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婚約話【後編】
しおりを挟むエリザ様?
また、なにを言い出されるの?
な、なんて?
アーク様に、わたくしの仮の婚約者に……え? アーク様が!? は、はぁぁああぁ!?
「大丈夫、お試し婚約者期間って事で頼めばオーケーしてくれるわよ! 彼も婚約者候補が山のように押し寄せて困ってたから! きっと話に乗ってくれるわ! 待ってて、今連れてくる!」
「え!? は!? エ、エリザベス様ぁ!?」
「は、母上!? ちょっ!」
ど、怒涛の展開が過ぎます!
バタバタと出て行ったと思ったら追う間もなく扉が閉まる。
いや、わたくしはそんなに咄嗟に動けないので、追ったのはミリアム様とルイナですが。
しかもものの五分で本当にアーク様を連れてきました!
ミリアム様は銀髪青眼ですが、アーク様は金髪碧眼。
二人並ぶとお顔立ちからしていかにもご兄弟!
とても異母兄弟には見えません……が! そうではなくて!
「僕の仮の婚約者になってくださるご令嬢とはあなたですか!」
くっ、食い気味ぃ!?
「実はかくかくしかじかで、ミリアムと婚約して欲しいのだけれど、学園での成績で王太子が決まるでしょう? だからそれまでの間、クリスティアが他の誰かに取られないように守って欲しいのです」
「なるほど! そして僕は三桁のお見合いから逃れられるのですね! とても合理的です!」
そ、そうですか?
いや、さ、三桁……。な、なるほど……?
「ミリアムはクリスティアにケーキを作れるし、クリスティアはアーク様の婚約者仮、としてお城に住んでも問題なくなります!」
そ、そうかなぁ!?
平然と言ってるけど、そんな事許されるの!?
「母上天才……!」
「僕も母上にお願いしてきます! クリスティア嬢もそれでよいのですよね!」
「は、話がまとまるのが早過ぎて、混乱しております……! お、王子殿下方は、それでよろしいのですか……!?」
「私は料理が作れるし!」
「僕は三桁のお見合いから逃れられます! ……最近お見合いのせいで勉強どころか睡眠時間も食事の時間も削られていたので万々歳です」
アーク様、お見合いが死活問題になってた……!
「…………しかし、わたくしがお城に住む話はさすがに無理があるのでは……」
「大丈夫! 陛下にはわたくしからお願いします!」
「私からも父上に頼んでやる!」
「もちろん、僕からもお願いしますよ! 母上も僕の婚約者ならば文句ないでしょう!」
「え、えぇ……」
あ、あれぇ、なんなのこの結束力……。
ミリアム様とアーク様は、敵対関係にあるはずだけど……。
「ミリアム様とアーク様は、仲が悪いわけではないんですね……?」
「「え? まあ、喧嘩する理由ないし?」」
声まで揃って仲良し……!?
「そもそも身分どうとかって大人の事情じゃないですか。将来的には重要になるのかもしれませんけど、今の時点ではあんまり興味ないですよね。それに、王位とか面倒くさそうで僕は遠慮したいです。母上のあの権力にしがみつく姿とか……醜い!」
「ええっ……」
十歳児、素直過ぎます……!?
「僕の母上もエリザベス様なら良かったのに~。父上が正妃をエリザベス様に据えた理由がよく分かりますよー」
「もー、そんな事ジーン様に言ってはいけませんわよ? アーク様」
「言いませんよー。千倍になって返ってくるんですから」
……苦労なさってるんですね。
それはなんとなく伝わりました。
「という事だ。……えっと、その、学園で私が主席で卒業するから、それまで待っていてくれるか……? クリスティア……」
「ミリアム様……」
わたくしが座るソファーの前に跪き、わたくしの手を取って見上げてくるミリアム様。
ボッ、と顔が熱くなります。
わたくし……どうしたのでしょう?
胸がぽやぽやとします。
ミリアム様こそ、こんなガリガリの偏食令嬢なんかで、良いのでしょうか?
「は、はい……お待ちしております……」
「!」
そんな返事を、感情のままにしてしまいました。
でも、父は『いずれ王になる王子の婚約者』にわたくしを据えたかったはず。
ならば、ミリアム様が主席卒業し、わたくしを正規の婚約者に選んでくださる日が来たら……その時はお父様も許してくださるはずですよね?
なにより、これで……。
「ミリアム様のケーキを、これで毎日食べられますのね……!」
「え? …………。え、あ、ああ! そうだな! たくさん食べろ!」
「楽しみですわ!」
アーク様の婚約者(仮)になり、お城でミリアム様のケーキを毎日食べられる事になりました!
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