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進路再相談
しおりを挟む「あの、高際さんは戻るのは反対なんですか……?」
不安そうな真嶋が身を震わせながら聞いてきた。
それに対して俺は迷わず頷く。
「多分出られないか、出てもクリーチャーの群れのど真ん中だと思う。千代花ちゃんがフル装備状態になっても、俺たちは助からない。階段は一本道だから、上ってきたゾンビに襲われでもすれば挟み打ちだしな」
「「あ」」
それは考えてなかったのか。
真嶋と墨野が一気に青ざめる。
「た、確かに建物内は部屋がいくつもあって逃げ場はありますよね……バリケードにできる椅子やテーブルもありますし」
「さっきの頭が三つあるクリーチャーは『三つ巴』という、ボスより弱いがゾンビより強い敵だ。頭を潰す度に強くなるから、攻略方法としては一度で三つの頭を破壊するのがいい」
「他にもあんなのがいるのか!?」
「地上のアスレチックエリアにはあれの失敗作で、六つの頭のやつがいたぞ」
「「えっ」」
埋めてきたけど、倒し切れてないから這い出てるかもなぁ。
あれラスボスぐらい強くなりそうで、どうしたらいいもんだろうか。
考えていると墨野と真嶋は顔を見合わせて自分たちの怪我を撫でた。
「け、けどさ、本当に出口があるって確信があるわけじゃないんだろう? 高際のマネージャーを地上で待ってる方が、やっぱり確実なんじゃないか? ち、千代花ちゃんに地上の様子見てきてもらってさ、大丈夫なら上に逃げた方がいいっていうか」
「僕は足を怪我してしまったので、上に戻るにも下へ進むにも足手纏いです。た、助けを待てる場所があるなら、僕はそこで、助けを待っていたいんですが……」
真嶋の意見はもっともだが、墨野の意見はあれか?
千代花に一人で敵地に突っ込み、敵をなんとか殲滅して安全を確保してくださいっていう他力本願の極みみたいなことか?
男としてというより、大人として、人としてクソ雑魚すぎる提案だなぁ。
さすが『おわきん』の攻略対象。
そしてこれ以下という設定の『おんきん』一番のイケメン高際義樹——俺。
俺はこれ以下なのか。
以下だったな。ゲーム内では、間違いなく。
「んー、じゃあ俺は地下へ進むで一票、墨野が地上へ戻るで一票、真嶋はどちらでもいい。となると、千代花ちゃんの意見で決定になるな」
「私ですか!?」
「戦うのは千代花ちゃんだしね。さっきは千代花ちゃんも地上に戻るべきって言ってたけど、どうかな? ここまで情報を増やしてみたけど、やっぱり同じ意見かな?」
とはいえ俺が判断材料として提示した内容は、あまりにも荒唐無稽。
なぜならゲームの知識である。
切り捨てられても文句はない。
なぜなら墨野以下の人間性を誇る、高際義樹の言葉なので。
中身は俺とはいえ、高際というキャラクターの業が発動したとも限らない。
なので千代花の意見に従おう。
「そう、ですね……地下へ進んでみましょう」
「え、いいのか?」
「っっっ」
俺は驚いたけど、墨野はわかりやすくショックを受けた表情。
自分の意見の方が安全だと思っていたのか、最初に千代花が選択したのが地上だったから覆されると思っていなかったのか。
「高際さんの知識は今までも私を助けてくれました。それに、もしもその知識がこの先も通用するのであれば、事前に敵や罠の情報が共有できるということですよね? 戦う者としてはそちらの方が嬉しいです。なので、知っていることを全部教えていただけませんか?」
「記憶が曖昧になっている部分も多いけど、それでもいいの?」
「はい」
あとDLCに関して俺はノータッチだ。
多分DLCの方が物語の真相とかがわかるようになっている。
その辺含めてクソゲーだが、今は本編だけの知識でも千代花の助けになるかもしれない。
「地下を進むという前提で、お願いします」
「……わかった。まず、地下四階で何人か施設の研究者が接触してくる。そいつらも末端だが頭のネジは行方不明だ。千代花ちゃんのパワードスーツを完成させようとしていたし、千代花ちゃんの周りにいる俺たちをなんとかして排除しようとしてくる」
「俺たちを!? な、なんでだよ!?」
「千代花の戦闘データを取りたいんだ。俺たちがいたら、支障が出るんだとさ。庇いながら戦う形になるだろ?」
「くっ」
そして多分、俺たちをどうにかしてゾンビ化させたいとも思っていたな。
理由はシンプルに千代花に倒されすぎて、実験用ゾンビが不足してきているとかゲーム内で助けた研究員の一人が言ってた気がする。
だから俺たちを実験用のゾンビにしたいし、行動を共にしてきた男たちのゾンビ化を目の前で見たことによる、千代花のなんとかなんとかの向上でなんとかなんとかが完全体となるとかなんとか。
本編で回収されることのなかった謎である。
結局鬼武千代花とは何者で、今回の事件は誰がなんの目的で仕組んだとかも含めてな。
「でも、本当になぜ私なんでしょうか? 私はただの一般人なんですが」
「そうだなぁ。もしくは、君と同じ身長、体格の生物兵器でも作ってる、とか? 妄想の域を出ないから、俺にもはっきりとしたことはわからないんだけど」
「そ、そうですよね。……でも……」
不安そうに俯く千代花。
多分今千代花が考えているのは「なぜ自分なのか」というより、「自分はこれからどうなってしまうのか」だろう。
戦い続けることで攻撃性が上がり、千代花自身でも制御ができなくなっている。
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