腹ペコ令嬢は満腹をご所望です【連載版】

古森きり

文字の大きさ
23 / 37

着せ替え人形ですわー

しおりを挟む

 ——……一週間後。

「まあ、陛下のお誕生祭に着るドレスですか!」
「ええ、どうかしら?」
「お二人とも素敵ですわ!」

 本日はお城に里帰り中です。
 実家があるのにお城に里帰り……でもわたくしの中ではこんな感じなんですわよねぇ。
 まあ、それはそうと、陛下のお誕生日……誕生祭が明後日に控えております。
 多くの国の王侯貴族が招かれ、お城で大々的なパーティーが行われるわけでして!
 本日、王妃であるエリザベス様と側室であるジーン様は、明後日のためにドレスの試着をしておいでですわ。
 お二人ともとてもゴージャスで、しかしまったく『着られてる』感がなく……ええ、まさに着こなしておいでですわ!

「クリスティアお嬢様」
「あ、そうでしたわ。あの、あの、エリザベス様とジーン様にご相談したい事がありますの……」
「まあ、なあに? なんでも相談して?」
「珍しいわね、あなたがそんなに神妙な面持ちで……。そんな重大な事ならちゃんと相談なさい」
「ありがとうございます、実は……」

 ルイナが二着のドレスを持ってくる。
 それに王妃お二人は目を丸くした。
 ええ、そうなのです……。

「ミリアムからはピンクのドレス、アークからは青いドレスを頂きましたの……。どちらを着ていけば良いのか分かりません……」
「「あら……」」

 一応二人の婚約者という事になっておりますので!
 どちらか片方だけというのは、さすがに……!
 かといって両方着る事は出来ません。
 当日はのちの王太子殿下の婚約者として、パーティーが終わるまで化粧直しくらいしか出来ないでしょう。
 ええ、パーティーとは政務です。
 王太子の座は卒業まで定まりませんが、わたくしの場合は二人しかいない両王子の婚約者なので……。
 ああ、お母様に強要され続けた耐久お茶会と耐久夜会の悪夢が蘇りそうですわ。
 でも、これもいずれ王妃となる者の務め。
 なにより、殿下たちのお役に立ちたい。
 でも……実はもう一つ相談したい事がありますの。

「それから、パーティー中になにも食べられないとなると……わたくし、お腹が鳴り響いてしまいそうで不安で不安で!」
「「あ、ああ……」」

 耐えられるのでしょうか? わたくしが。
 数時間のパーティー、立ちっぱなしで無限とも思えるご挨拶地獄。
 脳のカロリーを普段使わない隅々まで酷使して、どこどこの国の誰々様をひたすら覚えてあれそれ考えなければならない……それが政務パーティー
 そんな体力的にも脳みそカロリー的にもお腹の空く状況でわたくしのお腹は空腹を訴える事なく大人しくしていてくださるのでしょうか!?
 不安です! 無理な気がして仕方がございません! イケる気がしないのです! まして、ドレスですし!
 なにも食べずに数時間なんて無理です~!

「あら、それならいい考えがあるわよ」
「え! 本当ですかエリザ様!」
「ええ、当日はこうしたらいいわ——……」

 と、エリザ様が提案した計画は……ふむふむ、なるほど!
 それならすべてうまくいきそうですわ!

「それと、例の件もロンディウヘッド家の方々がいらしたら片付けてしまいますわよ」
「あ、はい。あ、そうでしたわ。その時にお姉様の件もお力添え頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
「ああ、前に言っていた件ね。もちろん構わないわ~」
「ええ、メアリ様の件はアークから全部わたくしたちにも伝えてもらっていますから。スパーンと綺麗にやっておしまいなさい」
「ありがとうございます!」

 では、当日にすべて片付けてしまいましょう。
 エリザ様の案ならば、問題なさそうです。
 順序立てて綺麗にあらゆる方面を片付けてしまえるなんて、さすが王妃様方ですわ。
 わたくしもお二人のように立派に物事を片付けられるようになりたいものです!

「では次の問題は装飾品ね」
「え?」
「そうね、着替えて両方着るなら髪飾りやネックレスも両方に合うものを選ばなければ」
「え」
「今日はそれを選びましょうか。特に靴は難しいから、靴だけは両方に添えて持っておいた方がいいかもしれませんわね」
「そうね、ジーン。わたくしも賛成」
「えっ」

 にこり。
 お二人から微笑まれて、背中がぞわりとしました。
 あ、これは……結局着せ替え人形になって地獄を見るアレ的な……?

「試着室へ行きましょうね、クリスティア」
「さあ、これも次期王妃としての仕事ですわよ!」
「ふ、ふぁーい……」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

華やかな異世界公爵令嬢?――と思ったら地味で前世と変わらないブラックでした。 ~忠誠より確かな契約で異世界働き方改革ですわ~』

ふわふわ
恋愛
華やかなドレス。きらびやかな舞踏会。 公爵令嬢として転生した私は、ようやく優雅な人生を手に入れた―― ……はずでしたのに。 実態は、書類の山、曖昧な命令、責任の押し付け合い。 忠誠の名のもとに搾取される領地運営。 前世のブラック企業と、何も変わりませんでしたわ。 ならば。 忠誠ではなく契約を。 曖昧な命令ではなく明文化を。 感情論ではなく、再評価条項を。 「お父様、お手伝いするにあたり契約を結びましょう」 公爵家との契約から始まった小さな改革は、やがて王家を巻き込み、地方貴族を動かし、王国全体の制度を揺るがしていく――。 透明化。共有化。成果の可視化。 忠誠より確かな契約で、異世界働き方改革ですわ。 これは、玉座を奪う物語ではありません。 国家を“回る構造”に変える、公爵令嬢の改革譚。 そして最後に選ばれるのは――契約ではなく、覚悟。 ---

殿下の御心のままに。

cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。 アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。 「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。 激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。 身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。 その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。 「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」 ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。 ※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。 ※シリアスな話っぽいですが気のせいです。 ※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください  (基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません) ※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

処理中です...