終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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二人の聖女と悪魔の亡霊編

衛星兵器

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『全員建物内へ避難しろ!!』
「ラウト!?」

 五号機が白く光り輝き、飛び上がる。
 え? 見間違い? いきなりギア5の神鎧モードになってない!?
 何事かわからないが、ファントムが「セルオン、ルオートニスの王子を領館へ避難させろ! ミレルダ、シャルロットは町を[聖守護結界]で覆って重ねがけしろ! いくら重ねても足りん!」と叫ぶ。
 あ、ちなみにセルオンはミレルダ嬢の従兄弟。
 従者として女王が連れてきた人だそうだ。
 よくわからないままみんなが領館へ逃げ込む中、ディアスとジェラルドを送った山の方から黒光りした極太の光線がラウトの飛び去った方へと放たれた。
 一号機の、最大火力砲?
 やっぱりぼんやりしていて確信が得られないけど。

「な、なにが起きているのですか!?」
「すいません、俺にもさっぱり!」

 俺は大まかな指示しか出していないので、なにか起きた際は各自の判断に任せているのだ!
 なぜなら千年前の戦争経験者たちの方が、臨機応変に対応できるからです!

「っ」

 でも、領館玄関に行くまでの階段で車椅子が止まる。
 セルオンが立ち止まったのだ。
 空が異様に明るい。
 ミレルダ嬢とシャルロット様の[聖守護結界]の重ねがけ関係なく上からなにか、光の塊が落ちてきている……?

 ——衛星兵器。

 直感的に理解した。
 ラウトとファントムのあの慌てよう。
 神鎧モードの五号機であっても、聖女二人の[聖守護結界]の重ねがけがあっても、きっと防げない!
 だからあの山の方から一号機の援護射撃があったんだ!
 この町一つ、丸ごと消し去れる大量破壊兵器が

「セ、セルオン、俺の腕を上へ持ち上げてくれ!」
「え?」
「早く!」

 杖を袖から取り出して、セルオンに手首を持ち上げてもらい上へ向ける。

「我が宝たる民を守りたまえ! [シャドーサンクチュアリ]!」

 防御力ならば聖魔法より闇魔法の方が力が強い!
 勢いよく落ちてくる光の圧が、二人の聖女の[聖守護結界]をガラスでも破るように打ち破る音。
 町全体を覆う俺の[シャドーサンクチュアリ]の展開が、間に合うかどうか——。

「ううぐううううううううッ!」
「う、うわぁぁあああああぁ!」

 俺の杖が一瞬で燃えた!
 [シャドーサンクチュアリ]はギリギリ展開に間に合ったものの、燃える杖掴みながらセルオンに腕を持ち上げられている状態ではあと五秒も保たない!
 魔力の減りもえげつねぇ!
 ダメだ、死ぬ!
 こんな意味のわからない死に方!

「大丈夫だ。よく耐えたな」
「!」
「我が宝たる民を守れ! [シャドーサンクチュアリ]!」

 肩を軽く叩かれ、そう優しく声をかけられる。
 この声は——

「ディアス!」

 数百年、一つの村を結晶化した大地クリステルエリアに浮かせ続けた“魔王”!
 俺などとは違い、一瞬で町を覆い隠す強力な[シャドーサンクチュアリ]。
 安心感ヤベェ!

「今だ! ラウト!」

 ディアスが叫ぶと轟音が別の轟音にかき消される。
 次の瞬間町を覆っていた光の圧が、少しずつ町の外の方へと動いていく。
 五号機の胸部電子融解砲が衛星兵器を押し返している!?
 ……それはそれでやばすぎだろ。

「!?」

 空からの光が消えていくタイミングで、五号機が町の広場に落下してきた。
 反動で落ちたのか!?
 それほどの威力を……!

『おのれ……おのれ! ふざけた真似を!』

 あ、ラウトがガチギレの声がする。
 溢れ出る魔力以外のなにかの力の気配。
 あ、これは——ヤバい!

「落ち着け! ラウト! サルヴェイションを三号機のところに置いてきて、演算処理とエネルギー供給を行っている! だから溜飲を下げろ!」
『……ほう?』

 ディアスの声に、操縦席のハッチが開く音。
 ゆっくり見上げた空は[シャドーサンクチュアリ]で薄暗いが、そこに一線、光が流れていく。

「へえ、俺の長距離精密狙撃ユニットを使ったのか。昨日今日登録者になっていきなり使いこなすとはな」
「『サクリファイス』は千年前にお前が停止させている。また使えるようになっているとは思えないが……」
「当然だろ。誰が使用停止にしたと思ってる。そもそも千年前のモンを持ち出すとも思えん」
「やはり新造したか。愚かな……」

 ディアスとファントムの会話を思うに衛星兵器のことだろう。
 新造した。
 新しく作ったって意味だよな?
 それでルレーン国の港町であり、コルテレとソーフトレスとの交易地点を撃った。
 今日、この時というタイミングで。

「あまり深読みしたくないですけど、これって狙われましたよね……?」
「おそらく」

 ディアスの肯定に頭を抱えたくなった。
 灰になって崩れ落ちる俺の杖。
 あーあ、参ったな……杖、作り直しだよ。
 魔力もすっからかん……。

「それにしても三号機はコルテレの山の上か? [隠遁]で隠していたんじゃなくて、マジで町の側から移動してやがったのか」
「ヒューバートの指示だ。本当はお前のやらかしに対してのものだったが、よもや衛星兵器を相手にすることになるとはな」
「やらかしって……なにすると思われてたんだ」
「正直、お前はあまり信用がないからな。コルテレの王も殺してしまうし」
「俺の話を遮るのが悪い」

 王様相手にこの言い種よ……。
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