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赤い鋏のパレード⑥
しおりを挟む温湿布はタオルが冷めてきたら取り換え時だ。もう一回やっとこうかなぁ、などと思いつつ、布を外した理咲がふと首を傾げた。おや?
「やはり貴女は医学の知識がおありで……、リサ殿? 如何なされた」
「いや、あの……いまちょっと触っただけなんだけど、ものすごーく柔らかくなってませんか? 首とか肩とか」
「え? ――おお、そういえば。ここまで軽くなったのは数年ぶりですな」
有難い、と肩を回して頬を緩めるノルベルトだ。元の顔立ちも相まって、柔らかな表情が大変眼福……なのだが、それはちょっと置いといて。
(……どういうこと? こんなに早く効果が出たことないんだけど)
ノルベルトはやや誤解しているが、アロマテラピーは医療行為ではない。特に筋肉の凝りや片頭痛といった慢性的な症状は、一時的に和らぐことはあっても、ここまで顕著に回復しない……はずだ。が、さっきまで岩みたいだった首と肩が、何というか皮膚の色つやまで生き生きしていた。それこそ即効性の液体湿布でも使いましたか、といった感じだ。
「わあ、良いなぁ。次ボクもやってもらっていいー?」
「あっ、はいはい。えっと、同じ香りでいいですか」
「おっけーでーす」
自分から申し出てくれたポーペンティナに感謝しつつ、洗面器に湯を張り直してもう一度作ってみる。念のため、巻く前の状態をしっかり確かめた上で、そっとタオルを乗せて待つこと、約数分。
「ホントだ、めっちゃスッキリした! ちょっと頭痛かったのも治ってる、ありがとー!!」
「え、えええええ……??」
やはりというか案の定、知人同様に大変な癒しを得てしまったらしい。目をキラキラさせてお礼を言う医官さんは大層可愛らしかったが、理咲の戸惑いは大きくなる一方だ。――と、
「――あっいた!! 勤務時間外にすみません隊長、だけど報告がッ」
突然足音も荒く駆け込んできたのは、理咲と同じ年頃と見える青年だった。服装はノルベルト同様に詰襟のもので、色合いも似通っている。しかしそのあちこちが破れたり、黒っぽく汚れたりして、大分気の毒な状態になっていた。暑かったのか捲り上げている袖口から、あちこち赤く腫れあがった腕が覗いていて痛そうだ。
「ロイ? 何ごとだ、その有り様は」
「見苦しくてすみません! 西側の郊外宅地で、魔法生物《クリーチャー》が大量発生してます!! いまうちの隊のみんなで対応してますが、なんせ数が多くて……っ、あだだだだ」
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