アロマおたくは銀鷹卿の羽根の中。~召喚されたらいきなり血みどろになったけど、知識を生かして楽しく暮らします!

古森真朝

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夏は短し戦(バト)れよ乙女①

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 面白くない。全くもって、ちっとも面白くない。
 (なんなのよ、もう! この国の連中ときたら、聖女に対して失礼にも程があるんだけど!?)
 客人をもてなすための、特別豪奢に設えられた部屋。その中を苛立ちもあらわに歩き回っている星蘭セイラがいた。
 (結託した負け犬連中のせいでド田舎に追いやられて、散々つまんない生活して、やっと解放されたと思ったのに……!!)
 あいつらは彼氏を盗られた、とわめいていたが、所詮心変わりされる程度の魅力だったというだけの話だ。なのに、馬鹿な先生と保護者達にゴタゴタの責任を取らされて、有名私立大学への進学がナシになったのが去年の春だった。
 要らないお節介を申し出てきた親戚――父方の遠縁で、見た目も性格も地味で堅苦しいお局様――に預けられ、何の面白みもない田舎の三流大学に通わされて、不満だらけの毎日で。一人娘の星蘭を甘やかして、何でも好きにさせてくれた両親のところに帰りたくて仕方がなかった。
 (……それに比べれば、今の方が断然好きにやれてるけど)
 そもそも自らの意志と関係なく拉致されてきたんだから、王子様やらその臣下やらが自分を丁重に扱うのは当然なのだ。その証拠に、宛がわれたのは王城内で最も華やかで見晴らしのいい一室だし、着ているドレスだって正絹など、高級素材をふんだんに使った一級品ばかりだった。本物の金や銀を台座に、大粒の宝石を惜しげもなく散りばめた揃いのアクセサリーは、出来次第届けられるという。
 ずっと憧れていた、まさしく王侯貴族の姫君のような暮らしだ。しかも自分にしか出来ない特別な役目があって、『聖女』という素敵な肩書まで出来た。楽しくて仕方がない――はずだったのだが、
 「あいつ! あのガリ勉地味っ子、こっちに来てまで私の邪魔ばっかして!! 他のやつらだってあっちばっかりチヤホヤして、ほんっと目障り!!!」
 各客間にはしっかり防音の結界が張ってあり、ちょっとした話し声くらいなら吸収してくれる。それを良いことに人前、特に落としたい対象の前では絶対しない、般若のごとき形相で吐き捨ててやった。本当に昔から、あいつは余計な事しかしないのだ。
 ――自分のオマケで異世界へ飛ばされてきた、高校時代の同期生。星蘭とは何もかもが正反対で、これがいちいちカンに障ってしょうがない。祖母と二人暮らしで、早く自立して孝行したいと、手に職をつけるべく情報収集と勉強に励んでいたらしい。いかにもな良い子ぶりに、教師どもがしきりと優遇していたのが胸くそ悪かった。
 それだけでも相当ムカつくが、地味で根暗で何もかも自分より下のはずの佐倉理咲は、卒業までに目標だったアロマテラピーの検定、その他もろもろに見事合格。学業も三年間ずっと優秀で、あまつさえ学年主席として代表で卒業証書を受け取ることとなったのだ。星蘭は負け犬どもの策略にはまって自宅謹慎中で、式はおろか三月末に引っ越すまで、二度と学校の門を潜れなかったというのに!
 悔しさと怒りがさらにぶり返してきて、思い切り地団太を踏みたくなったのをどうにかこらえる。あいつを直接踏んづけているわけでもなし、ここで暴れても星蘭の足が痛くなるだけだ。――あっちがあくまで自分のやりたいことをやるというなら、こちらだって同じようにすればいい。
 「ふん、良いわ。聖女は結婚しちゃダメってわけじゃないんだし、さっさと本物のプリンセスになってやる……そうして気に食わないやつら、全員追放してやるわ!!」
 そうと決まれば、そのための下準備を盤石にしなくては。さっさと自己完結してろくでもない策を練り始めた星蘭は、やや乱れた髪とドレスを丁寧に直してから、クリスタル製の美しい呼び鈴ベルを手に取った。





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