終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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18歳編

裏切り皇女(4)

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 そしてセラフィはやはり器ではない。
 セラフィの近くにいる者たちも軍事関係あまり明るくないんだろうか?
 焦っているにしても馬鹿者すぎない?
 大丈夫?
 頭上に光る複数の物体を、ルオートニス側から放たれた五本の光線が撃ち抜いていく。
 アヴァリスの狙撃。
 しかもあれ、別に[長距離精密狙撃ユニット]を使ったわけではない。
 エアーフリートに搭載していた三号機アヴァリス専用装備の一つ、[スナイパーユニット]。
 大型ライフルと小型ランチャーのセット装備。
 元々登録者であるザード・コアブロシアが好んで使用していたユニットで、その精度は彼らがその身を以て立証してくれた。
 軌道があれで完全にずれて、町の中ではなく側に落ちてくることになるだろう。
 モニターの向こうでも『降下部隊が!』とわざわざ結果を報告してくれる。

『どういうことなの! お前たちが立てた作戦よ! なんとかしなさいよ!』
『お、おい、扉が開かないぞ!?』
『ク、クソ! どうなっている! 艦橋!?』
『え? ど、どうしたの?』

 後ろの兵士たちに叫ぶセラフィ。
 しかし、今は彼らもそれどころではない。
 兵士たちの様子に不安げになったセラフィに、俺は優しく教えてあげることにした。

「無駄ですよ。今あなた方が降下された部隊のおかげで、あなた方の乗る船の位置を把握しましたのでハッキングしました」
『は?』
「降下させるので、覚悟しておいてくださいね。うちの守護神——今ここに来ている戦神はあなたみたいなタイプの為政者は大嫌いなので、楽に殺してはもらえませんよ。楽に死にたいのなら、投降してコルテレの民衆と貴族たちにお願いしてくださいね」

 笑顔で二択を突きつける。
 セラフィは俺の提案にカッと激昂した顔を見せた。
 プライドの塊らしいから、こういう言い方をしたら確実にキレてくると思ったよ。

「あれあれぇ、王子サマってば投降を許しちゃうのぉ?」
「……なんでいるの?」

 背中に気配。
 外ハネの黒い髪がいつもより長くなって、膝ほどまである。
 背丈も縮んでいるし、服も露出が高い。
 声もかん高くなっていて、一瞬誰かわからなかった。
 化粧も施しているから妖艶さに磨きがかかっている。
 俺よりも小さく、肩幅も狭まり、中性的になってるんだがどうしたこれ。
 擬態? 女の子になってる? な、なんで?

「デュレオ、どういうつもりだ?」
「船を降ろしたら俺が先行して入ってあげるよ? 密室は俺の得意分野だから」
「いや、いいよ。絶対やりすぎるじゃん」
「えー? そう? それにしてもが皇女? ケバいおばさんじゃん」
『っ——!』

 俺の背に隠れていたデュレオが一歩、前へ出る。
 見た目年齢十代半ば。
 髪の色と似た黒いクロスホルターネックのエーラインドレス。
 ぱっと見の年齢では考えられない色気。
 おかしい、ナルミさんと同い年くらいなのにこの色気の差……ナルミさんに言ったら殺されそうだから絶対言えないけど。
 聴衆の騒めき——主に男の——がヤバい。
 目の色が完全に下心の含まれたそれじゃん。

『船の制御が利きません! 降下開始しています!』
『なんとかせぬか! この役立たずども! 妾はセドルコ帝国皇帝ぞ! 地上を支配するのはこの妾! 貴様らもそのために妾と共にいるのであろう!? 泣き言など言うでないわ!』

 怖。

「……あー、こういう女ホント嫌い。ズタボロにして生きてることを後悔させてやりたーい」

 目が赤い光を帯びている。
 デュレオが珍しくガチでイラついてる……どうしたんだろう。
 ラウトも絶対殺したい系の皇女だから、セドルコの貴族と民に任せるつもりだったけど。

「やだーん、こわ~い。年増のヒステリック需要ないでしょ~。王子サマ~、あんなの撃墜しちゃおうよぉ~」

 キッッッッチィ~~~~~~!
 お前も十分キッツイわー!
 なにやってんねんこの邪神!

『キッサマ……! この無礼者! 妾を誰だと思うておる! 妾こそセラフィ・セドルコ! セドルコ帝国第一皇女ぞ!?』
「アッハ♡ あたくし? あたくしはデュレオ・ビドロ! ルオートニス守護神の一柱ヒトリ。芸術と美の神にして、破滅の邪神よ」

 ドレスのスカートを翻して、モニターへ己の美貌を見せつけるデュレオ。
 ああ……貴賓席からスヴィア嬢とマロヌ姫の驚愕と圧を感じる。
 振り返るのが怖すぎて無理。
 俺もなにがなにやらわからないので答えることはできないです。

「なんで女装?」
「あの手の女のプライドをぐちゃぐちゃにするのには、自分より可憐で美しい男を見せつけてやると効果的なの」
「あ、ハイ。そうでしたか」

 セラフィを煽ることに全力を注いでおられるんですね。
 了解しました。
 もう勝手にしてくださーい。

「うちの王子サマに挑む前から制圧されてて、ホントに無能晒してだっさ~い。それなのによくこんなに偉そうに名乗れるねぇ? 恥知らずって言葉知ってるぅ? 皇族らしく自害でもしてみればまだ潔いものを、自国を裏切って貶めてなにがしたいの? 生き汚いなんてもんじゃないねぇ? さすがは売国奴。やることが汚~い」
『ぬ、抜かせ! 妾は国を取り戻しにきたのだ!』
「それにしては戦力がこれっぽっちっていうのは笑えるねぇ。宇宙側から引き出せたのがこの程度だなんて、重要性がその程度って言われてるようなものじゃない?」

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