かわいい悪役令嬢俺とクソゲー世界

あくるめく咲日

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学校の章

クソゲーと悪役

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とりあえず落ち着いて職員室に向かいがてらキーンの為に現状の把握をする事になった。
いやなんでだ。なんで3人で向かう必要があるんだ。フリィシュ置いてってもいいじゃん。
「で? お前らいつ知り合った」
「先程偶然お会いしまして」
「案内でもしてもらったのか?」
「どちらかと言えば付き纏われておりました」
「人聞きが悪いこと言うなって! オレただついてって求愛してただけじゃん!」
不審者の言い分を聞いた気がする。
こういうタイプってふざけ過ぎて怒らせた相手に「冗談じゃん!」って逆ギレするタイプだろ。決めつけは良くないけど確信がある。
絶対そうだろ。

「……悪かったな。校門に迎えに行こうとしたんだがちょっと野暮用で」
「いえいえお気になさらず。お忙しいでしょうし」
2人で顔を見合わせてため息をついた。
なんだかどっと疲れたので「俺が悪いんだから責めろよ」という自責の念モンスターの小言は無視します。
そんな俺を恨めしそうに見てからキーンはフリィシュに話しかけた。
和気あいあいと話す姿になんだか胸がざわついた。
誓って言うが、そういう意味ではない。ザワッという嫌な胸騒ぎの方といえば誤解はないだろうか。
フリィシュとキーンは知り合いなのだろうか。同い年だけれどクソゲーではクラスが違ったはずだ。

もしかして、と嫌な予感が過ぎる。
フリィシュと会ってから俺の肌は嫌な予感を感じ取り過ぎだと思う。いい加減にして欲しい。
そう思うのに、予感を裏付けるようにかつてのキーンの誕生日のことを思い出された。

あの、自分が自分ではなかった瞬間。
ルエリア様への恋は、あの時確かに俺の中で芽生えた感情だが。
あの時、種を蒔いたのは俺ではない。彼女悪役令嬢だ。

ゴクリ、と生唾を嚥下する。

だって俺は悪役令嬢役だけれど、役割がほぼほぼ崩壊している。なのにも関わらず俺の中の彼女悪役令嬢は『ねえ、彼は美しいでしょう? 見惚れてしまうでしょう?』と微笑んだ。
それならば俺以外もそうなると容易に想像がつく。

くそ雑魚世界の強制力くんが『攻略対象はヒロインに好感を持つ』とかそういうものを実装しているかもしれない。ヒロイン役のフリィシュだって、攻略対象たちに好感を抱くように強制力が働いているかもしれない。
か、確認しなければ。

試しに悪役令嬢のように話を中断させて『キーンは私の婚約者ですが何か?』ムーブかましてみよう。
クソゲー内でも悪役令嬢はキーンのことをゴミクソみたいに罵倒していたけれど、ヒロインがキーンに近付くとそれはそれで嫌らしく邪魔をしていたし。

「フリィシュ様」
「様とかやめろって。オレ平民だし、オレとお嬢の仲だろ?」
「すみません、親しいと思われたく無いので」
「お嬢!? オレら友達だろ!? オレの唯一の友達になってくれるって言ったじゃん!」
「それは無いです」
重いわ。
ヒロインに生まれ変わった男の唯一の友達とか重すぎるだろ。何の罰ゲームだ。
いかん。フリィシュのペースに流されている。
エスコートしてくれていたキーンの腕をギュッと両手で掴んで見せつけるようにした。

「フリィシュ様。遅ればせながら自己紹介させていただきます。
私、Q・セルーネ・オーデルハインはキーン様の婚約者候補ですわ」
「候補っつってもほぼ確定だけどな」
突拍子の無い婚約者候補ぶりにキーンは合わせてくれた。流石。
でもお互い顔が引き攣っているからこれは今後の課題にしような。

「ま、マジかよ!」
ガーンと古風なリアクションをとるフリィシュ。ゲームの製作年がここに反映されるのか。
違う。それどころじゃないこのリアクションはもしかして世界の強制力くんが影響しているのか?
なんて健気なんだ、世界の強制力くん。
こんなこと言いたくないけどお前があのクソゲーのシナリオ通りにいくら頑張っても乙女ゲームには戻らないからな?
ボーイがボーイを攻略するゲームにしかならないからな。

人知れず混乱する俺を知ってか知らずか、ちょいちょいとフリィシュが手招きをしてきたので耳を傾けてやると中々の大きな声でコソッと耳打ちしてきた。

「ホモなのか!?」
デケェ声を出すな。

かくして、俺の胸騒ぎは杞憂に終わった。
フリィシュには悪役令嬢ポジだからですわとさっくり説明したけれど「オレ実は主人公が男の娘のギャルゲーはしたことあるんだ」という謎の話を返された。そんなギャルゲーあるのか。それはどう言った需要の元成立したゲームなんだろうか。視覚的な百合需要だろうか。
こっちは視覚的はNLだけど対抗できるかな。じゃない。

そして、ばっちり聞こえていたけれど聞かなかったことにするしかなかったキーンが「後で詳しく」と耳打ちして来たところで職員室に着いた。


着くや否やフリィシュは定規を鞭のようにしならせる教師に捕まった。
「スタージェ! こんな時間に登校とはいいご身分だな!」
「うぎゃぁぁぁぁああああ! 先生! ちげぇんだよ、オレは悪くねぇ! 同室の奴が起こしてくれなかったからああぁぁ……」
醜い断末魔を上げてどこかに引き摺られていくフリィシュ。

いや、遅刻だったのかよ。
そして寝坊かよ。
それなのに一緒に職員室に行ってたとかただの自首じゃねぇか潔く罪を認めろ。

「じゃあ俺は別件で教師に用事があるからここで解散でもいいか? お前の話が終わるくらいには授業が終わったジュタが来るだろうし」
「かしこまりましたわ」
いよいよあの職員室に行くまでの3人パーティーはなんだったんだ。
というか、キーン。お前授業中じゃなかったのか?
俺、一人でも職員室に行けたんだが。

解散しようとすると、悪意に満ちた声が響いた。

「ハッ、いいご身分だな」
現れたのは一人の男子生徒。青のような緑のような髪に、深い青の目。三白眼というやつだろう。睨まれると迫力が違う。
リボンタイの色からして1年だろう。
いや今授業中では?
俺が把握してる中でも授業を抜け出している1年の生徒が3人もいるんだけどこの学校は大丈夫なのか?

「エンヴァースか」
ポツリと相手の名前であろう単語をつぶやくキーンを見ると、涼しい顔をしていた。
悪意に満ちた声には反応しない方がいいと思いますが第2王子よ。

嫌味に表情を変えないキーンに気を悪くしたらしい、エンヴァースという生徒は再び不機嫌そうに鼻で笑って声を上げた。
「妾の子が我が学園の不純物スタージェと随分仲良くなったようだな。出来損ない同士惹かれるものでもあるのか? ハッ、王族穢しに伝統穢し。お似合いじゃないか。そのまま諸共消え失せてくれないものだろうか」
悪意だ。
面と向かっての悪意。
うわ、確かにキーンってこんな扱いされてた。
主に悪役令嬢からだったけれど。
悪役令嬢が言わなくても、この人はこんなことを言われるのか。少し自業自得だれど、フリィシュもこんな風に言われる所以はないだろうに。

思い出した。
エンヴァースと言ったらアルル・エンヴァースだ。
名前だけの登場で立ち絵はないから容姿で分からなかったけれど。

彼は、悪役令息だ。

キーンルートで何度もキーンとヒロインの前に立ち塞がる悪役だ。


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