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12歳編
石晶巨兵計画(2)
しおりを挟む……まあ、父上には「守護石みたいな形にして結界の役割を持たせたら、聖女が結界を張り直したり修繕したりする手間暇が減るんじゃないのか? なぜ人型? 移動させる方が大変じゃないか?」と色々と突っ込まれたけれども!
そこは、ロマンを優先、だろ……?
「~~~っていう感じのことをしたいんです」
と、俺が計画のあれそれを振り返っている間に、ジェラルドがギギに計画を説明し、設計図を見せていた。
ギギは翼を広げると『でしたら!』と叫び、近くの壁にモニターを設置する。
翼の先でなにやら操作していると、設計図がモニターに現れた。
スキャンしたのか?
いやもうどうなってんのか全然わからん。
便利だからいいや。
「わあ」
『もうすでに、かなり完成度が高い骨格の設計図ではありますが——』
と言ってギギは自分が乗っている筒状の乗り物を突っつく。
壁のモニターの隣に、俺はまた、驚くモノを見せつけられる。
「——な……」
『こちらをご参考になさるとよろしいかと存じます。大和製量産機、陸島と同じく大和製量産機、彩雲の設計データでございます』
ロ——ロボット……!
俺が前世で作ってたロボ系プラモデルの、マジもの……!?
頭には二箇所にカメラがあり、リクシマはいかにもな陸上型。
サイウンは背中と足元に飛行機のような翼を持っている……多分飛行タイプ。
は? は?
「こ、これ、実在したのか?」
『ハイー。大和は元々技術大国と呼ばれておりましてー、当施設が敗戦を機に閉鎖になる直前まで新型機“瑪瑙”の開発が行われておりましたー』
「新型!? そ、そのデータって見られるのか?」
『ありますけどー、テストパイロットの方のデータがヤバすぎて量産に向かないという結論が出ましてねー。結局隊長機として改良することになったんですけど、その前に戦争が終わっちゃいましてあとはわからないんですよー』
とか言いつつ、新たなモデルの機体が3Dで浮かび上がる。
なにこれ、カッケェ!
侍みたいな鎧兜。
装備は刀。
大袖や蝙蝠付韋、草摺。
おお~! めっちゃカッケェ~!
「なんだ、これは……殿下とジェラルドが設計したモノを、遥かに上回る精密な石晶巨兵ではないか……実在したというのか!?」
「それに、戦争……? ギギさん、この国は戦争をしていたのですか?」
『ハイー。およそ千年前のことになります。我々は施設の管理をサポートするAIですので、詳細は存じ上げませんけどもー』
「な、なんだよそれ! 気になるじゃん!」
『申し訳ありませーん』
くっ、肝心なところはわからずじまいかよ!
「でも、これだけ精巧な見本があれば、もっと効率よく動かせる石晶巨兵を作れるかも」
「! そ、そうか!」
「でも、問題は素材だね。千年前の石晶巨兵——えーと、これはなんで呼ばれてたものなのかな?」
『擬似歩兵前進兵器というカテゴリの兵器ですね』
「うん、兵器……そう、これは兵器なんだよね。でも、ぼくらが作りたいのは兵器ではないんだ。魔道具……人を助けるものだ。用途がまるで違う。どこまで参考にできるかわからない」
「そ、そうか……」
千年前、この国があった場所は戦争をしていた。
まさか前世のロボアニメみたいなやつが出てくるなんて、思わなかったけど……この塔の技術力を見ればこんなトンデモ兵器がリアルに量産され、それで戦争してても不思議じゃないのかもしれないな。
リクシマ、サイウン、メノウ……どの機体もとても精巧で美しい。
しかし、兵器。
結晶化した大地が世界を侵食する、終末の世界——結晶大陸。
大地と共に今は失われた歴史。
もしかしたら、俺が生まれたこの世界は……結構とんでもなく恐ろしい世界なのではなかろうか。
世界のすべてを巻き込んだ、科学戦争の終着点。
かつてこんなものが闊歩していた世界。
それを呑み込んだ結晶化した大地。
民の飢えを解決するために、石晶巨兵でいつか結晶化した大地を治療し、再び大地を取り戻すことも視野に入れて計画していたけれど……果たしてそちらの方は進めてもいいものだろうか。
このまま滅びを受け入れた方が、いいのかも。
い、いやいや、本末転倒だろ、それじゃ。
それに、ジェラルドの言う通り俺たちが作りたいのは人を救う道具だ。
兵器じゃない。
俺は次の王として、この国を——少しでも長生きさせなければならない。
忌まわしい古の科学だとしても、間違った使い方をするわけじゃないのだ。
使えるものならなんでも使え。
たとえ滅びを待つばかりの世界でも、諦めてやるものかよ!
「……あの、皆様。そろそろ帰寮された方がいいかもしれません。夕飯のお時間を過ぎそうです」
「え! もうそんな時間か?」
「本当です、そろそろ六時になっちゃうますよ!」
「やばい、初日から門限破りはやばい! 戻るぞ、みんな! ギギ、また明日来るよ!」
『ハァーイ、お気をつけてお戻りくださーい』
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