終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
212 / 385
間章

面倒ごとの予感(1)

しおりを挟む
 
「——いや、でも確かにあの『神の手を持つ悪魔』なら魔法という新技術を編み出して、世界に植えつけるぐらいするかも……」
「……しそうだね」
「だろう?」
「ええ……?」

 顎に指をあてがい、ナルミさんが神妙な面持ちでなんか言い出した。
 それにデュレオもシズフさんも賛同する。
 本当どういう人なんだよ三号機の登録者の人ぉ!

「あいつ、ギアンの人格データから作られた擬似人格でしょ? ヒューマノイドにダウンロードさせないでよ? ナルミ」
「さすがのオレもあいつの人格データをダウンロードする気にはなれないねぇ。三号機の登録者は本当に災難としか言いようがない」

 …………。ん?
 人格データ? 擬似人格?
 あ? なんかそういえば前もそんなような話を、聞いたような。
 ……ああ、三号機の登録者も幼い頃に登録者になってしまって、しかも戦いに向かない性格だったから生存させるために擬似人格が植えつけられたんだっけ?
 ギア・フィーネヤベーって思ったけど、確かに7歳か8歳くらいの頃じゃ、一号機の登録者と同じ末路だったかもしれないもんなぁ。

「デュレオ」
「あ? なに?」
「デュレオの歌が聴きたい」
「…………。は? は? な、なに、言ってんの?」

 そしてやはりシズフさんは電波系ど天然すぎないか。
 脈略がなさすぎる。
 今までの会話からの、どうしてそうなった?
 そりゃデュレオじゃなくても「は?」ってなるわ。

「本当いきなりなに言い出すの。意味わかんなくて引くんだけど」
「——待てよ……? お茶会は無理だけどライブならすぐ開けるんじゃないか?」
「ちょっと王子サマ?」

 ピーンときてしまった。
 お茶会は貴族の勢力図を調べ直すところからだが、デュレオという『美と芸術の神』のお披露目ってことにして学院の広場に人を集めたら楽に現在の貴族の情勢も調べられるし、平民生徒たちに学院の外のお客の対応をさせれば学年関係なく大勢にバイトをさせることができるのでは?
 シズフさんはデュレオの歌を聴けるし、ついでにデュレオの歌で石晶巨兵クォーツドール新型試作機とデュレオの歌が本当に聖女の魔法と同じ効果を発揮するかどうかも調べられるし一石二鳥……いや四鳥ぐらいあるぞ!

「なんで俺が——!」
「それに、俺もデュレオの歌をまともに聴いてみたかったし!」
「っぐ……!」
「前は戦闘中だったし、色々それどころじゃなかったからちゃんと聴いてみたかったんだよな~。千年前の大人気歌手だったんだろ? ディアスが『俺でも名前を知っている』って言ってたし!」
「っっっ……」
「わたしも聴いてみたいです! 結晶化津波の時は二曲も歌っていましたけれど、どちらも違う曲だったからびっくりしました! もしかして、他にも色々な曲を歌えるんですか!?」

 レナ、参戦。
 っていうか、結晶化津波の時二曲も歌ってたんだ……!
 本当に全然まともに聴けてなかったんだな、俺。

「ヒューバートとレナが聴いてみたいなら、ぼくも聴いてみたい!」

 ジェラルド、参戦。
 無垢な瞳でキラキラ見上げてる。
 これは、凄まじい威力。

「俺は今聴きたい」
「ぐっ……うっ……」
「でないと、眠くなってくる……」
「そういう意味かよ!」

 シズフさん寝ないためにデュレオの歌をご所望だったのか!
 神格化したけど、シズフさんは生まれつき細胞に異常がある人。
 だからラウトの結晶病に感染したまま、破損部位が結晶魔石クリステルストーンとして体外に排出され続ける。
 ナルコレプシーは脳の神経細胞が“起きている”ために、必要な物質を作り出せなくなった状態の病。
 本来薬で補えるらしいが、現代にそんなもんはない。
 なんならこの人はその手の薬が体内の身体強化用ナノマシンに阻害されて、効かなかったとか。可哀想。
 でもデュレオの歌を聞くと戦闘時みたいに目が冴えるんだって。不思議だね。

「っていうか別に寝ればいいじゃん! 危ないものとかないんだしさぁ!」
「なに照れてるの? プロの歌手なんだから歌えばいいじゃん」
「プロだからこそ安売りもしねーんだよ!」

 ナルミさんが間違いなくデュレオを揶揄う意味で便乗してきたが、逆効果だったー!
 ああああ、聴くチャンスがー!

「でもコンサートはやろう」
「切り替え早。まあ、お給料出るならやるけど。プロなので」
「お給料かぁ。お金でいいのか?」
「いいよ。お金ってどの時代でもいくらあっても困らないし」

 現実的ぃ。

「『美と芸術の神』のお披露目だし、聖殿の予算から捻出するとしよう」
「おやおやおやおや、さすがヒューバート殿下。なかなかのことをお考えになりますねぇ。いいと思います」
「でしょー?」

 リーンズ先輩にお墨付きをいただいたぜ。

「そうだ。あと、ナルミさん」
「なんだい?」
「セドルコ帝国のことなんですが、なにか新しい情報は入ってますか? メリリア元妃が逃げた件も」
「「え!」」

 ああ、レナとジェラルドは進級試験でいっぱいいっぱいだったから、メリリア元妃のことは聞いてなかったのか。
 めっちゃびっくりさせてしまった。

「そうだねぇ……帝国の使者をダシに使って、その隙に帝国の影部隊が塔から連れ出したみたい。メリリアが帝国に接触したというよりは、帝国側からメリリアに目をつけて接触したみたいだよ」
「やっぱり……」
「ん~? メリリア様を帝国が助ける意味、なにかあるの?」

 と、首を傾げるのはジェラルドだ。
 まあ、側から見るとそう思うだろう。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

処理中です...