17 / 49
コテージエリアボス戦 2
しおりを挟むこれでハッピーエンドでなければ二度と、それは外れなくなる。
腕のパーツと同じく、だ。
しかし、もう片方の足を突っ込む前に部屋がミシミシと音を立てる。
は? まさか、こんな展開ゲームにはなかったぞ?
「っ! 高際さん!」
「!」
ミシミシがバキバキ、という不穏すぎる音に変わると、千代花が俺にタックルしてきた。
揶揄でなく、マジでラガーマンがやるようなガチのタックル。
俺の体がくの字に曲がった。
ついでにちょっと胃液オェって出たと思う。
それでなくとも胃になにも入っていないのに。
「ぐううっ」
「っ、こんなに跳んで……!? た、高際さん、ごめんなさい! まだレックパーツに慣れていなくて、まさかこんなに跳ぶとは思わなくて……!」
「あ、う、うん。い、いいから」
ちょっと三途の川っぽい光景が見えただけだから。
それより、俺たちがいたコテージの二階がバキバキと触手に捻り潰される。
あそこにいたら、あのまま……。
そう思うとゾッとする。
ゲームより強くないか? あのイソギンチャク。
「それより、あのイソギンチャクの触手のつけ根に白い玉のようなものを見つけたんです。あれが核だと思うんですけど……」
「え、あ……」
どう思いますか、みたいな顔で見られてちょっと困った。
千代花、俺への信頼度高すぎる問題じゃないか?
いや、けれど確かにイソギンチャクの弱点はそこだったはず。
よし、ここはそれとなく……。
「あ、ああ、俺もさっき見た時に白い玉みたいなのは見たよ。今までの敵も核のようなものがあったし、試してみよう。俺が注意を引くから、その隙に頼む」
「え! そんな、危険です! そこまでしてもらうわけには……!」
「いいから、やらせてくれ。俺だって多少は役に立ちたいんだ。まあ、腹減っててフラフラだけどな。……だから頼むよ」
「っ……はい!」
とりあえずそんなふわっとした感じでごまかしつつ、千代花に降ろしてもらって胃をさする。
いや、マジこの世界に転生して危ない目には山ほど遭ったしそこそこ痛い目にも遭ったけど、一番痛かったし苦しかったかもしれん。
しかしまあ、イソギンチャクの特性を理解している俺が囮になるのは理にかなっているはずだ。
敵の触手の数を思えば、千代花にたた突っ込ませる方が危ない。
俺だって多少はゲームで鍛えてる。
高際の体もリアルの俺よりよほど鍛えてて動けるし、俺のプレイヤースキルと高際の体なら多分イケる!
「こっちだ化け物!」
コテージエリアの道路に飛び出し、大声で叫ぶ。
バキバキと木の枝を折る音が聞こえて、「あれ?」と思ったら瞬間にコテージの木材がぶん投げられた。
は、反則だろそれはぁー!
「くぅ!」
前転、側転、反復横跳び!
……全国の小中学生のみんな、「こんなのやっても、将来なんの役にも立たない。体力測定の時にしかやらないじゃん」なんて思わないでやってると役に立つぞ! こういう時に!
俺があまりにも華麗に避けたので、本体がズルズルと近づいてくる。
壊れたコテージから庭を通り、陽光差す道路に出てきた瞬間——!
「はああああああ!」
『ぴぎゃ! ビギャァァァァァァァァァアアァァァ!!』
千代花の強烈な踵落としが炸裂。
イソギンチャクの怪物が、水のようにバシャン、と地面に飛び散って崩壊した。
「はあ、はあ、はあ、はあ……はあ……た、高際さん! 大丈夫ですか!」
「あ、ああ、なんとか大丈夫……」
でも本当に危なかった。
中の人のプレイヤースキルと高際のそれなりにちゃんと鍛え上げられたしなやかな筋肉がなければ、避けきれなかっただろう。
筋肉。やはり筋肉はそれなりになんでも解決してくれる、
高校生、大学生、社会人のみんな! 筋肉は裏切らない。鍛えておくと役に立つぞ! こういう時に!
「千代花ちゃんも、大丈夫?」
「はい、私は——」
「イソギンチャクの棘で結構刺されていたはずだし、少し休んだ方がいい。こんな調子じゃあ、きっと炊事場にもなにかいる」
「っ……! ……そ、そう、ですね。なにかと戦うことになるなら、万全の状態で挑みたいです。でも、私もお腹が空いているので、やっぱり先を急ぎましょう」
「……そ、うか」
それもそうなんだよな。
千代花だって、昨日の昼からなにも食べていない。
万全の状態でいてほしいが、空腹もまたそれを損なう原因だ。
ついでに言うと……俺は炊事場に食糧がないとゲームでやって知っている。
今日もまた空腹で一日を過ごさなければならない。
食糧が手に入るのは明日だ。
明日、他人のキャンプスペースに残されたクーラーボックスからようやく食糧を発見し、焼いて食べることができる。
とは、いえ……俺も腹が減ってやばい。
ゲームの中の高際たち、よくこの空腹に耐え抜いたな……!
まあ、耐え抜きたくて耐え抜いたわけじゃないんだろうけど!
「……炊事場に行く前に、他のキャンプ客の荷物を漁ってみないか?」
「え?」
「もしかしたら、食べ物が残ってるかもしれない。炊事場なら食器や調理器具もあると思うし、ゾンビになってしまった客の荷物を無駄にするぐらいなら活用させてもらおう」
「なるほど……そうですね」
俺が限界なので、今日荷物漁りさせていただきまーす!
1
あなたにおすすめの小説
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる