ヒロインに攻略されないと死ぬゾンビホラー乙女ゲーの攻略対象に転生したんだが!?

古森きり

文字の大きさ
42 / 49

地下四階エリアボス 2

しおりを挟む
 
 さて、敵の攻略法を千代花ちよかに授けたので、次は謎解きである。
 こちらも千代花ちよかにやってもらわねばならない。
 
「下に柱が四本あるのが見えるよね?」
「はい。あれがヒントなのですか?」
「うん。柱を印の方向に回すと四つが石の蓋の方に向くようになっているんだ。それでロックが解除される。でも、柱を回すのはかなりの力が必要で、パワードスーツを着た千代花ちよかちゃんじゃないと無理」
「わかりました、やってみますね」
「蓋が開くとすぐにボスが出てくるから気をつけて!」
「はい!」
 
 申し訳ないが、俺は体育館二階の観覧場所みたいなところから、墨野すみや真嶋ましまのお守りをしながら指示を出す役だ。
 相変わらず役に立たない。
 でも、やれることをやろう。
 ここを抜けてあとは地下五階だけだ。
 生きて出るんだ。
 不本意だが、墨野すみや真嶋ましまも連れて。
 四人で、生きて出よう。
 
「ふう! 高際たかぎわさん! 最後の一本を動かします!」
「わかった! 動かしたらすぐに距離を取ってくれ! ボスは蓋の中から完全に出てくることはない!」
「はい!」
 
 ここのボスは強いが、幸いなことに固定位置だ。
 千代花ちよかが柱を動かし終わると、いよいよ石の蓋がガコン、と音を立ててずれていく。
 中からにょろりとイカの足が出てきて、次にタコ足。
 鋏を掲げた本体のカニが出てきて千代花ちよかに向かって足を伸ばす。
 
「た、高際たかぎわさん!」
「どうした!?」
「タコ足とイカ足とカニって言ってませんでしたか!?」
「え? うん」
 
 赤い血管が浮かび上がった吸盤のある触手みたいなタコ足。
 真っ白な赤や紫や緑のか細い血管が浮かぶ吸盤のある白い触手みたいなイカ足。
 頑張ればカニに見えなくともない本体から伸びる、エゲツない形をした赤い岩のようなカニの鋏。
 ……まあ、初見でこのクリーチャーをタコ足イカ足のカニ、と思うのはいささか無理がある、かな?
 三周目あたりからはもうそうとしか思えなくなるんだけど。
 
「くう! あと速くありませんか!? 伸び縮みもしている! ような!?」
 
 タコ足とイカ足を避けながら千代花ちよかが叫ぶ。
 え、速いよ?
 三つ巴がすっとろく感じる程度にはタコ足とイカ足は動きが速い。
 だからこそ、最初の一本を引き千切れれば戦況はどんどん改善していけるのだ。
 俺は上から全体を見渡し——。
 
千代花ちよかちゃん! 右奥の柱に走って!」
「はい!」
「柱に引っかかったタコ足を千切って、追ってきた足に投げつけて!」
「はい!」
 
 柱は意外に頑丈で、このエリアのオブジェクトとして戦闘の役に立つ。
 おもに追いかけてきた足を引っ掛け、引き千切るのに。
 千代花ちよかが一本目を引き千切って追いかけてきた足の密集地にぶん投げれば、足同士で奪い合いになって追跡が疎かになる。
 その中でボッチ化した足を次の狙い目にするのだ。
 それを繰り返していけば足はどんどん数が減る。
 密集地にぶん投げれば勝手に奪い合いを始め、自分の足だというのにさらに細かく千切って食らい合う。
 心底バカだなコイツ、となる敵である。
 まともに戦えば間違いなく強敵なんだけどね。
 なんなら初見でボロックソに負けたけどな。
 攻略法がわからないうちはマジで凶悪なボスだけどな!
 
千代花ちよかちゃん! 右から鋏!」
「っはい!」
 
 バク転して避ける! かっこいい!
 八メートルはありそうな凶悪な岩の塊みたいな鋏が振り下ろされる。
 避けるのは難しくないが、あの見た目の攻撃を受けると死ぬ。
 油断は禁物だ。
 
「最後の一本!」
千代花ちよかちゃん! 墨攻撃だ! 足の後ろに隠れて!」
「はい!」
 
 本体が顔を上に向けたモーションは、広範囲攻撃だ。
 引き千切ったイカ足を重ね、その後ろに隠れてる千代花ちよか
 バトルフィールドの半分が真っ黒に染まるほど大量の墨。
 
「滑りやすくなっている! 柱回り込み、迂回して背後に回るんだ!」
「はい!」
 
 上からなら戦況がよく見える。
 今のところ大きなダメージもなく、ノーダメで勝てそうだ。
 俺の指示通りに柱の後ろを駆け抜けて、カニの背後に回り込む。
 カニはあの場から動けない上、目も耳も悪く触手をすべて千切られた今、千代花ちよかの居場所を把握することは難しい。
 
「頭の殻を砕いて!」
「はい!」
 
 ここまでくればあとは最初に言った通り。
 カニの頭を砕き、柔らかな中身に一撃入れればいい。
 千代花ちよかが背後からカニの頭に踵落としを綺麗に入れる。
 ビキビキとコンクリでも砕かれるような音がして、白いカニの中身が噴き出した。
 
「たああああああああああああああ!」
 
 カニが鋏を持ち上げる。
 その前に、千代花ちよかがジャンプして、高所からドロップキックを破れたからの間に突き刺す。
 カニの声鳴き断末魔。
 鋏が床に落ち、轟音と強風を巻き上げた。
 
「や、やりました!」
「お疲れ様!」
 
 無事のノーダメクリア!
 久しぶりにテンションが上がる。
 そして、カニは灰になって消えていく。
 そのあとに残されたのは、箱と階段。
 
「これが——」
 
 千代花ちよかが箱を開ける。
 胴体、下半身パーツ。
 俺の方を見上げる千代花ちよかに、頷いて見せる。
 防御力、スピードが上がる他、蹴りの威力がアップするパーツだ。
 ラスボス戦では必須となる。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...