大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝

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第一章:気弱令嬢、前世を思い出すの巻

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 古城こしろ茉莉まり。前世、現代日本で暮らしていた頃のカレンの名前だ。

 早くに両親を亡くして施設で育った、という点を除けば、本当にどこにでもいるような独身女性であった。三十手前という、ちょっとばかり早いタイミングで死んだりはしたが、もっと苦労した果てに夭折したひとなんて山ほどいるだろうに。転生の基準がよく分からない。

 (うん、まあ、その辺はいいや。実際生まれ変わってるんだから)

 どうにか自己完結して、再びもぞもぞ身を起こす。巨大なベッドのすぐ傍らにある、これまた大きな鏡が据え付けられたドレッサーの前に立ってみた。

 綺麗に磨かれた鏡面には、今の自分の姿が映っていた。澄んだ大きな瞳は淡い紫色、ふわふわ波打つ髪はプラチナブロンドで、光の具合で印象が変わる。昨夜のような夜会なら、照明に映えて金色が濃くなるし、明るい日差しの元では銀に近くなるのだ。その変化が面白いので、密かにお気に入りだったりする。

 顔立ちは貴族令嬢らしく、品良く整っている。良く言えばお淑やかかつ控えめ……だが、悪く言えば気弱で覇気がない雰囲気だ。元の世界だったら、クラスの目立つ女子から絶対苛められそうである。

 「まあ苛められてるけどね、婚約者に……いででで」

 顔をしかめた拍子に、後ろ頭が痛んだ。そっと手をやると、大きなガーゼのようなものが固定されている。昨夜階段で打ったところだろう。あの落ち方でよくぞ一命を取り留めたというか、ほとんど怪我もせずにすんだものだ。

 「おのれ犯人め、許すまじ! 治ったら絶対突き止めてくれるっ」

 だから今はしっかり休むぞ、とベッドの方に戻りかけたとき、ぱたんと音がした。反射でそっちを見やった茉莉、改めカレンの目に、ワゴンのようなものを引いて部屋に入ってくるメイドが映る。

 もちろん知った顔だ。最近入った自分付きの子で、名前は――

 「っ、きゃー!!! おおおお嬢様、めめめめ目を覚まされたんですね!?」
 「あ、うん。そうみたい」
 「ああああよかった~~~~!! 旦那様奥様、あと若様、お嬢様が~~~~!!!」

 視線がかち合った瞬間、ものすごい勢いで喜ばれてしまった。ぽかんとしている間に、叫んだメイドの声が消えるよりも早く、邸のどこかで足音が響き始めた。


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