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12歳編
朗報な速報!
しおりを挟む翌日。
入学式から二日目の朝。
「おはようございます、ヒューバート様」
「おはよう、レナ……? どうかした?」
入学後は食堂が寮別になってしまい、一緒に朝食を摂れなくなってしまったけれど、クラスは同じなのでジェラルドとレナと三人一緒に登校している。
が、しかし、今朝はレナの様子がおかしい。
いつもの笑顔がない。
「体調が悪いの? 休んでいいんだよ!?」
「ち、違うのです! 昨夜遅くに聖殿から聖女選定式が行われる旨の連絡をいただきまして——」
「え!」
近く行われるとは思ったけれど、急すぎないか!?
まさかとは思うけど、その時一番偉いやつが勢いだけで決めたないよね?
「……けれど、わたしは城住まいが長く、聖女教育を王妃教育で潰したからと……選定式には来ないよう、言われて……」
「え」
よ、予想通りの嫌がらせしてきたーーー!
あまりにも思った通りのいちゃもんつけてくるじゃん、聖殿~~~!
いいのそれ、笑う。
いや、こっちとしてはレナを王家の聖女にする計画が実行できるから、オールクリアーーー! 歓喜ー! ついでにこんな有能聖女を手放して、聖殿乙! 大森林不可避ー!
って、感じなんだけど。
マジ聖殿草。
「……わたし……」
「レナ?」
なのに、危うく爆笑しそうになった俺をよそに、レナが涙を浮かべる。
ギョッとした。
ど、ど、ど、どうしたの、レナ!
なにがそんなに悲しいの!
タコのように両手がウネウネになる程「レナ、レナどうしたの、どうしたの」となる俺。
「わたし……ヒューバート様に……『聖女になる』と、あんなに信じていただいてたのに……聖女に、なれなくて……」
「へ?」
「も、申し訳ございません……! わたし、聖女に、なれ、ませんでした……!」
がばっ、と頭を下げられて、一瞬なにを言われているのかわからなくなった。
困惑している俺の肩を、ジェラルドが叩く。
「おはよ~。朝からどうしたの、深刻な顔になってるけど~」
「ジェラルド……」
「ジェラルドさん……」
天の助け!
マジ泣きをし始めたレナに半泣きになりつつあった俺は、ジェラルドの袖を握り締めた。
お助け!
「…………ふんふん、つまりレナは聖殿の聖女選定式に参加できない、だから聖女にはなれない、ヒューバートの期待に応えられない、と」
「はい……」
「で、ヒューバートはレナが泣いちゃったからどうしていいのかわからなくて一緒に泣いちゃった、と」
「だって、だって、レナが……」
ジェラルドに連れてきてもらった談話室。
そこで俺とレナが道端で泣き始めた事情を、ジェラルドに聞いてもらった。
嫌われた?
俺嫌われたのだろうか?
死? 死?
俺、死ぬ?
俺が漫画とストーリーを変えてしまったせいで、破滅エンドがすぐそこに?
いやだぁ、まだ死にたくないよぉ~!
「ヒューバートは落ち着きなよ~。聖女選定式にレナが呼ばれなかった時の作戦、伝えてあげればいいだけじゃない」
「「え」」
「でも授業が始まるから次の休み時間にしな~? ほら、行くよ~」
「え、あ」
ジェラルドに手を引かれ、教室に行く。
一応談話室でジェラルドに話を聞いてもらったから、俺とレナの顔面はだいぶ落ち着いた。
それにしたってあっさり言ってくれる。
「……あの、ジェラルドさん、ヒューバート様、わたしが聖殿の聖女選定式に呼ばれなかった時の作戦って……」
「二年くらい前から考えてあったんだよ~。あとで詳細は説明するけど、聖殿のやりそうなことはだいたい先回りして対処方法を考えてあるから大丈夫~。それに聖殿がそういうことを言い出したら、こっちに利益になるから、そうならないかなぁ、って思ってたくらいだし~。なのに、レナが泣き出してヒューバートがびっくりしちゃったんじゃない?」
「……あ、う、そ、そう、だったんですね……す、すみません、わたし、知らなかったとはいえ……!」
「……俺もごめん……」
冷静さを欠きました。
は、恥ずかしい。
いくらレナが泣き出したからって、一緒に泣き出したんじゃねぇよ俺ェ。
そこはかっこよく余裕あるところを見せ、肩を叩いて「大丈夫、それも計画通りだ」とか言って、泣いてるレナを安心させてやるところだろぉ!
めちゃくちゃカッコ悪~!
でもでも、仕方なくね!?
ヒューバートくん、12歳ですよ!
前世だって高校生ですよ!
年齢イコール彼女なしの童貞には、難易度高すぎんのよ!
「二年前から、こんな事態を想定して、その、わたしのことを考えていてくださったんですか……?」
「え? うん、まあ……。だってレナは、この国一番の聖女だろう? 聖殿に取られるのもやだけど、王家が囲えば絶対こういうことしてくると思ったからさ……」
「っ」
なんにしても、ジェラルドが話を聞いてくれたおかげですっかり落ち着いた。
レナを王家の聖女にできるのは僥倖。
これは盛大に祝わねばなるまい。
あ、そうだ。
ランディに頼んでいたお茶会の時に、レナが王家の聖女になるのを発表するのはどうだろう!
貴族たちへのいいお土産になると思うなー!
聖殿派貴族への牽制にもなるしー!
よし、そうしよう!
「しかし、ひとつ気がかりだね~」
と、教室が見えてきたタイミングでジェラルドが呟く。
気がかり? なにが?
「レナほどの実績ある聖女候補を聖女にしないってことは、他にもレナに匹敵する聖女候補がいるのかねぇ? だって優秀な聖女を擁立できなければ、聖殿は価値がないよ?」
「そう、言われてみると……確かに……」
漫画では聖女候補はたくさんいた。
けれど、レナほどの能力を持つ候補はいなかった。
どうする気なんだろう、確かに。
王家がレナを聖女に認定するとは思わないのだろうか?
読めねぇなぁ……?
「聖殿にはわたしよりも優秀な聖女候補が、たくさんいると思います。実績も、彼女たちが聖女になればすぐに追い抜かされます」
「「そうかなぁ?」」
「そ、そうですよっ」
そうかなぁ?
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