大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝

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第五章:大根令嬢、不治の奇病の謎に挑むの巻




 グランフェルトの王城は、街の北側に位置している。

 巨大な城門を潜った先には、一から三の丸までの城郭エリアが存在し、本丸にたどり着くまでは馬車で走らなければならない。こんな物々しい仕様になっているのは、初代国王が魔物から民と臣下を守るべく、手ずから設計したため、らしい。

 「兄様たち、毎日ここまで通ってるんですか……大変ですよね、広いし」
 「最初の頃は面倒だったけど、登城するたびにこうだからな。一ヶ月くらいで慣れた!」
 「一ヶ月かー……じゃあ殿下は」
 「特に不便だと思ったことはないな。物心ついた頃には自宅だったので」
 「ほえぇ……」

 日頃足しげく出入りしているからだろう。事もなげに答える男性陣に、これが人生で二回目の王城となるカレンは目を白黒させた。

 ――波乱のフィッツアラン邸舞踏会から、どうにか一夜が明けた朝。エインズワース家の兄妹は、王弟殿下に連れられて、何故かいきなり現王陛下に謁見する流れとなっていた。

 もちろん、三人の誰かがごり押しした、とかではない。昨夜伝え聞いた恐ろしいタレコミを報告したところ、ほぼ即決で返されたのである。

 『よしわかった! じゃあ直接話聞くから、伯爵家の若い人達連れてきて!』と。

 「有能な国主だーうちの国安泰だーって、いろんなとこで聞きますけど……ホント決断力がすごいですね、陛下」
 「な。打てば響くっていうか、頭の回転が速いんだよなー」
 「……うん、そう言ってもらえると有り難い。が、出来ればもう少しだけ、慎重に物事を決めてほしい気もする」
 『何を言う、物事には機というものがあろう。それを見抜いて捉えるというのは、やろうとして出来る事ではないぞ』

 口々に感想をこぼすカレンたちに、身内を褒められているはずのヴィクトルは大変難しい顔つきで応えた。さり気なく混ざった天霧が、良い感じのフォローをしてくれている。

 ちなみに、日頃の銀髪金目な青年姿……ではない。本龍ほんにんとしてはあちらの方がお気に入りなのだが、何しろ麗しすぎて人目に付きまくること請け合いだ。

 今回は非公式での緊急会談なので、出来るだけ動き回るのに支障がないよう、出会った時の白蛇の姿を取ってもらっている。細い尻尾をぱたぱた振りつつ、

 『で、だ。あの侯爵家の小童、今日は学び舎に出向いておるという話だったな? 謹慎は如何どうした?』
 「それが……お恥ずかしい話だが、彼は決して模範生ではありません。成績も出席の日数も足りていないため、王立学園側から要請があった、そうで」
 『ふん、道楽に耽っておったツケか。どれ程才があっても、磨かねば光らんぞ?
 いっそのこと放り出して、空いた席を姫に与えてやれば良い。彼奴きゃつより余程勤勉だろうに』
 「ど、どうかなぁ……お勉強は好きだけど」

 前世でもそうだったが、毎日コツコツ積み重ねるものは大得意だ。知識しかり、技術しかり。

 もし、才能が大前提とされる魔法の分野でも活かせるのなら、いつか是非入学してみたいものだ。外部聴講生とかの枠があるなら、そっちでもいい。

 あれこれ話しているうちに、馬車は城の正面玄関――ではなく、ぐるりと裏手に回って止まった。御者と、待ち構えていた侍従たちに手伝ってもらい、人目につかないうちに急いで中に入る。

 (おお、ここがお城のバックヤードか~)

 おそらくメイドや従僕、下働きの人々が使うものだろう。やや狭い通路が続いて、いくつか角を曲がったと思ったら、ふいにぱっと視界が開ける。

 鮮やかな緋色の絨毯を敷いた、大人が数人並んでも余裕で歩けそうな廊下だ。いよいよ城の表側らしい。

 「よし、応接室まであと少しだ。今の時間帯なら閑散としているはずだが、もし誰かと行き合っても――うわっ」
 「わあ!?」
 「――えっ? あらっごめんなさい、ちょっと早く来すぎちゃった!?」

 角の手前で言いかけたヴィクトルが、突然びくっ! と肩を揺らした。つられて跳び上がったカレンの耳に、大変朗らかで明るい声音が飛び込んできた。

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