腹ペコ令嬢は満腹をご所望です【連載版】

古森きり

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陛下の誕生日パーティー開始、前!

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 二日後。
 陛下のお誕生日です!
 実は昼からパーティーが始まるので、朝に家族だけで陛下の誕生日パーティープチ! を開催しておりました。
 そして光栄な事に、わたくしもその朝食兼誕生日パーティープチに呼んで頂けております。
 今年で五年目ですわ。

「陛下、お誕生日おめでとうございます!」
「おお、クリスティア。ありがとう」

 この国の国王陛下、ライオス様。
 ライオス様は基本的に「現行制度に捉われず、より幅広い考え方や新しいやり方を模索して今までにない新しい国作り」を掲げておられる。
 その考え方は「世襲制」もなくてもよくない? という貴族から反発を受けそうなものから「国王の座も優秀な奴がやればいいと思うから、別に世襲制じゃなくてもよくない?」という貴族が大喜びしそうなものまで様々。
 わたくしのお父様は保守派……まあ、これまで同様のお堅い縦社会サイコー! みたいなタイプなわけなのですが、陛下のこの、「国王の座も優秀な奴がやればいいと思うから、別に世襲制じゃなくてもよくない?」だけは超絶大賛成……「自分がやります喜んで!」というアレな方なのでわたくしをミリアムたちの婚約者にさせようと凄かったわけですね。
 もちろん現行制度を変えるのはとても難しい。
 保守派の中でも、父のような『王座世襲制反対派』と『王座世襲制推奨派』に分かれている始末ですから。
 ちなみにわたくしは『推奨派』ですわ。
 ミリアムたちの婚約者なので推し推しですわ。
 父だって、自分が本当に国王になれるなんて思ってませんでしょうし。

「そういえば今夜のパーティーでクリスティアがなんぞ余興をやってくれると聞いたぞ」
「はい! 最近学園で流行っております『大食い勝負』をご覧に入れたいと思いますわ」
((別に流行ってはいないんだけどね……))
「おお! それは面白いものが流行っておるのだかな! しかもそなたがやるのか……実に興味深い。いつも思うがそなたの細身の一体どこに、その量が入るのであろうなぁ?」
((本当になぁ……))
「わたくしにも分かりません!」
「ははは! そうだなぁ」

 エリザ様とジーン様も「ほほほ」と上品に笑う。
 ミリアムとアークもニコニコしていて、やっぱり陛下がご一緒の朝ご飯は楽しいですわね。
 それにやっぱりみんなで食べるご飯はとても美味しいです!

「では、ドレス楽しみにしていますね」
「最初は私が贈ったドレスを着てくれるんだろう?」
「はい! わたくしも両方着られそうで嬉しいです!」

 食後、ミリアムとアークがお部屋まで送ってくださいます。
 一昨日と昨日散々試着してチェックはしましたが、やはり本番当日はドキドキしてしまいますわね。

「ああ、早くたくさん食べたいですわ……今日のお夕飯は照り焼きステーキが出るのですわよね……」
「お、お嬢様……まずはお着替えを」
「はぁい……」

 いざ戦闘服にお着替えですわ。
 コルセットを着けて、ドレスを纏い、お化粧をして……。

「メアリ様は決闘を申し込んでくださるのでしょうか? 陛下の前でお断りは出来ないとは、思いますけれど……」
「お姉様にとっても旨味はあると思いますわよ」

 ……少なくとも今の旦那様との事で悩む必要はなくなるはずです。
 髪を整えてもらい、鏡を向き直る。
 サイドに結い上げられたお団子から、残りの髪が下されて肩に垂れた髪型。
 胸の開いたAラインのピンクのドレスは、フリルが斜めにつけられてボリュームがある。
 ヴィヴィズ王国はほんのりと前世でいうアラブっぽいところが入っているから、他国の方が訪れるような公の場では、婚約の決まっている未婚の女性は肌を全て隠さなければならないのです。
 なので、開いた胸の部分より上にはボレロを纏い、頭には薄いヴェールを被ります。
 手袋をはめて、いざ~。

「……見えづらいですわね。なんか暑いですし……」
「我慢してくださいませ」

 頭わ覆うヴェールは半透明。せっかく整えた髪が崩れそうですわ。

「クリス」
「ミリアム、アーク! まあ、お二人ともとても素敵ですわ~」

 お部屋を出ると二人が待っていてくださいました。
 お二人も正装。
 やっぱりそこはかとないアラブっぽい衣装ですわ。
 なんというか裾が長いのです。
 普段の……学園の制服などは洋風なのに、今更ですがここはやっぱり異世界なのですわねぇ、と思ってしまいますわ。

「……」

 ふと、そういえばわたくしはどうしてこの世界に転生したのだろうか、と疑問が浮かぶ。
 前世異世界なら、転生先が異世界なのはなぜ?

「ではそろそろ行こうか」
「お客様の出迎えをしなければなりませんからね。……クリス、疲れたらちゃんと言ってくださいよ?」
「あ、はい!」

 今考えても仕方ありませんわね。
 ともかく今日を……このあとの事をすべて乗り切らなければ。
 今日はイベント盛り沢山ですもの! 頑張りますわよ~!

「あまり張り切りすぎて明日倒れないようにな? 最近はだいぶ安定しているけど、クリスはよく熱を出すんだから」
「だ、大丈夫ですわよ! 熱を出すのは小さな頃の話ですわっ」
「残念ながら体調に関して僕とミリアムは一切クリスの事を信用していませんので」
「ひどい!」

 会場は夕方からなのだが、お昼時ともなればすでに会場は各国の偉い方々で埋まり始める。
 陛下は時間通りの登場ですので、それまでの間わたくしたちがお客様に『顔見せ』の意味も込めてご挨拶を致します。
 一国につき最低でもお二人。
 そして、この国の貴族たち。

「……それにしても、妻の共有とは意外ですね」
「なにも一人にせずとも、側室を五人でも十人でも娶られればよいでしょうに」
「ロンディウヘッド家に権力が集中するのはいかがなものかと思うのですがねぇ」

 という「うちの娘ももらってくれ」主張に笑顔で対応致します。
 わたくしが横にいるのに言うのですから、貴族の皆様は顔の面が鉄板のようですわね!

「ご無沙汰しております、ミリアム殿下、アーク殿下」
「「「!」」」

 その声を聞いた時、ゾワリと背中に薄寒いものが駆け巡った。
 五年ぶりです。
 でも、困りましたね……笑顔が保てません……顔が、上げられません。
 体が震えて……。

「!」

 ミリアムが手を握ってくれる。
 アークがわたくしの前へと立って、視界を隠してくる。

「ミリアム……アーク……」

 二人が守ってくださっている。
 そう思ったら、少し、力が抜けた。

「お久しぶりです、ロンディウヘッド侯爵」

 アークが対応してくれるので、わたくしはその間にゆっくりと顔を上げる。
 負けるわけにはいかないのです。
 だってこれは、わたくしが、自分自身で乗り越えなければならない事なのですから。
 父と、向き合う。

「!」
「お久しぶりですわ」

 お母様……! それに、お兄様まで……。

「っ」

 体がまた震えてしまう。
 わたくし、こんなに……まだ、こんなに囚われたままでしたのね……。
 情けない……!

「我が娘を王子殿下お二人の婚約者に選んで頂き、ありがとうございます。直接御礼を申し上げる機会に恵まれた事にも感謝を致しますよ」
「お気になさらず。クリスはとても優秀ですから、当然かと」
「まあ、アーク殿下にそのようにおっしゃって頂けて、教育してきた甲斐がありますわ」

 ……教育。あれは教育だっただろうか?
 毎日、毎晩、連れ回され……確かにお茶会のマナーや夜会のルール、挨拶の仕方はマスター出来た気は致しますけれど……。
 わたくしの背があまり大きくならないのは、幼少期の睡眠の質が非常に悪かったからではないかと言われておりますのよ。
 それは主にお母様の連れ回しが原因なのですがっ!
 ……とは、言えませんわよね。場所的に。

「ご機嫌よう、ロンディウヘッド侯爵、ロンディウヘッド夫人」
「ご無沙汰しておりますわ」
「あら……」
「これはこれはお妃様方。ご無沙汰しております」

 エリザ様とジーン様がアーク様の隣に立つ。
 わたくしを守るように……。
 でも、なんというか……! 圧が! 圧がものすごいですわ!
 この場の空気が! 誰がどう見てもまずい!
 明らかに近くにいた方も数歩下がっておりますわよ!?

「ちょうど良かったわ。ご夫婦揃って来られた時にご相談しようと思っていた事がありますの。すでに陛下にも許可を頂いているのですが……」
「あら、なにかしら?」

 ……特にジーン様とお母様の空気がバチバチしております……!
 気温が下がってません?
 わたくしうっすら寒気がするのですがっ。
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