「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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VSベヒーモス 決着

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 なるほど、それもその通りだ。
 では、とリエマユとタータに地図を見せ、闇キノコ以外の四つの素材を集めてきてもらうことにした。
 ケイトに状況を説明し、立ち上がれるまでになったシシリィとアンジェリィのところへ行ってナットだけを王都から連れてきてもらう。
 連れられてきた魔獣が一掃される頃、素材を集めてきたリエマユたちが戻ってきて、ナットも事情を把握し、トリニィの町の宿屋でエルンの覚えているレシピを作り上げてくれた。
 ギルマスたちにシシリィとケイトが話を通し、トリニィの町の前でそわそわ待つベヒーモスへの攻撃を待ってもらい、出来上がった『闇キノコ出汁の煮込みルナの実ハンバーグ』。

『持ってきたぞ』

 [魔声]で話しかけて、手前に鍋を置く。
 めちゃくちゃ大人しくお座りして待っているとは、正直思わなかった。
 なので、エルンは思わずシシリィとギルマスの方を向く。

 え、これ、ずっとこのままいい子で待ってたんですか?

 の、意味で。
 するとシシリィとギルマスとベリアーヌとアンジェリィが「うん」と強く頷いた。

(根が真面目でいい子なんだな……ベヒーモス)

 ちょっとこの強面がとても可愛い食いしん坊に見えてきた。
 涎をだらだら垂れ流しながらもちゃんと待っているのが、本当に、なんとも。

『はっ! い、いや、まずは毒見だ! クイーンラッキーエアリスに毒見してもらおう!』
『なるほど、思っていたより慎重で冷静だな。リエマユ、一口目は食べていいってさ』
『ホントー!? ベヒーモスのくせになかなか太っ腹じゃなーい! いただきまーす!』

 スプーンで鍋の中のスープを掬い、リエマユにあーん、して食べさせる。
 周りは[魔声]が聞こえないので「なんで?」と言わんばかりだが、エルンと同じく『魔獣使い』の職業を持っているシシリィが[魔声]を聞き取れるので通訳してくれていた。
 多分、これで周りは大丈夫。
 もぐもぐ食べたリエマユが、飲み込んだあとほぉ……とうっとり宙を眺める。

『信じられない……こんな美味しいものが、この世界にあったなんて……』
『美味しかった? よかったね』
『ねぇ、ねぇ、主人~、これ、もっと食べたいわアタイ。本当にベヒーモスなんかに全部あげちゃうの?』
『今度から俺も料理を覚えて、いつでも作れるように頑張るよ。それに、まだ作ったことないレシピもあるし』
『これと同じような美味しいものが他にもあるの!?』
『あるんだよ。俺の知ってる本には百種類載ってたよ』
『はわわわわわわ!』

 嬉しくて後ろ足でぴょんぴょんしてる。
 それに、リエマユにはもっと色々なところを見せてあげたい。

(ギルド職員として王都の地理は覚えておかなきゃいけないけれど、シシリィさんみたいに外部のギルドとの連絡係になれればリエマユをもっともっと色々なところに連れていける。……まずは王都の地理からだけど……料理も覚えるって言っちゃったし……うん、頑張ろう!!)

 だが、それを成す前に成さねばならぬのが目の前の魔獣。
 差し出した鍋を見て生唾を飲み込み、底の深いスープ皿に盛り、手前に置いて距離を取る。
 ベヒーモスは皿を器用に爪先で摘み、口に放り込む。

(え、皿ごといった?)

 皿ごといった。

『……』

 からの沈黙。
 空を見上げ、多分味わっている。

『…………我の負けだ』
『早いな!?』
『好きにするが良い!』
『え、えーと、それじゃあ……テイムしていいかな?』
『好きにしろと言ったのだ! やるなら早くやれ! 残りの鍋の中身を早く食わせろ! 我は腹一杯食べたいのだ!』
『えーーー……』

 だが、それならとサブ職にしていた『魔獣見習い』をメインに持ってくる。

「テイム!!」

 光の輪がベヒーモスの首元に現れ、きゅう、と首輪の形になる。
 次に名付けだが、エルンはまた「あっ」とどん詰まりした。
 考えてなかったので。

「ゼオルガはいかがでしょう? 西にあるとある島国を統一し、『地を覇する者』の意味があるそうですよ」
「え、かっこいいですね!」
「よいな! 気に入ったぞ!」
「! やっぱり喋れるようになるのか!」
「まあ、アタイらはほかの“まじゅー”よりつよいからね」

 シシリィのおかげで、名前も決めることができた。
 これで契約成立。
 さあさあ、とワクワクするゼオルガ。
 巨体の魔獣の使役は人にとって不都合なこともある。
 だから『魔獣使い』の職業スキルに[身体伸縮]というものがある。
 ベヒーモスにそれを用いると、ベヒーモスの巨体が縮んでいく。
 これが問題なく使用できたということは、ベヒーモスは間違いなく、エルンの召喚獣になったということ。

「めしだ!」

 縮んだベヒーモスこと、ゼオルガは瞳をキラキラさせた焦茶色の猫のような姿となり、鍋に飛びつく。
 リエマユよりも小さな体で飛びつくので、危うく鍋が傾いて溢れそうだった。

「おいひい、おいひい! おいひい!」

 食べながら感想を言い続けるので、こっそり見に来ていたナットがガッツポーズする。
 大変大変、お気に召していただけたようだ。
 あんまり美味しそうで、嬉しそうで、幸せそうな顔で食べるので、みんなの顔も綻んでしまう。
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