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魔力を視る(2)
しおりを挟む「でも、あの、具体的にどうすれば見えるんですか?」
そんなことができるなら、できた方が仕事に活かせる。
作業に入る前にできるようになりたいのだけれど、ソラウ様はわかりやすく首を傾げた。
おっと? もしかして?
「考えたことなーい」
そんな気はしていました。
「オラヴィは言い出しっぺなんだからリーディエに教えてあげたらぁ?」
「はあ……。よろしいのですか? リーディエ様の教育はソラウ様が命じられていることでは――」
「淑女教育はシニッカがやっているじゃないか。教えてもいいけどやる気でないし~」
「「…………」」
オラヴィさんと顔を見合わせる。
これはもう言われた通りにするしかない?
先に折れたのはオラヴィさん。
深い溜息を吐いてから、私の方に近づいてきて「お手を」と白い手袋を外した手を差し出す。
言われた通り手を差し出すと、オラヴィさんの手が私の手を掴む。
びっくりしたけれど「集中して、手の平を見つめてください」と言われる。
ひっくり返されて自分の手の平を見せられ、重ねたオラヴィさんの手の平から体温とは別の熱が私の手を覆っていく。
「熱は感じますか?」
「あ、は、はい」
「この熱が自分の魔力です。自分は火魔力なので、熱として感じると思います」
「魔力の属性によって感じるものが異なるのです。ソラウ様は幼少期からもう魔力の視認ができたらしく、感覚を覚えるということが本当にできないんだと思うので、悪く思わないであげてくださいませ」
「あ、は、はい」
幼少期から規格外の天才だったんですね。
「なので、視認するにはまず自分の魔力を感じ取れるようにするのが最短でしょう。だから、まず魔力をよく感じてください。自分の火魔力は熱なので、わかりやすいかと思います」
「そうなんですね。わかりました、頑張ります!」
が、オラヴィさんの表情の中に「火魔力ならソラウ様だって使えるのに……」という不満が滲んでいる――!
そうだ~!
あの人サブ魔力六属性使えるんだ~。
でもそれを私に察されたオラヴィさんの表情が完全にアレになってる。
そう……『偉い人の考えることはわかんないですね~!!』のアレ~~~~!
コクリ、と頷き合って諦めた。
自分は自分のやるべきことをやろう。
集中集中……オラヴィさんの火魔力の熱を、感じるのに集中して……。
「熱を”視る”つもりで」
「は、はい」
なるほど、熱を”視る”のね。
熱という目印があるから、わかりやすいのか。
人差し指、手首のところ、親指のところ、中指の先……熱が一塊になって動き回るので、それを目で追う。
すると、段々熱の塊が赤く光って見え始めた。
あ! もしかして、これが……!?
「あの、赤い光が見えました!」
「そうです、それが火魔力です。次はご自分の魔力を視えるように自分の魔力を集中してみましょうか」
「はい、やってみます!」
なるほど、こういうものなのね。
自分の魔力を手のひらに流す。
金色の光が手のひらに滲み出始めた。
「あ……金色の光……」
「もう見えるようになったのですか? 素晴らしいです」
「これがそうなんですか?」
「はい。キラキラと眩いこの光こそ、聖魔力です。今は意識しなければわからないかもしれませんが、すぐに無意識でも視られるようになると思いますよ」
「ありがとうございます! 早速細工に活かしてみます!」
「頑張ってくださいませ――!?」
にっこり微笑んでくれたオラヴィさんの表情が凍りつく。
その視線の先を見てみると、ソラウ様が作業場から顔を半分出して、ジトーっと睨みつけていた。
それを見た瞬間、私も喉がヒュッと引き攣る。
「な、なんですか?」
「べっつにーーーー」
「リーディエ様に魔力視認を教えるように言ったのは、ソラウ様ですよ」
「だからなんにも言ってないじゃん! 別に困ってたら助けてあげてもいいと思ってたのに、もういいしー!」
「「あ」」
察した。
なるほど、私の魔力視認練習が上手くいかなかったら、ソラウ様に頼ってくるだろうって思って、それを待っていたのか。
め、めんどうくさ……。
「フン!」
「「…………」」
オラヴィさんと目だけで会話が成立した気がする。
もー、あの人ああいう面倒くさいところが可愛いんですよねーーー! っていう。
「では、そろそろ昼食の用意に向かいますので」
「はい。よろしくお願いいたします」
きっとソラウ様の好きなデザート作るんだろうな。
さて、私はどうやってご機嫌を取ろうかな?
二十六歳の成人男性に対してこんな配慮するのもどうかと思うんだけれど、可愛いので仕方ない。
私もすっかり染まってしまったなぁ。
「ソラウ様、魔力視認が上手くできているかわからないので、見ていただいてもいいですか?」
「えー? めんどうくさーい」
「お願いします。まだ不安なんです」
「……しょうがないなー」
チョローい。
応援ありがとうございます!
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