デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第三章:

星守る狼⑤

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 「じゃあ、とにかく結界張っとくね! 『光華円陣セレスティア』!!」

 ぱん、と両手を合わせる仕草をしながら唱えると、リラを中心にふわっと温かな光が灯った。

 ほんのり薄紅色をした魔法陣から同じ色の光が立ち上って、ちょうど頭上に集まっていた星の子たちをすっぽり包み込む。あっという間に、きれいな半球形のドームみたいな結界が完成した。

 「よしっ完ぺき! フィアも念のためにエルドくんと待機ねっ」

 「はいはい、もうスタンバってるって。イブマリー、男子たちどう? この子が明るいんで遠くがよく見えないのよね」

 『くわぁ』

 「大丈夫だよ、ちゃんと目閉じてたから。ちょうどスコールくんとこに着いたみたい」

 申し訳なさそうに寄って来る火の鳥さんをよしよし、と撫でてあげて(温かいお湯に手を入れたみたいだった)、わたしは暗いのに慣れた目を再びふもとの方へ向けた。

 先にたどり着いたディアスさんが、うずくまってた相手を担ぎ上げて戻ろうとしている。なにかやり取りしているけど、ここまでは聞こえてこない。ショウさんの方は――って、げ!

 「あっ、蛇が復活した! ショウさん後ろー!!」

 『おにーさんあぶなーい!!』

 転がって痙攣していた大蛇がむくっ、と鎌首をもたげたのを見て悲鳴をあげる。迫りくる巨大生物のインパクトに、思わずティノくん共々パニックになったんだけど、当事者はそんな外野よりよっぽど落ち着いていた。

 「『波濤千変テンペスト』、序の段・村雨!!」
 
 ずざああああああああああ!!!

 抜き放っていた刀を叩き落しながら叫ぶと、真上から凄まじい勢いで水が降ってきた。何もないところに滝が五、六個出来て、いっせいに流れこんだみたいな威力に、這いずってきた大蛇が再び斜面の下まで押し流される。おおっ、すごい!!

 「地質が脆いゆえ連発出来ん、急いで登れ!」

 「わかってるって! ほい、到着っ」
 
 「……す、すみ、ませ」

 「良いから良いから。先にとにかく息を落ち着けろ」

 人ひとり担いでいるとは思えないスピードで駆け上がってきたディアスさんが、よいしょっと俵担ぎしていたスコールくんを降ろしてくれる。

 明るい魔法陣の中で見ると、さっきにも増して顔色が最悪レベルだった。胸のところでぎゅうっと服をつかんでいて、今も苦しいのか呼吸が浅くて早い。そして、

 『おにーさん、どうしたの!?』

 「ああ、ティノもわかるのか。俺は生得魔法でやっと見抜いたんだけど、さすがにカンが鋭いな」

 「見抜いたって? 病気かケガを隠してた、ってことですか」

 「もっと質が悪いヤツだな。……蟲毒こどくっていって、ものすごくめんどくさい呪いの一種だ」

 うげ、と、思わず全力で顔をしかめてしまった。

 大抵のRPGと同じように、エトクロにもステータス異常を起こす敵や魔術が存在する。魔法が使えなくなったり、逆に直接攻撃ができなくなったり、あるいは眠ってしまって行動不能になったりと効果は様々なんだけど、中でもプレイヤーに嫌われているのがこの『蟲毒』だ。

 最初はたいしたことはないが、戦闘が長引くと1ターンごとに削れるHPの量がどんどん増えていく。さらに呪われてる本人が敵にダメージを与えると、その何割かが削れる分にプラスされる。結果、バトルに貢献した分だけ戦闘不能になるのが早まってしまう――という、大いなる悪意を感じるイヤ~な仕様になっているのだ。

 パーティーには光魔法を操るヒロインがいるし、レベルが上がってくればすぐに解除できるものだ。だけど序盤にこれをやられて、攻略予定だったキャラクターが戦闘不能、すなわち死亡扱いになると、今までの苦労が全部水の泡になるわけで。わたしも何度画面に向かって『製作者のバカヤロー!!』て叫んだことか……

 いや、そんなことは置いといて!
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