大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝

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第二章:大根令嬢、お隣さんと旧交を温めるの巻


 「――カレンデュラ嬢!?」
 「え? ……あっ、殿下!」

 横手から聞き覚えのある声がした、と思ったら、やっぱり知った顔だった。

 何故か向こうからやって来るのは、つい先日知り合ったばかりの王弟殿下である。長身にそぐったコンパスをお持ちなので、それを最大限生かした大股であっという間に目の前に辿り着いた。こちらが挨拶するより先に口を開く。

 「何故こちらに……いや、それより何より、怪我などしていないだろうか? 先ほど悲鳴も聞こえたが」
 「ああ、はい。大丈夫ですよ、干し草の山に落ちましたから。殿下はどうしてこちらに?」
 「……そうか、なら良かった。私は従兄に頼まれて」
 「「あ゛あ――――っ!?!」」

 肺が空っぽになるほど息をついて、説明を始めようとしたヴィクトルだったが、飛んできた悲鳴が遮ってしまった。思わずそちらに目をやったら、さっき彼が来たのとはちょうど反対側から、大慌てで走ってくる人影が。

 (わあ、可愛いなぁ。双子さんかな?)

 揃ってやって来るのは、おそらく十歳前後と思われる子どもたちだ。

 服装からして男女、ということは双子でも二卵性のはずだが、顔つきが鏡に映したようにそっくり。猫みたいにくりっとした瞳は鮮やかな碧、ややクセの強い髪は、良く晴れた日の夕焼けそっくりな橙色だ。並んでいるととっても可愛らしい。

 のん気な感想を抱くカレンの前まで来ると、双子と思しき二人は全く同時にぺこっ、と頭を下げた。礼儀作法云々というより、心の底からの申し訳なさが伝わってくる、それはもう深々としたやつだ。

 「ご、ごめんなさい! あの、おじ様もごめんなさいっ、ぼくたちセドリックさんに相談したくて……!!」
 「まさか養生中の妹さんを連れてくるとは思わなくって!! 不死鳥にもっとはっきり指示を出すべきでした、申し訳ございません!!」
 「……やはりそんな所だったか。あれは思いも寄らない人脈があるからな……」
 「なんかすみません、うちの兄が……あのう、兄様は今日ご出勤だから、日中はいませんよ。ええと」
 「そうなんですか!? あ、ご挨拶が遅れてすみません。ぼくはテオバルト・フォン・リリエンフェルトです!」
 「同じくテレーゼ・フォン・リリエンフェルトです。現リリエンフェルト公爵の孫に当たりますわ」

 今度は幾らか落ち着いて、きちんと作法に則った礼をしてくれる二人だ。リリエンフェルト家といえば実家のすぐ裏手で、敷地の端が触れ合っている、いわゆるお隣さんである。動物好き、かつ子供好きな兄なら、いつの間にか知り合って懐かれていてもおかしくない。

 しかし、ということは、だ。

 「もしかして相談事って、このお馬さん達? 見るからに具合が悪そうですけど」
 「えっと、はい。そうなんだけど、そうじゃなくって」
 「そもそもはお野菜が先だったのですわ。うちの領地で、うっかり採れ過ぎてしまって……」
 「輸出してもまだ余るので、困っておられた農家の方々から引き取ったんです。それで馬とか、草食動物ならたくさん食べてくれるんじゃないかな、って……」
 「うんうん、なるほど。状況は分かりました。……ちょっとごめんね、触るよー」

 周りの状況からして、何が問題なのか大体読めてきた。せっかく連れて来てもらったのだ、可愛いお隣さんのためにも、ここは進んで兄の代打を務めるべきだろう。

 前世を思い出す前だったら、絶対になかっただろう決断力でそう思い切って。カレンはそばでうずくまった白馬の腹に、そうっと手を乗せた。


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