打倒! ドMヒロインVS悪役令嬢なわたくしの奮闘記ですわ!

古森きり

文字の大きさ
33 / 42

第33話ですわ!

しおりを挟む


「エイラン様は向上心がおありですのね。素晴らしいですわ」
「あ、ありがとう……。でも良かった~、覚えられるなら学院に編入して正解だったよ」
「そうですわね。でも、学院に編入するのも条件が多くて大変だったんではなくて?」
「ああうん。ひたすらこの国のNPCの依頼をこなしまくって『名声』上げたよね……」
「なるほど、それでわたくしのお父様から信頼を得て編入に…………」
「そうそう、なんか一番偉い貴族の人に認められて…………え? あれキャロラインさんのお父さんだったの? あ、そういえば『インヴァー』って名乗ってた気がする」
「っ!」

 …………『居る』……!
 ハイル様はあのように仰っていましたし、わたくしも自宅でお会いした事はありませんがわたくしの『お父様NPC』は『存在する』!
 動き回るNPCではないだけの事……!
 ハイル様に『NPCとしての矜持』を語ってしまいましたから、今更ストーリー通りになるのは嫌とも言えませんし、やはりハイル様の為にもストーリー通りにするのが良いという考えは変わらないのですが……。
 ストーリーが繰り返すのであればハイル様がわたくしから自由になる事はあり得ないですし、ではどうしたらハイル様をわたくしから自由にして差し上げる事ができるのでしょうか?
 うーん…………?

「その上、実はちゃんとわたくしのお父様のNPCがいたのであれば…………はっ!」
「ど、どうしたの!?」
「結局新しいプレイヤーさんが来て繰り返すのであればわたくしのこの努力は——っ!」
「キャロラインさん!?」

 痛……!
 頭が…………え、ええと…………ん?

「…………えーと……なんの話を……」
「え?」
「そうです! 卒業イベントです!」
「え?」

 わたくしの晴れ舞台ですから、卒業パーティーは成功させなければなりません。
『魔法付加』と『魔法付与』のスキルをエルミーさんが覚えればパーティーの条件が揃いますわ。
 わたくしは当日、エルミーさんのドレスに飲み物をこぼしてダメにしてしまう虐めを行いますのよ。
 そしてそれを皮切りにハイル様よりわたくしへの断罪が始まるのですわ!

「こうしてはいられませんわね。ドレスを選ばなくては!」
「え? 待ってキャロラインさん。今その話ししてなかったよ?」
「え?」

 そうでしたっけ?
 ではなんのお話をしていたのでしたか?
 見上げるとずいぶんと変なお顔をされましたわ。

「…………時々……、キャロラインさんってそういう事あったけど……」
「え? そうですか? ……ああ、確かに時折頭痛のような症状が……」
「もしかして、それゲーム補正?」
「…………」

 頭痛が、ゲーム補正?
 頭をさすりますが、もう変な症状はありません。
 けれど、そう……今も……確かに……ぼんやりと霧かかったような感覚は……。

「…………慣れてしまっていましたわ……」
「っ……」

 顔をしかめるエイラン様。
 確かに……ちょっとさすがのわたくしもゾッと致しましたわね。
 この頭痛らしき症状がゲーム補正。
 わたくしをNPCとしての役割に抑えつける為のものなのだとしたら……。
 いえ、けれど……それは当たり前の事。
 わたくしNPCとしてストーリー通りに物事を進める義務がある事ぐらい分かっておりますわ。

「ですが、条件がよく分かりませんわね……どうして補正されなければいけないのでしょうか?」

 わたくしストーリー通りに事を進める気満々ですのに!
 なんだか酷いですわ!

「そうだね。……どちらにしても、あまり良い気持ちにはならない」
「……エイラン様……」

 NPCの為にそこまで真剣に怒る必要などないのに。
 お優しいのですわね。

「んもぉ! おっそーい、エイラン! どこほっつき歩いてんのおぉ!」
「そうだな。今日のところはこのまま解散しよう。明日もログインしていれば学院に顔を出すだろう」

 あ、噴水の方で動きがありましたわ。
 わたくしとエイラン様は物陰からこっそりとお二人の様子を伺います……が、やはり思った通り甘い雰囲気は微塵もありませんわ。
 正直エルミーさんとハイル様が甘い空気を醸し出して明日また会う約束をするシーンを見るのは……こう、なんと言いますか、複雑極まりないのですけれど。
 ええと、ヒロインがネカマさん的な意味で。

「まずい、エルミーたちが痺れを切らしたな。キャロラインさんはこのまま自宅に帰って待機してて。オレ、ハイル王子に兵の貸し出しを依頼してそのまま『花の森』にプレイヤーたちを探しに行くから」
「まあ、わたくしも参りますわ!」
「ダメだよ、危ない」
「行きますわ! わたくしのお友達を壊した理由を問いたださなければ、気が治りません!」
「ううぅ……」

 というわけでハイル様たちと合流する事に致しましたわ!
 エイランさんについていき、二人に声を……。

「キャリー!?」
「ひゃーーーー! ひゃーーーー! キャァァリィーたーーーーん!」
「ひっ!?」






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

コワモテの悪役令嬢に転生した ~ざまあ回避のため、今後は奉仕の精神で生きて参ります~

千堂みくま
恋愛
婚約を6回も断られ、侍女に八つ当たりしてからフテ寝した侯爵令嬢ルシーフェルは、不思議な夢で前世の自分が日本人だったと思い出す。ここ、ゲームの世界だ! しかもコワモテの悪役令嬢って最悪! 見た目の悪さゆえに性格が捻じ曲がったルシーはヒロインに嫌がらせをし、最後に処刑され侯爵家も没落してしまう運命で――よし、今から家族のためにいい子になろう。徳を積んで体から後光が溢れるまで、世のため人のために尽くす所存です! 目指すはざまあ回避。ヒロインと攻略対象は勝手に恋愛するがいい。私は知らん。しかしコワモテを改善しようとするうちに、現実は思わぬ方向へ進みだす。公爵家の次男と知り合いになったり、王太子にからまれたり。ルシーは果たして、平穏な学園生活を送れるのか!?――という、ほとんどギャグのお話です。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

悪役令嬢に転生かと思ったら違ったので定食屋開いたら第一王子が常連に名乗りを上げてきた

咲桜りおな
恋愛
 サズレア王国第二王子のクリス殿下から婚約解消をされたアリエッタ・ネリネは、前世の記憶持ちの侯爵令嬢。王子の婚約者で侯爵令嬢……という自身の状況からここが乙女ゲームか小説の中で、悪役令嬢に転生したのかと思ったけど、どうやらヒロインも見当たらないし違ったみたい。  好きでも嫌いでも無かった第二王子との婚約も破棄されて、面倒な王子妃にならなくて済んだと喜ぶアリエッタ。我が侯爵家もお姉様が婿養子を貰って継ぐ事は決まっている。本来なら新たに婚約者を用意されてしまうところだが、傷心の振り(?)をしたら暫くは自由にして良いと許可を貰っちゃった。  それならと侯爵家の事業の手伝いと称して前世で好きだった料理をしたくて、王都で小さな定食屋をオープンしてみたら何故か初日から第一王子が来客? お店も大繁盛で、いつの間にか元婚約者だった第二王子まで来る様になっちゃった。まさかの王家御用達のお店になりそうで、ちょっと困ってます。 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆ ※料理に関しては家庭料理を作るのが好きな素人ですので、厳しい突っ込みはご遠慮いただけると助かります。 そしてイチャラブが甘いです。砂糖吐くというより、砂糖垂れ流しです(笑) 本編は完結しています。時々、番外編を追加更新あり。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...