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第二章:大根令嬢、お隣さんと旧交を温めるの巻
⑤
「……殿下? どうなされました?」
「あ、いや、済まない。ここの所立て込んでいて……ごほん」
「ああ、然様でございましょうなぁ。どうぞご自愛くださいませ」
控えめに呼びかけられて、ようやく我に返った。ぼんやりしていたのだろう、家令に不思議そうにされてしまったではないか。大変気まずい。
(集中しろ、集中。あの子煩悩の従兄殿が頼んできたんだぞ、私に)
後でどのみち顔を出すのだ、そのときにいくらでも話せるだろうに。気まずい思いで、咳払いなどしていたときだった。
「――いーやぁぁぁぁぁ……!!」
ぼふぅっ!!!
どこかで聞いたような声に続いて、柔らかなものに盛大に突っ込むような音がしたのは。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「い、痛たたた……、あれっ? あんま痛くないな」
我ながら間の抜けたことをつぶやきつつ、放り出されたカレンはがんばって身を起こした。
周りに積みあがっているのは、干されてふかふかになった植物。ふんわりお日様の匂いがするこれは、多分藁だ。
《くるるっ》
「あ、いた。君ねえ、拉致ったんなら着地まで面倒見てほしいんだけど」
《るるるる~~》
すみません、とばかりに翼をすぼめている誘拐犯だ。
途中まではいたって平和な移動だったというのに、最後の最後でいきなり放り出したのである。もしかしてちょっと大雑把な性格なのか、それとも急ぎの案件だったのか。
まあ見てみればわかるだろう、と、藁の山をかき分けようとする。寄ってきた不死鳥に手伝ってもらい、城壁みたいに積みあがった干し草を乗り越えたとたん、
「……うげ」
ノータイムで呻いてしまった。仮にもお嬢様としてあるまじきセリフだが、今回ばかりは勘弁してほしい。
藁の山を越えた先は、広々とした庭園になっていた。形式はエインズワース家とそっくりだが、規模は倍以上ありそうだ。しっかりと手入れをされて咲き誇る、瑞々しい花々が目に鮮やかである。
しかしながら、だ。そこかしこに積みあがった巨大な木箱と、その中から溢れんばかりに詰め込まれた大量の野菜と。さらにはあちこちでうずくまって、弱々しく泣いて……じゃない、鳴いている、ざっと二十頭ばかりの馬の群れが、異様な雰囲気を醸し出している。何があったんだ、一体!?
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