239 / 385
二人の聖女と悪魔の亡霊編
待ち時間(3)
しおりを挟む「は? そんなやついる?」
「ここにいるな」
え? 俺特殊?
ナルミさんが挙げた理由は心当たりしかないが、ファントムにとってはかなりおかしいらしい。
……俺、そんなに特殊なの?
「自力でギア上げしたことない? ……逆にどうして自力でギア上げせず生き残れたんだ?」
「千年前と環境が違うからねぇ。ヒューバートが前線に出て、ギア・フィーネで戦う必要があまりないんだよ。この子、一国の王子だし、最初からディアスとラウトが側にいるし」
「過保護してんじゃねーよ、チビ」
「身長は関係ないだろう! 殺すぞ!」
あああああぁっ!
せっかくナルミさんが穏やかに解説していたのにー!
なぜそこで喧嘩を売るんだファントム!
ラウトに身長のことは禁句で頼むー!
「ラウト、魔力漏れてる! 落ち着いて! 大丈夫、俺より高いじゃん!」
「喧しい! もうほとんど同じだろうが! 殺すぞ!」
「ヒューバート、それは火に油だよ!」
あれぇ!?
「まあ、ヒューバートは成長期だしね。ところでその身長の話、子どもの体のヒューマノイドを使っているボクも当てはまるからやめない?」
「やめましょう!」
ナルミさんも該当すんのぉ!
もうやだ身長の話永遠に禁止でお願いします!
「今のはファントムが悪いよ。ちゃんと謝りなよ」
「自力でギア上げしてないこのガキが悪いんだろ」
「おおおう!?」
責任と原因俺に丸投げぇ!?
き、聞きしに勝る鬼畜! 邪悪! 悪魔!
ミレルダ嬢が肘で軽く突いても無視!
お、恐ろしいいぃ!
デュレオより天上天下唯我独尊すぎないですか?
デュレオの方がまだ多少の面倒臭さはあるものの、ツンデレのデレがありますが?
なにこの人、一昔前の俺様系すぎないぃぃ!?
怖ぁぁぁぁあっ!
「自力のギア上げはならしだ。それで少しずつ同調率を上げて、ギア上げを安定させていく。それをやらずにいきなり“歌い手”の歌でギアを上げれば、倒れるに決まっている」
「……っ」
「最初から“歌い手”の歌は“ブースター”だと聞いていたのだろう? ブースターばかり使っていれば同調率は上がるわけもない。次に“歌い手”の歌を聴いてギア上げしたら死ぬぞ、お前」
「う……」
はっきりと、言われた。
死ぬ。
死ぬのは……死ぬのは、嫌だ。
——あの時、デュレオに言われたことは覚えてる。
でも、俺は、まだ死にたく、ない!
「シャルロット・ユン・ルレーンは“歌い手”ではないのか?」
「才能はある。リリファとアベルトの子孫だからな」
「……ああ、やはりそうなのか……」
自分で聞いておきながら、ラウトが視線を背ける。
もしかして、睨むように見ていたのって、それを確認したかったからなのかな?
「あとこいつも」
「そう! ボクも“歌い手”の才能があるらしいよ! でもボクは三号機の登録者になるけどね!」
「ミレルダ嬢も?」
へー、マジか!
というか、やっぱり聖女はイコール“歌い手”の才能があるんだな。
……俺、結構ピンチなのでは?
“歌い手”が増えると死の危険が増えるということなのでは?
ワ、ワァ……。
「あ、でもジェラルドも適性があるって言ってませんでした?」
「ぼく?」
「ああ、ミレルダより同調率が高い。ミレルダが10%。ジェラルドは18%」
「俺より高いじゃん!?」
「は、はわわ……!」
しょ、衝撃の事実!
マジでジェラルドが俺よりギア・フィーネとの同調率が高い!
そんなことある!?
あるけど!
「ラウトは?」
「なんで俺の同調率を知りたがる?」
「面白そうじゃないか」
そしてナルミさんは好奇心に負けた顔してる。
なぜか巻き込まれるラウト。
でも神鎧に至ったラウトの同調率は、ちょっと俺も気になる。
「搭乗時はさらに上がるだろうが、平時で90%だな」
「「たっっっっか!?」」
「へぇー、やっぱり面白いね。ファントム、キミ、ひと段落ついたらルオートニスに来てシズフも鑑定してよ。面白そうなデータがたくさん取れそう」
「さすが、自分に懸想している男相手にも容赦のないゲス発言だな加賀鳴海。お前のそういうところが本気で気持ち悪い」
「余計なこと言わないでくれるかなぁ!」
…………。
ん? 今なんかサラリと爆弾を投下されたような?
「え! シズフさんってナルミさんのこと好きだったんですか!?」
「拾わなくていいんだよ、ヒューバート!」
「趣味悪いよな。そもそも自分の兄の婚約者だろ? 二重に趣味が悪いよな」
「むしろシズフさんにそういう感情があったんだぁっていう」
「私とシズフの話は今関係ないだろう!」
でもこんなに照れて焦っているナルミさんは見たことがない。
つ、つまり…………マジ!
うっわー、マジ!
「ぼくのご先祖様がみんなに『性格最悪』って言われていた意味が、今とてもよくわかるぅ……」
「ファントムは本当にすぐ人を怒らせるんだから! よくないよ、そういうの!」
「はん、知らねーな」
子孫たちに叱られても響かないご先祖ぉ。
「えーと、つまり俺の症状改善には、自力のギア上げあるのみ?」
「そうだな」
自力のギア上げかぁ……!
そういえばラウトと戦うために、ディアスもギア上げを繰り返しやってたなぁ!
そうか、アレのことか。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる