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第一章:気弱令嬢、前世を思い出すの巻
⑥
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この国の現王陛下は、即位してまだ二年程。先王の急な崩御に伴ってのことで、いろいろと立て込んで大変だったに違いない。
配偶者はまだおらず、よって立太子できる子女もいない。ゆえに、同じく先の王妃を母に持つ実弟が補佐に当たっている。それが、今目の前にいるこの人、だったりするわけで。
「ヴィクトル・フォン・グランフェルトと申します。貴女のことは兄君からよく伺っていました」
「は、はい、カレンデュラで……、えっ!? 兄様!?」
「うん、王立学園で知り合った! 大分先輩だったけど、不思議と馬が合ってな!」
「ええええええ」
「……おい、話していなかったのか? 気の毒に」
「いやあ、あの頃ってカレンも忙しそうだったんですよ。婚約決まったばっかりで」
突然王族に面会しているだけでも過負荷状態なのに、ここへ来て更なる爆弾が投下された。もはやどんな顔色になれば良いのか分からず、ひたすらうめくしかないカレンである。確かにやたらと友達が多くて、顔が広い兄ではあるんだけども!
(大体わたし、王立魔導学園すら行ってないし! どっかのアホ婚約者のせいで!!)
こちらの世界は、いわゆる剣と魔法のファンタジー的要素が溢れている。特に魔力を持つ若者のために、そのコントロールと活用術を学ぶ場所――すなわち魔法学校というものが存在するのだ。才能されあれば、王侯貴族だけでなく一般市民もOKな広い門戸を持つ、とても有り難い仕様である。
もちろん、カレンだって行く予定だった。その直前に許婚になったレナートが、『お前程度の魔力なら家庭教師で十分、オレと侯爵家に恥をかかせるな!』と言い張るまでは。
「……カレンデュラ嬢。今更になるが、その節は身内が大変な無礼を働いたと聞いている。申し訳ない」
「えっ、い、いいえ! あの、殿下がお謝りになることでは」
「いや、昨晩の態度もなっていなかった。私は夜会には出席出来なかったが、邸の主と懇意でね。挨拶だけでもと訪問させてもらったのだが……
仮にも紳士として、パートナーの装いを貶すなどあってはならない。譲れない拘りがあるのなら、事前に夜会服一式を贈り物として『どうかこちらを纏ってほしい』と願い出るのが筋というものだ」
(ああっお金持ちの発想!! 流石っす殿下!! でもそれってセンスに自信がなきゃできないやつー!!!)
そして聞かれてたのか、あのやり取り。大丈夫か許婚、今頃お叱りのことばで生き埋めになってないか?
この叔父上から直に怒られたら、相当ビビりそうだ。正直ちょっと、いやかなりいい気味――
「――第一、貴女を独りにしなければ、あのような事件は起こらなかっただろう。邸の警備以前の問題だ、全く」
「え」
眉間にがっつり皺を寄せて(そんな表情でも格好良いが)、ため息交じりで言ったセリフに、一気に現実に引き戻された。
事故ではなく、事件と言ったか、この人。うん、確かに言った!
「……あの、じゃあ殿下、わたしが落ちたときに」
「ちょうど角を曲がって、階段の下に出た時だった。だからよく見えていたよ。
貴女が段を降りようとして、後ろから誰かに押された所が」
配偶者はまだおらず、よって立太子できる子女もいない。ゆえに、同じく先の王妃を母に持つ実弟が補佐に当たっている。それが、今目の前にいるこの人、だったりするわけで。
「ヴィクトル・フォン・グランフェルトと申します。貴女のことは兄君からよく伺っていました」
「は、はい、カレンデュラで……、えっ!? 兄様!?」
「うん、王立学園で知り合った! 大分先輩だったけど、不思議と馬が合ってな!」
「ええええええ」
「……おい、話していなかったのか? 気の毒に」
「いやあ、あの頃ってカレンも忙しそうだったんですよ。婚約決まったばっかりで」
突然王族に面会しているだけでも過負荷状態なのに、ここへ来て更なる爆弾が投下された。もはやどんな顔色になれば良いのか分からず、ひたすらうめくしかないカレンである。確かにやたらと友達が多くて、顔が広い兄ではあるんだけども!
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もちろん、カレンだって行く予定だった。その直前に許婚になったレナートが、『お前程度の魔力なら家庭教師で十分、オレと侯爵家に恥をかかせるな!』と言い張るまでは。
「……カレンデュラ嬢。今更になるが、その節は身内が大変な無礼を働いたと聞いている。申し訳ない」
「えっ、い、いいえ! あの、殿下がお謝りになることでは」
「いや、昨晩の態度もなっていなかった。私は夜会には出席出来なかったが、邸の主と懇意でね。挨拶だけでもと訪問させてもらったのだが……
仮にも紳士として、パートナーの装いを貶すなどあってはならない。譲れない拘りがあるのなら、事前に夜会服一式を贈り物として『どうかこちらを纏ってほしい』と願い出るのが筋というものだ」
(ああっお金持ちの発想!! 流石っす殿下!! でもそれってセンスに自信がなきゃできないやつー!!!)
そして聞かれてたのか、あのやり取り。大丈夫か許婚、今頃お叱りのことばで生き埋めになってないか?
この叔父上から直に怒られたら、相当ビビりそうだ。正直ちょっと、いやかなりいい気味――
「――第一、貴女を独りにしなければ、あのような事件は起こらなかっただろう。邸の警備以前の問題だ、全く」
「え」
眉間にがっつり皺を寄せて(そんな表情でも格好良いが)、ため息交じりで言ったセリフに、一気に現実に引き戻された。
事故ではなく、事件と言ったか、この人。うん、確かに言った!
「……あの、じゃあ殿下、わたしが落ちたときに」
「ちょうど角を曲がって、階段の下に出た時だった。だからよく見えていたよ。
貴女が段を降りようとして、後ろから誰かに押された所が」
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