきてもらう。
 連れられてきた魔獣が一掃される頃、素材を集めてきたリエマユたちが戻ってきて、ナットも事情を把握し、トリニィの町の宿屋でエルンの覚えているレシピを作り上げてくれた。
 ギルマスたちにシシリィとケイトが話を通し、トリニィの町の前でそわそわ待つベヒーモスへの攻撃を待ってもらい、出来上がった『闇キノコ出汁の煮込みルナの実ハンバーグ』。

『持ってきたぞ』

 [魔声]で話しかけて、手前に鍋を置く。
 めちゃくちゃ大人しくお座りして待っているとは、正直思わなかった。
 なので、エルンは思わずシシリィとギルマスの方を向く。

 え、これ、ずっとこのままいい子で待ってたんですか?

 の、意味で。
 するとシシリィとギルマスとベリアーヌとアンジェリィが「うん」と強く頷いた。

(根が真面目でいい子なんだな……ベヒーモス)

 ちょっとこの強面がとても可愛い食いしん坊に見えてきた。
 涎をだらだら垂れ流しながらもちゃんと待っているのが、本当に、なんとも。

『はっ! い、いや、まずは毒見だ! クイーンラッキーエアリスに毒見してもらおう!』
『なるほど、思っていたより慎重で冷静だな。リエマユ、一口目は食べていいってさ』
『ホントー!? ベヒーモスのくせになかなか太っ腹じゃなーい! いただきまーす!』

 スプーンで鍋の中のスープを掬い、リエマユにあーん、して食べさせる。
 周りは[魔声]が聞こえないので「なんで?」と言わんばかりだが、エルンと同じく『魔獣使い』の職業を持っているシシリィが[魔声]を聞き取れるので通訳してくれていた。
 多分、これで周りは大丈夫。
 もぐもぐ食べたリエマユが、飲み込んだあとほぉ……とうっとり宙を眺める。

『信じられない……こんな美味しいものが、この世界にあったなんて……』
『美味しかった? よかったね』
『ねぇ、ねぇ、主人~、これ、もっと食べたいわアタイ。本当にベヒーモスなんかに全部あげちゃうの?』
『今度から俺も料理を覚えて、いつでも作れるように頑張るよ。それに、まだ作ったことないレシピもあるし』
『これと同じような美味しいものが他にもあるの!?』
『あるんだよ。俺の知ってる本には百種類載ってたよ』
『はわわわわわわ!』

 嬉しくて後ろ足でぴょんぴょんしてる。
 それに、リエマユにはもっと色々なところを見せてあげたい。

(ギルド職員として王都の地理は覚えておかなきゃいけないけれど、シシリィさんみたいに外部のギルドとの連絡係になれればリエマユをもっともっと色々なところに連れていける。……まずは王都の地理からだけど……料理も覚えるって言っちゃったし……うん、頑張ろう!!)

 だが、それを成す前に成さねばならぬのが目の前の魔獣。
 差し出した鍋を見て生唾を飲み込み、底の深いスープ皿に盛り、手前に置いて距離を取る。
 ベヒーモスは皿を器用に爪先で摘み、口に放り込む。

(え、皿ごといった?)

 皿ごといった。

『……』

 からの沈黙。
 空を見上げ、多分味わっている。

『…………我の負けだ』
『早いな!?』
『好きにするが良い!』
『え、えーと、それじゃあ……テイムしていいかな?』
『好きにしろと言ったのだ! やるなら早くやれ! 残りの鍋の中身を早く食わせろ! 我は腹一杯食べたいのだ!』
『えーーー……』

 だが、それならとサブ職にしていた『魔獣見習い』をメインに持ってくる。

「テイム!!」

 光の輪がベヒーモスの首元に現れ、きゅう、と首輪の形になる。
 次に名付けだが、エルンはまた「あっ」とどん詰まりした。
 考えてなかったので。

「ゼオルガはいかがでしょう? 西にあるとある島国を統一し、『地を覇する者』の意味があるそうですよ」
「え、かっこいいですね!」
「よいな! 気に入ったぞ!」
「! やっぱり喋れるようになるのか!」
「まあ、アタイらはほかの“まじゅー”よりつよいからね」

 シシリィのおかげで、名前も決めることができた。
 これで契約成立。
 さあさあ、とワクワクするゼオルガ。
 巨体の魔獣の使役は人にとって不都合なこともある。
 だから『魔獣使い』の職業スキルに[身体伸縮]というものがある。
 ベヒーモスにそれを用いると、ベヒーモスの巨体が縮んでいく。
 これが問題なく使用できたということは、ベヒーモスは間違いなく、エルンの召喚獣になったということ。

「めしだ!」

 縮んだベヒーモスこと、ゼオルガは瞳をキラキラさせた焦茶色の猫のような姿となり、鍋に飛びつく。
 リエマユよりも小さな体で飛びつくので、危うく鍋が傾いて溢れそうだった。

「おいひい、おいひい! おいひい!」

 食べながら感想を言い続けるので、こっそり見に来ていたナットがガッツポーズする。
 大変大変、お気に召していただけたようだ。
 あんまり美味しそうで、嬉しそうで、幸せそうな顔で食べるので、みんなの顔も綻んでしまう。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...