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12歳編
石晶巨兵計画(1)
しおりを挟む「ギ、ギギたちは魔法に関する研究、手伝えないのか!?」
『他の研究者の皆さんがデータ提供をしてくださいましたが、科学と相容れないでーす。データ不足、とも思いますが、解析には時間がかかりますー。なのでギギたちはあくまで施設を使う場合のサポート、とお考えくださーい』
なんてこった!
「魔法や魔道具の開発は、結局は自力でやれってことだね?」
「そうみたいだ……」
ジェラルドも半笑い。
この技術力に超期待したのになー!
魔法と科学は、やはり相容れない存在なのかー!?
「まあ、情報が漏れない拠点ができただけでも御の字だよ~」
「そう、だな。うん。前向きに考えよう!」
「では早速ヒューバート殿下が考案した例のモノを、試作開始するのですね!」
「ああ! 石晶巨兵、試作開始だ!」
他にもギギに聞いてみたいことはたくさんあるが、ひとまずこの施設を利用する許可を得られた——石晶巨兵プロジェクトを進めることにしよう。
必要なものはギギが用意してくれそうだし、これだけの技術力が集結した施設ならどうにかなりそう!
——さて、石晶巨兵とは!
俺が前世の記憶と趣味を最大限に掘り起こして考案した、結晶魔石を応用した石人形のことである!
言うても大まかな括りとしては魔道具だ。
これは俺がノリで「こんなんあったらいいな」の、ぼやきをジェラルドが「あ、それイケるかも」というノリで始まり、設計図を二人で作り、素材をランディが集め、レナとジェラルドが『聖女の魔法』を調べ直して試作の前段階まで漕ぎ着けた。
まず、俺の理想というか夢というか目的は“死なないこと”!
破滅しないことだ。
それは自分自身とこの国の破滅回避。
死にたくないから!
死にたくないからね!
そのためにはやはりこの世界の主人公たるレナに嫌われたくない。
レナは『救国聖女~』の物語の中で、味方と呼べる人間がこの国には一人もいなかった。
その上で婚約者であったヒューバートに婚約破棄を突きつけられ、国外追放される王道の婚約破棄モノ!
なので——。
・浮気しない。
・婚約破棄しない。
・追い出さない。
を、徹底する。
そしてレナの環境改善は、俺の『浮気しない』に直結すると思うのだ。
レナが側にいれば、俺は浮気しない自信がある。
毎日可愛いレナを見てたらそんな気微塵も起きるわけがない。
でも、物語の強制力とか、そういうのがあるかもしれないじゃん?
……見張ってていただきたい……。
じゃあレナのお世話係にパティを配置。
そして、レナを過労からも守りたい。
レナを過労から守るのは、俺のもう一つの目的——国の破滅からも守ることになる。
そのために、やはり結晶病の特効薬か、『聖女の魔法』が使える魔道具の開発が長期的に考えて最善だと思った。
これは幅を利かせる聖殿の立場を弱めるのにも使える。
無論、そういうことをすれば俺の命を狙う勢力は躍起になるだろう。
下手したら俺に与するジェラルドやレナ、パティにも危険が及ぶかもしれない。
しかしそこはランディが事前に情報を流してくれる。
一大勢力に胡座をかき続けてきた影響なのか、俺たちを油断させるのが目的なのか、今のところ暗殺者の存在は俺を脅かすモノではない。
なにしろ護衛騎士がいないのに、従者二人が強すぎるので。
いや、まあ、俺だって鍛えてるけどね?
やっぱどうあがいても凡人なんですよ、俺は。
なので、前世の記憶をフルで使う。
前世の記憶つってもほぼオタク知識だけど。
そのオタク知識がきっかけとなり、始まったのが石晶巨兵計画。
フッ、そう——ロボットだ!
石晶巨兵という魔道具についてもっと詳しく説明するのなら、俺の前世のプラモ知識で大雑把にデザインと骨組みを設計。
ジェラルドがレナとの結晶病治療で得た『聖女の魔法』を分析し、杖などの魔道具に使うごく一般的な結晶魔石を、聖女の結晶魔石のように石晶巨兵に応用できないものかと考えた。
まあ、簡単にいうと人工聖女人形である。
聖女の結晶魔石は杖や魔道具に使う結晶魔石とは別物であると言われているが、その差は物質か霊魂体か、だと思われているのだ。
なので、器を用意して、結晶魔石を霊魂体に変換し、その器に宿して対外的に操作できたなら、『聖女の魔法』を誰でも使えるのではないか——というのが俺たちの立てた仮説、というわけ。
問題は一センチの結晶魔石に対して、なかなかデカめの素体が必要となること。
どんどん大きな石で試す羽目になり、当初予定していたよりも巨石が必要ということになったのだ。
まあ、このでかい石が必要、ってところで俺が「じゃあロボットみたいにしてみようぜ!」となったわけだが。
だってそんなでかいならいっそ自分で動いて移動してもらった方がよくね?
車型も考えたけど、人型の方がやっぱりロマンじゃね?
乗って操縦できるかどうかはぶっちゃけまだわからないんだけど、いつかそうなったら激アツじゃね?
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