495 / 553
高級ホテル
しおりを挟む十月十四日、ホテル入り。
朝からスタッフに前夜祭ステージの流れを確認。
さすがに国際大会のリハーサル。
淳たちが経験したことのないほどの、しっかりとしたリハーサルであった。
明日は開会式のリハーサルらしく、前夜祭に参加するアイドルも見学OK。
ただし、撮影したり写真などをSNSで投稿するのは絶対に不可。
情報漏洩として訴えられる可能性もある、と重々に注意された。
まあ、当然だろう。
せっかくの国際大会なのだ。
スポンサーの看板の数もテレビでしか見たことのない数。
日本企業だけでなく、海外企業の看板も多い。
なんというか、会場を見て改めて「これ世界規模の大会なんだ」と実感した。
会場は有名な都内で一番大きな多目的ドーム。
各会場でゲームジャンルごとの世界大会が行われ、一部の会場では有名作品の新作のエキシビジョンマッチが行われる。
午前はVR格闘ゲーム。午後はVRFPS。
鏡音は格闘ゲームの方に出るが、初日のエキシビジョンマッチ午後の部のVRFPSゲームのプレイヤーでもあるそうな。
元々FPSプレイヤーとはいえ、格ゲーとアイドルに加えてそちらの練習もしていたらしいのが恐ろしい。
そして、やはりリハーサルに来るのは超有名アイドル、シンガーソングライター、パフォーマーの面々。
想像以上に錚々たる名前が並び、体が縮こまりそうなところを背筋を伸ばす。
こんな時こそ背を伸ばせ、というのは神野栄治の言。
それに、どうせ星光騎士団の出番はオープニング後の最初の一曲。
歌う曲も星光騎士団が初代から歌い繋いできた、伝統のファーストソング『Starlight』。
現代風にアレンジされている、淳が星光騎士団団長の――17代目専用『Starlight』だ。
そして――。
「ホテルがすごい」
「これ、学院側が取ってくれたホテルなんだよね? えええ? 今までこんなに豪華なホテルだったことあるぅ? ないよね? ええー? やばぁ……」
「な、なんだか緊張してきたんですけどおおおおっ」
「さすがにこのレベルのホテルは僕も初めてかもぉ~。ごたちゃーーーん」
「なぁにー?」
ホテルのロビーに入った瞬間から、広さと装飾品の豪華さに圧倒される学生たち。
その中でもこういう一流ホテルに慣れている後藤。
「ホテルの泊まり方は一流も二流も三流も同じだよ」とか言いながら仕方なさそうにSDを抱きながらカウンターで対応の仕方を教えてくれる。
教えてくれると言っても、二人のホテルマンがスッと現れて「お荷物をお預かりします」「お部屋にご案内いたします」「こちらがお部屋になります」「お食事はお部屋にお持ちしますか? それともレストランにいらっしゃいますか?」「お食事代も宿泊費に含まれておりますので、レストランではご自由にお食事くださって大丈夫です」「レストランはビュッフェスタイルとなっておりますので」等々、丁寧な説明。
ご飯代、宿泊費に含まれている!?
そんなのも初めてなのだが!?
「屋上には室内プールもございます。水着なども販売、レンタルを行っておりますのでご自由にご利用ください」
「屋上にプール……!!」
「ありがとうございます。休ませていただきます」
スッと後藤が手の平を差し出すと、ホテルマンは頭を下げて部屋から去っていく。
淳たちにあてがわれた部屋は個室。
普段のホテルはワンルームくらいの広さしかないのに、本日の個室は十畳ほどの広さ。
アメニティも充実しているだけでなく、風呂トイレは別。
さらに扉の横にはルームサービスのメニュー表。
ネットは使い放題。
無料Wi-Fiは当然のように完備。
普段の、二段階から三段階上のランクの部屋。
「逆にプレッシャーが増してきたんですけど……」
「わ、わかるぅ」
「ホテルの部屋が俺の部屋より広い……」
「どうしてみんな俺の部屋に集まるの……!?」
一旦全員がそれぞれのカードキーの記載された個室に行って荷物を置いてきたにも関わらず、なぜか全員淳の部屋にやってきて部屋の感想を呟いていく。
特にガタガタ震えているのは柳と、絶望顔の魁星は床に座り込んでいる。
ソファーがあるのだからソファーに座ればいいのに。
「まあまあ。とりあえず明日のリハーサルについて話そうじゃん? 今日聞いた流れ的に僕らの出番は一曲で終わりだけど――」
「そうですね……! えっと、一応いただいている台本なのですが――」
と、全員で台本の確認。
淳たちに配られている台本は前夜祭だけのものなので、開会式はまた別に豪華なイベント盛りだくさん。
流れの確認をしているだけでもリハーサルの役に立つ。
そして、それはそれとして――。
「見たい……! 開会式のBlossomのパフォーマンスが!」
「わかる……! ゲーム好きで有名な蔵梨柚子様のトークショーもあるなんて聞いてない……!」
「オタク出てるな」
「蔵梨先輩もトークショーで参加するんだね……」
台本に書かれている開会式後のスケジュール読み上げを見つけて、床に這いつくばって悶絶。
完全にただのオタクと化している。
それも無理はない。
なぜなら開会式にはBlossomが出るし、それ以降にトークショーがある。
それなのに星光騎士団の出番は前夜祭。
ホテルももちろん開会式の日の朝まで。
出演が終わったらあとは帰るだけ。
残るのならば私費。
70
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
妹に婚約者を取られるなんてよくある話
龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。
そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。
結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。
さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。
家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。
いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。
*ご都合主義です
*更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる