転生リンゴは破滅のフラグを退ける

古森真朝

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第3章:情けはリンゴの為ならず

二人にまつわるエトセトラ②

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 勢いよく耳を塞がれてちょっと痛い。気遣ってくれるのはありがたいが、もうちょっといろいろとセーブしてもらえるとうれしい。……それにしても、出会い頭といい今のやり取りといい、ずいぶん気心が知れた仲のような感じがする。いったい何があって知り合いになったんだろう、このひとたち。

 そんな内心がありありと顔に出ているティナに、『お前分かりやすいな』と笑ったバルトがちゃんと解説してくれた。

 「俺が野伏レンジャーだって話はしたろ? 独り立ちしてすぐの頃に、狩る予定の獲物がこいつと被ったことがあってな。まあ自分がやるって聞かねぇんだ、これが」
 「当たり前だ。郷の周囲の警備は、長から直々に任された我々の責務。外部の手を借りるなど許されない」
 「……とまあ始終こんな調子で、話し合いにならなくてよ。結局先に狩ったもん勝ち、ってことにしたまでは良かったんだが」

 なんせお互いに実力伯仲、シグルズの使命感は元からだが、郷にいろいろと恩があったバルトもかなり前のめりになっていた。間に魔物を挟んでの狩猟バトルはほぼ丸一日続き、その結果、

 「……ちっとばかりやり過ぎて、獲物は狩れたが俺らも長から大目玉くった」
 「だから炸薬は使うなとあれほど……!!」
 「そのへんはすまん、全面的に謝る。けどなぁ、お前がヤツを追い込んだあの窪地、もし越えてたら結界の間際だったぞ? しかも居住区の方の」
 「ぐっ、あ、あの化け蜘蛛の機動力が予想以上で……あれからは断じて同じ轍は踏んでいない!」
 「へいへい、そら賢明なことで。で、大体のところはわかったか?」
 「ものすごくよくわかりました」

 要するにふたりとも、呼び方と所属が違うだけでほぼご同業。性格は違うけど仕事熱心なのも同じで、白熱すると回りが全ッ然見えなくなるタイプなのだ。炸薬使って退治する蜘蛛ってどんなスケールなんだとか、この森って実はやばいところなのかとか、詳しく聞きたいことはいろいろとあるが。

 『ぴぴっ』
 「どしたの? ――あ、道が」

 肩に止まったルミの声に顔を上げれば、森の木々がまばらになったところに石畳が敷かれている。あちこちが苔むしていて、随分と古いもののようだ。

 「森を突っ切って隣の国まで走る街道だ。最近は新しいのが出来たから、こっちを使うヤツはめっきり減ったが」
 「辿っていけば、程なく人里の入り口です。ここからは比較的楽に歩けるかと」
 「ホントだ、あんまり草も生えてない。きれいにしててえらいねぇ」
 『きゅう!』

 旅人が少なくなっても、ちゃんと整備をしている人がいるのだ。アンノスの住民たちのこまやかな心根を感じて、春ウサギを抱えたティナの足取りが軽くなった。
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