『ゴツすぎる』と婚約破棄されて追放されたけど、夢だった北の大地で楽しくやってます!〜故郷は剣聖の私なしにどうやって災厄魔物から国を守るんだろ

古森きり

文字の大きさ
36 / 46

五大英雄の初接触


『お願いいたします。どうかクラッツォ王国にお戻りください。わたくしの守りの力では、巨大な厄災魔物と戦えないのです。今こうしている間にも結界が破壊されそうで……』
「ん? どういうことだ?」

 詳しい話を聞くところによると、私がクラッツォ王国を去った翌日に巨大な厄災魔物が現れた。
 巨大というと先程戦った三メートルほどの厄災魔物を想像したが、それは小型に部類されるらしい。
 クラッツォ王国に現れた魔物は三十メートル以上。
 しかも、それがなんと十体現れたという。
 十体! どこからそんな数の厄災魔物が?
 聞いても当然わからない。
 少なくとも王都以外の町は厄災魔物によって蹂躙され続けている。
 すでに数百人の犠牲が出ている――と。

「なぜ……なぜ、あなたがいながらそんな……」
『わたくしの力では、王都を守ることで精一杯なのです。王都以外の村や町まで赴き、結界を張ることはできません』
「あなたが『できない』などと言ったら、クラッツォ王国の民はどうしたらいいのです!? 私は、あなたが……同じ五大英雄の“聖女”であるあなたがいるからと思って……!」
『わたくしも救えるものなら救いたく思っております。今、こうしている間にも……。ですが、王都を襲う四体の厄災魔物を寄せつけないよう、結界を維持するだけで精一杯なのです。お願いいたします、剣聖アリアリット様、助けてくださいませ……!』

 手を強く握り締める。
 そんな……そんな……。
 では、もう一週間以上クラッツォ王国の王都は厄災魔物に襲われ続けている?
 王都以外の町や村は……?
 王都が聖女の結界により閉鎖状態のため、被害状況は不明。
 連絡鳥の報告では、大きな町のある領地はだいたい襲われている。
 王都だけが、間違いなく無事だと。
 だがそれでも籠城を想定していないかった王都は食糧不足が如実になってきている。

「教会の上層部はなにをしているのだ?」
『きょ、教会の上層部は……いつの間にか誰もいなくなっておりまして……』
『おい、どういうことだ?』

 新たな男の声。
 その声の主は槍聖そうせい、アンジュ・ロッソ。
 さらにその声に反応して『もう一度詳しく話を聞きたい』、『先程の話は本当ということ?』と他の二人の――賢者と弓聖きゅうせいの声も聞こえてきた。
 よかった、他の五大英雄にもちゃんと私の声は届いていたんだな。

「やはり教会はなにかおかしい。私がアイストロフィに来てから聞いた話も皆に共有する」

 教会は長い時間をかけて少しずつ秘匿する情報を増やしていった疑惑があること。
 封印核への聖魔力提供。
 封印核の位置。
 そして各地の封印核を守るはずの結界、永久凍国土ブリザードの封印紋章のこと。
 五大英雄が持つ紋章の力――聖武具を生成する力のこと。

『知らねぇ……! 教会はそんなにも多くのことを秘匿しているってのか!?』
『落ち着きなさい。ひとまず剣聖アリアリットの言うことを信じるとして……紋章から聖武具を生成できるかどうかや、封印核に聖魔力を注ぐ必要があるということはこちらでも試してみることができる。そして聖女シュリアス、あなたの状況が聞き的状態であることは理解した。我が国から応援を送るよう、王に進言してみよう』
『国を通したやり取りじゃあ、いつになるかわからないんじゃないんですか?』
『そう言われても我らは国に所属する身。自由には動けぬ。まして、教会が敵の可能性があるのでは、より慎重に動かねばならない』

 賢者の言うことはごもっともといえる。
 私もそれについては同意見。
 重要な機密を葬られては、我らの力がさらに削がれてしまうかもしれない。
 しかし、クラッツォ王国の状況はちゃんと確認して対処を考えなければならないだろう。
 聖女が嘘をつくとは思えないが、私はクラッツォ王国に追放された身。
 迂闊に助けに行くわけには……だが……。

『そんな……。もう、わたくし一人ではどうすることもできないのです。どなたかどうかお助けください』
『聖女よ。あなたを疑っているわけではないのです。ともかく、剣聖の言う通り紋章から聖武具を生成してみればよいのでは? どうやら円環や鎧は聖魔力の消費が激しいようだから、聖杖だけでも』
『そうだな。とりあえず聖杖だけでもかなりの強化になるんだろう? 試してみろよ』
『は、はい……』

 聖女の力ない声。
 聖杖があっても国をすべて覆って守ることはできないのではないだろう。
 今こうしている間にも、人々が厄災魔物によって引き起こされた災いで亡くなっている……。

『剣聖アリアリット』
「あ……」
『またなにかわかったら情報を共有してほしい。教会は疑ってかかるべきなのか、私の方でも信じてみる。まずは永久凍国土ブリザードの封印核への聖魔力供給を優先して、クラッツォ王国の封印核を外部から遮断し守るように。永久凍国土ブリザードの封印紋章が正しく機能すれば、聖女が倒されてもなんとかなるだろう』
『け、賢者様……我が国を……クラッツォ王国を、見捨てられるのですか……!?』
『合理的に考えた結果である。最悪は厄災魔王の封印が一つでも解けること。厄災魔物にすら手こずる状況の我らが、勇者がいた初代たちですら封印することしかできなかった魔王を、勇者もない我らが倒したり再び封印できるはずもないのだから』

 全員の沈黙が流れた。
 賢者は最悪の回避のみを提示してきたのだ、仮にも英雄と呼ばれる我らが言い返すこともできないほどの正論。
 そうだな……申し訳ないが、今はそれしか……ない。

感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

夫に用無しと捨てられたので薬師になって幸せになります。

光子
恋愛
この世界には、魔力病という、まだ治療法の見つかっていない未知の病が存在する。私の両親も、義理の母親も、その病によって亡くなった。 最後まで私の幸せを祈って死んで行った家族のために、私は絶対、幸せになってみせる。 たとえ、離婚した元夫であるクレオパス子爵が、市民に落ち、幸せに暮らしている私を連れ戻そうとしていても、私は、あんな地獄になんか戻らない。 地獄に連れ戻されそうになった私を救ってくれた、同じ薬師であるフォルク様と一緒に、私はいつか必ず、魔力病を治す薬を作ってみせる。 天国から見守っているお義母様達に、いつか立派な薬師になった姿を見てもらうの。そうしたら、きっと、私のことを褒めてくれるよね。自慢の娘だって、思ってくれるよね―――― 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)