47 / 50
二 通小町
難波津に......
しおりを挟む
やってきました、大阪。
待ちに待ったテーマパーク。きゃっほ~い!
堅苦しいお勉強は、今日は無し......と思いきや、テーマパークに行く前にやっぱり社会科見学。
行き先は日本一デカイと言われる大仙陵古墳。以前は仁徳天皇陵と言ったそうな。
日本だけじゃなくて世界でも最大級の墳墓、つまりはお墓らしい。確かにデカイ。端っこが何処にあるかわかんないもん。
でも、前方後円墳?......あの鍵穴みたいなやつなんだって。
で、本日の講師、長柄先生によれば、今日、俺たちが行くテーマパークのあるところは明治時代後半までは海の中。それまでは今の大阪の中心地くらいまで海が入り込んでいたんだって。
「古墳時代から平安時代が始まるまで、都が置かれていた場所でもあるんだよ」
嬉々として語る長柄先生。本領発揮で嬉しそう。
奈良時代も副宮が置かれていて、大阪湾の南の方、難波津と言われていたところから、遣唐使や遣隋使の船が出発したんだそうな。
小野崎先生、もとい小野篁が上司と喧嘩して乗船拒否、職務放棄したアレですね。
篁さん、それで島流しになったんですよね?
「和歌にも沢山読まれている。わたの原、や難波江という枕言葉がよく出てくるだろう?」
うんうんと頷く、小野崎先生。めっきり昔のことは忘れた顔。
「王仁という人が、この古墳の被葬者、仁徳天皇に捧げた難波津の歌というのが大和歌、和歌の初めと言われている。平安時代の貴族とかは、これを手習い、つまり勉強の一番初めに習ったんだ」
あ、資料プリントのこれですね。
競技カルタで一番最初に詠まれる決まりなんだって。映画じゃ言ってなかったな。
「新しい天皇ー当時は大王だが、その尊い人に捧げた門出の歌だ。詳しいことが知りたい人は、古文の小野崎先生に聞くように」
長柄先生はそう言って、昔の宮殿のあった場所とか、大阪の古墳の分布とかを地図に落とした分厚い資料プリントを配ってくれた。
力入ってますね。本当に好きなんですね、考古学。高校じゃやらないけど。
ホントに奈良だけかと思ったら、宮殿の跡とか古墳とかマジいっぱいあるんだ。
都と言っても、ちゃんと都市計画されたのは、平安京が初めて。
それ以前は本当に小規模な町で、宮もあまり大きくないんだ。
目からウロコが五、六枚剥がれたよ。
結構、関心を持ってあれこれ質問してたやつらもいたけど、俺は興味なし。だって俺、理系だもん。歴史苦手。
早くテーマパーク行って遊びたい。
それから待つこと約一時間。やっとお待ちかねのテーマパークに到着した。
バスの中はみんなの歓喜の声ではちきれそう。
そして......
ハリウッド映画のキャラクターの出迎えを受けてゲートを潜ると、もう別世界。
溢れる鮮やかな色彩とエレクトリックな音の洪水にテンション爆上がりな今ドキ高校生、つまりは俺たち。
もうハジケていいんだよね?
ひっきりなしの歓声にやっと現代に帰ってきた実感が沸き上がってくる。
小野駒治、無事、令和に生還いたしました!
.......なぁんちゃって。えへ。
もう目一杯、楽しみまくった!!
有名映画の街を体感して、恐竜に追いかけられたり、捕まったり。ジェットコースターに乗って、ゲームみたいにレースもした。
みんなして、盛り上がって、はしゃぎまくって......。
先生達もケガさえしなきゃいい、って半分は放置状態。
あ、でも飲酒喫煙は厳しく禁止されてます。当然ながら、菅原先生が目を光らせてます。
ゴミのポイ捨てだけでもソッコー叱られる。
遊んで遊びまくったラストの花火も、とにかくキレイで凄くて、感動だった。本当に夜空に花が咲いたみたいだった。
出来ることなら、あの少将に見せてあげたいと思ったくらいだった。
でも.......ね。
『凄いよな~!』
『彼女と見たいよな~!』
親友の水本と二人並んで大口開けてる俺の脇で、式部と清原が、有名な犬やお茶目なモンスターのぬいぐるみ抱えて、黄色い声を上げまくる。
やっぱり女子だね、こいつらも。ちょっとウルサイ。
宿泊先はテーマパーク併設のホテルで、ベッドはふかふか。暖かい布団を掛けて寝られるのは最高に幸せだった。俺はジャンケンに負けて補助ベッドだったけどね。
平成・令和の人間で良かった。
俺は大阪の街のネオンを眺めながら、つくづくそう思った。
そして......ちょっとだけ祈った。
ー深草少将が、今度は幸せな未来に生まれて来れますようにー
早く新しい門出が来ると、いいね。少将さん。
ー難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花ー
(古今和歌集 仮名序)
待ちに待ったテーマパーク。きゃっほ~い!
堅苦しいお勉強は、今日は無し......と思いきや、テーマパークに行く前にやっぱり社会科見学。
行き先は日本一デカイと言われる大仙陵古墳。以前は仁徳天皇陵と言ったそうな。
日本だけじゃなくて世界でも最大級の墳墓、つまりはお墓らしい。確かにデカイ。端っこが何処にあるかわかんないもん。
でも、前方後円墳?......あの鍵穴みたいなやつなんだって。
で、本日の講師、長柄先生によれば、今日、俺たちが行くテーマパークのあるところは明治時代後半までは海の中。それまでは今の大阪の中心地くらいまで海が入り込んでいたんだって。
「古墳時代から平安時代が始まるまで、都が置かれていた場所でもあるんだよ」
嬉々として語る長柄先生。本領発揮で嬉しそう。
奈良時代も副宮が置かれていて、大阪湾の南の方、難波津と言われていたところから、遣唐使や遣隋使の船が出発したんだそうな。
小野崎先生、もとい小野篁が上司と喧嘩して乗船拒否、職務放棄したアレですね。
篁さん、それで島流しになったんですよね?
「和歌にも沢山読まれている。わたの原、や難波江という枕言葉がよく出てくるだろう?」
うんうんと頷く、小野崎先生。めっきり昔のことは忘れた顔。
「王仁という人が、この古墳の被葬者、仁徳天皇に捧げた難波津の歌というのが大和歌、和歌の初めと言われている。平安時代の貴族とかは、これを手習い、つまり勉強の一番初めに習ったんだ」
あ、資料プリントのこれですね。
競技カルタで一番最初に詠まれる決まりなんだって。映画じゃ言ってなかったな。
「新しい天皇ー当時は大王だが、その尊い人に捧げた門出の歌だ。詳しいことが知りたい人は、古文の小野崎先生に聞くように」
長柄先生はそう言って、昔の宮殿のあった場所とか、大阪の古墳の分布とかを地図に落とした分厚い資料プリントを配ってくれた。
力入ってますね。本当に好きなんですね、考古学。高校じゃやらないけど。
ホントに奈良だけかと思ったら、宮殿の跡とか古墳とかマジいっぱいあるんだ。
都と言っても、ちゃんと都市計画されたのは、平安京が初めて。
それ以前は本当に小規模な町で、宮もあまり大きくないんだ。
目からウロコが五、六枚剥がれたよ。
結構、関心を持ってあれこれ質問してたやつらもいたけど、俺は興味なし。だって俺、理系だもん。歴史苦手。
早くテーマパーク行って遊びたい。
それから待つこと約一時間。やっとお待ちかねのテーマパークに到着した。
バスの中はみんなの歓喜の声ではちきれそう。
そして......
ハリウッド映画のキャラクターの出迎えを受けてゲートを潜ると、もう別世界。
溢れる鮮やかな色彩とエレクトリックな音の洪水にテンション爆上がりな今ドキ高校生、つまりは俺たち。
もうハジケていいんだよね?
ひっきりなしの歓声にやっと現代に帰ってきた実感が沸き上がってくる。
小野駒治、無事、令和に生還いたしました!
.......なぁんちゃって。えへ。
もう目一杯、楽しみまくった!!
有名映画の街を体感して、恐竜に追いかけられたり、捕まったり。ジェットコースターに乗って、ゲームみたいにレースもした。
みんなして、盛り上がって、はしゃぎまくって......。
先生達もケガさえしなきゃいい、って半分は放置状態。
あ、でも飲酒喫煙は厳しく禁止されてます。当然ながら、菅原先生が目を光らせてます。
ゴミのポイ捨てだけでもソッコー叱られる。
遊んで遊びまくったラストの花火も、とにかくキレイで凄くて、感動だった。本当に夜空に花が咲いたみたいだった。
出来ることなら、あの少将に見せてあげたいと思ったくらいだった。
でも.......ね。
『凄いよな~!』
『彼女と見たいよな~!』
親友の水本と二人並んで大口開けてる俺の脇で、式部と清原が、有名な犬やお茶目なモンスターのぬいぐるみ抱えて、黄色い声を上げまくる。
やっぱり女子だね、こいつらも。ちょっとウルサイ。
宿泊先はテーマパーク併設のホテルで、ベッドはふかふか。暖かい布団を掛けて寝られるのは最高に幸せだった。俺はジャンケンに負けて補助ベッドだったけどね。
平成・令和の人間で良かった。
俺は大阪の街のネオンを眺めながら、つくづくそう思った。
そして......ちょっとだけ祈った。
ー深草少将が、今度は幸せな未来に生まれて来れますようにー
早く新しい門出が来ると、いいね。少将さん。
ー難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花ー
(古今和歌集 仮名序)
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる