私の新しいパーティーメンバーが勇者よりも強い件。

古森きり

文字の大きさ
14 / 36

前夜

しおりを挟む


「では解散! 明日は決戦だぞ! しっかり休むように!」
「「「はい!」」」

…約三十人弱。
ナドレの街に置いてきた者たちが居るので、パーティーは十組。
それも最大六人の人数に満たないパーティーばかり。
アレク様が欲しいと言っていた三十組を大きく下回った。
しかし、勇者のパーティーが二組。
私たちも参加する。
そしてアレク様が「少しだけ本気出す」と言ってくれた。
明日は必ず、メディレディアの首都ステンドを人間の手に取り戻す。
そしてカルセドニー、エリナ姫、ナナリーを助ける。
あと少し、あと少しだけ耐えてくれ…。

「オルガ、少しいいかな?」
「はい? なんでしょうかアーノルス様」

明日の仕込みをしておこうと思ったところ、アーノルス様が近付いて来た。
なんだろう、明日の作戦でなにか変更点でもあったのだろうか?

「実はあちらにキノコが生えていたんだが…、確か『鑑定眼』なら毒の有無が分かったはずだよね?」
「はい。私は『鑑定眼』レベル1なので、本当に毒の有無だけしか分かりませんが…。ローグス様ならもっと詳しく分かるのではありませんか?」
「あ、ああ、ローグスは…その、今少し話しかけられなくてね」
「?」

ローグス様もお忙しいのだろうな。
それに、ちょうど仕込みをしようと思っていたところだ。
食べられる食材なら、明日のスープに使えるだろう。

「では、取りに行きましょう」
「助かるよ」

『鑑定眼』は使い続けても知識が増えなければレベルは上がらない。
私の場合、魔物の知識だけで会得したスキルだからな…。
アーノルス様に案内されてキノコの生える場所へと赴くと…。

「こ、これは…」

ふわりと青い光が舞う。
空へ向かってふわふわと。
光るキノコの原生林?
な、なんという事だ!

「どうかな、オルガ…なかなかに幻想的な光景だと思………」
「毒はありませんが、あまり食欲がわかないキノコですね…!」
「…あ、うん…そうだね…食べるのにはやはり向かないかな…?」
「どうでしょうか…。それに、不思議な青白いこの光は…」

胞子?
月の光で光る胞子を飛ばしているのか?
奇抜なキノコだな。
『鑑定眼』によれば毒はないようだが、なんとなく美味しそうには見えない。
うーん、これは食べていいものか…。

「まあ、食材はいくらあっても困らないと思いますし…少しだけ取って戻りましょうか」
「……オルガは本当に真面目で優しいね」
「え? いえ、とんでもない」

真面目で戦うしか取り柄のない『戦士』だからな。
しゃがんで一つ、キノコを手折る。
青く光っていたキノコは手折った途端に茶色いキノコになった。
あ、これなら食べても問題なさそう。

「…不思議なキノコですね」
「そうだね。……オルガ」
「はい」

私の隣にしゃがんだアーノルス様もキノコ採取に乗り出した。
…あれだな、トール様が野性味あふれすぎる香りだからアーノルス様がとてもいい匂いに感じてしまうな。
まあ、クリス様の方がいい匂いだけれど。
ふんわり香る爽やかで優しい香り。
香水かな?
あれ、いや…それよりも……。

「……君はマティアスティーンの勇者と幼馴染だと言っていたけれど…、…彼のことが、その……好き、なのかい?」
「へ?」

……顔が、真横に…。
肩が触れ合いそうなくらい近い。
なんて整った美しいお顔なのだろう。
アレク様とクリス様も大層整っておられるが、あのお二人はなんかもう人ならざる雰囲気すらある。
アーノルス様は…御伽話に出てくる王子様のようだ。
その綺麗なお顔がやたらと近くにある。
何故。
キノコの原生林はとても広いのに。
なにもこんな近くで採取しなくても…手分けした方が……。

「オルガ?」
「え、と、は、はい?」

あれ?
いや、違うな?
私は今、アーノルス様に質問をされて……。

「……は、は? わ、私がカルセドニーを好き…?」
「あ、良かった、聞こえていた?」
「は、はぁ…、…それはええと、人として…」
「いや、男女の仲の意味だ」
「あ、ありえません! カルセドニーは女性らしい女性が好きなのです! 私のようながさつで戦うしか能のない高身長で筋肉まみれのゴツゴツ、あいつが好むはずもない! ただの幼馴染! 家族みたいなものです!」

同じ勇者にそんな勘違いをされたらカルセドニーも迷惑だろう。
ここは全力で否定して、奇妙な考えは捨てていただかねば!

「本当に? …では、アレク君とクリス君は?」
「ほお⁉︎ あ、あのお二人はパーティー仲間ですよ⁉︎」
「男女の仲は一切ないと?」
「ないです!」

と、いうより畏れ多い!
お二人は王族の方!
例えこの世界の王族ではなくとも、やんごとなき方々である事は間違いない!
アレク様もクリス様もお子様っぽい空気で誤魔化しておられるが、私のような下の者にまでお優しくして下さるし…!
というか! …………正直、本当に年下の子供だしな…。
年齢十五歳って言ってたし。
…いや、別に歳は関係ないが…。
と、とにかく…それ以前のあれです!

「そ、そもそも、私のような女らしさの欠片もない戦士が色恋など…」
「興味ないのかい?」
「……、…あ、あるかないかで言われると……なくもないですが…」

その、恥ずかしいが一応年頃の女というやつなので。
けれど、私は自分ががさつで女らしくない困ったら物理でなんとかするタイプなのは自覚している。
だからそもそも男の人に興味を持たれる事がない。
…あ、いや違うな…。

「でも、そもそも私は女と認識される事がなくて…」
「…まあ、初めて会った時は失礼ながら私も男性と勘違いしたよ」
「ですよね」

知ってます。
私はそういう奴なのです。
髪はボサボサ、化粧気もないのでブスできつめ。
肩幅と筋肉と腹筋が逞しく、そのおかげで胸やお尻に脂肪は一切付いていない。
全身ゴツゴツしていて、女性らしい体付きでもなく…性格もがさつ。

「……そうか。…では気になる異性は今はいないんだね?」
「は? はい」

しかし何故アーノルス様はそんな質問を?
なにかの調査か?

「…では、私にもチャンスはあるかな?」
「なんのチャンスですか?」
「君の恋人になるチャンスだよ」
「……」

……こい、び、……え?
チャン、…………は?

「へ?」
「実は君が一人でサラマンダーを倒した時からずっと気になっていたんだ」
「……。…………?」

サラマンダー?
あの、森の主の?
……は、はあ?
…………。
あ、チャンスって私をパーティーに加える的な⁉︎
ど、どうしよう、今はアレク様とクリス様に同行して頂いているから、いくらアーノルス様の頼みでもそれは!

「そして極め付けはコホセの街で見たあの俊足! 街の中心部から街の端っこの農場まで全力疾走しても全く呼吸の乱れぬスタミナ! すっかり心奪われてしまったよ!」
「そ、それは…、それはありがたいですが…私は…」

ど、どうしよう、どう断れば失礼でないのだろうか。
相手は剣聖勇者様。
パーティーに誘って頂けるのは大変な名誉だが、私は一応マティアスティーンの民。
お国の違うアーノルス様のパーティーに参加するのは考えてしまう。
そ、そうだ、一応この場ではお返事を控えてアレク様に相談してみよう!
そうだ、それがいい!
ところで今気付いたがアーノルス様に両手を握り込まれている⁉︎
し、しまった!
逃げ場を奪われている⁉︎
さ、さすが勇者…私の行動を先読みしていたというのか…!

「だが、今は君もそんな気持ちにはなれないだろう…分かっている。幼馴染を助ける事が今君の心を最も占める想いだろう」
「…………」

幼馴染…。
カルセドニー…。
…そうだ、早くカルセドニーを助けてやりたい。
私は…。

「だから、奪還作戦が終わったら私と一日デートしてくれないか」
「……………………はい?」
「私は本気だ」
「…………。……………。…………」

え?
えーと、え?

「…デ…?」
「デート」
「だ、誰と…」
「私と」
「だ、誰が…」
「君が」


デ…?


「私とアーノルス様が⁉︎」
「考えておいてくれないか。答えは今でなくてもいい。私は君のような逞しい女性をずっと探していたんだ! けれど、世間ではなよなよしい壊れてしまいそうないかにも守ってくださいと言わんばかりの女性ばかりで…! あ、リリスは違うよ? …というか、リリスはローグスが好きだし」
「リリス様はローグス様が好きだったんですか⁉︎」
「あ、これ私が言ってたって内緒だよ。言うと照れて怒るんだ」

そ、そうだったんだ⁉︎

「…話が逸れたけど、私は君が好きだよ」
「…っ⁉︎」
「…だから、考えておいてくれ。…奪還作戦が終わったら…私と一日デートして欲しい。君が私を嫌いでないのなら…」
「…………」

手が離れる。
……え、あ…、…アーノルス様が、わ、わ、私…を?

「さ、キノコを採って戻ろうか」
「は、は、は、はい…」

キ、キノコ。
そうだ、青く光り輝く謎のキノコ。
採れば普通の茶色いキノコになる。
…………。

「え、ええと、ア、アーノルス様…」
「うん? なんだい?」
「…わ、私は、その、ア、アーノルス様の仰っていた事がよく分からないので、あまりからかわないで頂きたいのですが…」

思い返してみるとアーノルス様の言っていた事半分以上分からない。
え? サラマンダーを倒して全力疾走で息切れしないスタミナがどうとか言っていたような…?
あれ?

「からかってなんていないよ」
「し、しかし、アーノルス様ともあろうお方が私などを…!」
「君は自分の魅力を分かっていないんだ! いいかい、オルガ…この世界に君以上に…立派な女戦士がいると思うかい⁉︎」
「え、い、いるんじゃないんでしょうか…?」
「いない! 私はこの世界を旅してきて、沢山の戦士を見てきた! 君以上に逞しい女戦士はいなかった! 一人でサラマンダーを倒し!」
「クリス様の援護あってのことです」
「一人でリトルワイバーンに立ち向かう!」
「トドメを刺したのはアレク様ですが…」
「その上、身嗜みを整えたらこんなに可愛い!」
「っ、そ、そんな事は…」
「君は私の理想の女性なんだ!」
「そ、そんな大袈裟な…!」
「君なら私と同じレベルに到達できる!」
「レ、レベル150に…⁉︎」

レベル150…。
この世界で剣聖と謳われるアーノルス様が初めて到達したレベル150。
戦士…いいや、剣を扱う者の到達点…剣聖と同じレベルに、私が⁉︎

「共に高みを目指せる女性を私はずっと探していたんだ! 君しかいない!」
「……アーノルス様…」

高み…。
アーノルス様は今のレベルより更に上を目指しておられると…?
な、なんと言うことだ…。
これが剣聖のお考え…。
そういえば私の両親も言っていた…。


ーーー『オルガ、いいかい? 父さんと母さんはね…最初は敵国同士…更にソリが合わず、顔を合わせる度に相手の顔面をグッチャグッチャになるまで殴ろうとしていたんだよ』
ーーー『でも拳と剣を交えていたらいつの間にか自分でも信じられないレベルに到達していたの。そしてその時に気付いたのよ……』
ーーー『ああ、母さんこそ俺の運命の人だったんだ』
ーーー『この人となら、もっと上を目指していけるって……! お前もそういう人と結婚するのよ』
ーーー『きっとお前をもっと高みへと連れて行ってくれるはずさ……』

ははははは……。

ははははははははは………。


……と!


アーノルス様はこれほどのレベルに達してまだ高みへと…。
私は…、私は……!

「私も、もっと強くなりたいです!」
「オルガ…!」
「アーノルス様! 是非、明日の奪還作戦が終わったら……私と勝負して下さい!」
「…勿論だ! 約束だよ!」
「はい!」







…………。


「クリスちゃん、あれ意味分かった? なんの話してたのかしら?」
「もう戻ろうリリス~…心配して損した~…」
「そうね…」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...